ヒムズ(Hims)は2017年に立ち上げられた健康とウェルネス商品を扱うスタートアップだ。そんな同社が今度、新しくハーズ(Hers)というブランドを立ち上げる。ヒムズはD2C業界におけるサクセスストーリーといえる存在で、昨年行われた1億ドル(約110億円)の追加資金調達によって、その時価総額は10億ドル(約1100億円)にも達した。同社は男性カスタマー向けにこれまで避けられがちだったED治療製品を提供するため立ち上げられたが、最近ではスキンケアやヘアケア、女性向けの避妊製品など、さまざまな商品を提供するようになっている。

共同創業者でありCEOのアンドリュー・ダダム氏は、時価総額については200億ドル(約2兆2000億円)を目標にしており、今後ウェルネス分野のプラットフォームとして成長を続け、同分野でカスタマーが最初に思い浮かぶようなブランドにしたいと考えているという。同社の社員は現在100名で、昨年の売上は1億ドル(約110億円)だった。

米DIGIDAYの兄弟サイトのモダン・リテール(Modern Retail)はダダム氏にインタビューを行い、同士のチームがどのようにしてヒムズを本格的な遠隔医療プラットフォームとして構築しているかを伺った(インタビューは内容を明瞭にするため若干の編集を加えている)。

ーー業界における立ち位置をさらに確固たるものにするため、さらなる資金調達の計画も報じられている。これにより時価総額は10億ドル(約1100億円)を超えることになるが、