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スタートアップの海外展開支援を行なっている日本貿易振興機構(JETRO)大阪本部と大阪府は2020年5月14日、「コロナ後を見据えた海外展開、シンガポールを事例に」と題したウェブセミナーを開催した。共催は関経連ABCプラットフォーム、エンタープライズ・シンガポール、大阪産業局。大阪産業局は「大阪スタートアップ・エコシステムコンソーシアム」を立ち上げてスタートアップを支援している。こちらの記事では、シンガポールに子会社をおくロボットベンチャーDoog社の講演を中心としてレポートする。

●シンガポール・チャンギ空港で活躍するDoog社「サウザー」

株式会社Doog取締役 城吉宏泰氏

シンガポール進出の経緯や理由について講演したのは株式会社Doog取締役の城吉宏泰氏。Doogは2012年創業。社名「Doog(ドーグ)」は日本語の「道具(どうぐ)」に由来しており、筑波大学知能ロボット研究室の研究成果を活かして「道具」のように役立つ移動ロボットを開発しようとしているベンチャーだ。2017年5月にシンガポール子会社としてDoog International Pte. Ltd.を設立した。

Doog(ドーグ)社は「道具」として役立つ移動ロボットの提供を目指している

Doogの主力製品は協働運搬ロボット「THOUZER(サウザー)」。台車型の追従運搬ロボットだ。主に物流倉庫や製造業の工場で使われているが、一部はレストランやアミューズメント施設でも活用されている。レーザーセンサーを使って人間あるいは台車の自動追従のほか、再帰反射材の反射テープを使ったライン走行が可能だ。走行速度は時速7.5km、航続距離は最大20km。積載重量は120kgの標準モデルと、300kgの「サウザー・ジャイアント」がある。「サウザー・ジャイアント」は600kgまでのハンドパレットトラックを牽引することも可能だ。Doogでは顧客ごとの基準や要望に対して応えながらロボットの導入を進めている。

■ 動画:

シンガポール進出のきっかけは、2015年の「国際ロボット展」での出展。そこでチャンギ空港のグランドサービスを展開しているSATS(Singapore Airport Terminal Services Limited)の担当者がDoog社の「サウザー」に着目し、購入に至った。最初は日本から輸出していたが、その後、シンガポールのEDB(経済開発庁)から拠点作りの話が来て、そのサポートを得て、子会社 Doog Internationalの設立に至った。Doogのロボットは、いまは空港のほか、図書館、病院、ホテル、建築、航空機整備、鉄道整備などの分野に導入/実証を進めている。

Doog社のロボットの活用例。倉庫やホテル、建築現場などで使われている

最初にシンガポールで「サウザー」を導入したSATS Catering Pte. Ltd.は、センターキッチンからラウンジへ、食事やドリンクを運ぶロボットとして「サウザー」を導入した(SATSではロボットを「DOLLY」と呼んでいる)。ロボットがスタッフに付いていくことができるので、一度に運べる量が3倍になり、人員一人での搬送が可能になった。これはDoogとしても初めての公共空間での実運用ケースとなった。日本国内では、公共空間でロボットを使うのはハードルが高いのが現状だ。だがシンガポールは積極的だという。

シンガポール・チャンギ空港で用いられているDoog「サウザー」。現地名はDOLLY。

Doogのロボットは、図書館での自動書籍返却ロボット「Mobile Bookdrop」のベースロボットとしても使われている。ロボットは白線上を移動しながら、挿入返却された本をカウントし、いっぱいになったら自動で返却カウンターまで移動する。そのほか、整備工場、ラストワンマイル配達、ホテル/イベント会場、建築現場で用いられているという。

■ 動画:

チャンギ空港では車椅子型のロボット「GAROO(ガルー)」も採用されている。「GAROO」は、日本で開発した技術をベースに、現地で新しく開発して納品した。デザインは大阪南港ATCに開発拠点を置くベンチャー・株式会社ロボリューションと協力した。「GAROO」も搬送台車ロボット同様、スタッフに着いていくので、一人のスタッフが複数の客を移動させられる。チャンギ空港では既に2019年から運用されている。

■ 動画:

また昨今の新型コロナウイルス対応としてシンガポール行政機関から貸出要請を受け、噴霧器を搭載した消毒用ロボットも開発中だ。シンガポール子会社で先行開発している、走行経路を記憶させて無人走行する「メモリトレース機能」を搭載している。COVID-19対策として開発されたものだが、長期的には蚊が媒介する伝染病対策用として防虫剤の噴霧なども視野に入れている。シンガポールや日本国内だけではなく、世界中で活用されればと考えているという。

■ 動画:

●メリットは「公共空間で採用されること」と「世界進出の起点」となること

城吉氏は、シンガポール進出のメリットとして、特に「公共空間で採用されること」を挙げた。シンガポールは新技術・新製品に積極的であり、規制にとらわれず採用されるという。日本では実証実験までは行われるが、実証レベルを出て本格採用されるのは難しいのが現状だ。しかしながらシンガポールでは安全面の配慮と並行して「トントン拍子で話が進んだ」という。

また、もともと世界中の企業がシンガポールに誘致されており、サポートが手厚くイベントが多いのもメリットだという。現地従業員についてもバイリンガル、マルチリンガルが多く、アジア欧米全体に通用する人材が豊富だとのこと。城吉氏は「シンガポールに進出したことで他の地域にも進出しやすくなった。スタートアップに限らず、いずれは海外進出するつもりがあるなら、早いうちから海外展開を考えるべき。現地のほうがマーケットの情報も得やすい」と述べた。

Doog城吉氏によるシンガポール進出のメリット

Doogでもシンガポール国内だけではなく海外の案件は全てDoog Internationalで統括しており、香港・台湾、オーストラリアやニュージーランドのほか、EU各国などにも、現地パートナー経由で進出している。城吉氏は、シンガポールは「シンガポール国内だけではなく『シンガポールを起点として海外へ』という活動を積極的に支援している」と紹介した。

Doogではシンガポール子会社が海外案件を統括

なお、コロナウイルス関連については、実物デモができなくなった点や新規設備投資の減少などについてはマイナス要因として考えているものの、無人化・省人化ニーズ、Eコマースニーズ増による物流ニーズは増加すると考えており、そちらについてはチャンスだと捉えていると語った。また、シンガポール特有の事情として、宿舎での感染爆発による外国人労働者の大幅減少があり省人化ニーズも高いという。城吉氏は「ニーズ増大はチャンスだと考えている」と述べ、JETROのサポートについては大変助かっていると締めくくった。

●シンガポールのスタートアップイベント「SFF×SWITCH」

このほか、セミナーではシンガポールのスタートアップイベント「SFF×SWITCH」の紹介などが行われた。「SFF×SWITCH(Singapore FinTech Festival (SFF) and the Singapore Week of Innovation and TeCHnology (SWITCH))」は140カ国、6万人の参加があるイベント。スタートアップとVCのマッチングイベント、優勝者には20万ドルの賞金が出る「Slingshot」というコンペティション、カンファレンスなどが行われる。今年は11月9日〜13日にシンガポール・エキスボで行われる予定で、ヘルスケア、スマートシティ、貿易、デジタルサービスに力点が置かれているという。

ジェトロ大阪本部と大阪府は「SFF×SWITCH2020」に大阪ブースを出展し、出展料金負担や事前トレーニングなどを行なって大阪のスタートアップ・中小企業の海外展開をサポートする予定だ。社数は5社程度で、出展料は無料。対象は先端産業に関する製品・技術・サービス等を有し、海外企業との商談を希望する大阪のスタートアップ・中小企業(大阪府内に事務所・営業所・支店等を有していること)とされている。詳細はジェトロ大阪のウェブサイトに掲載される予定だ。

(森山 和道)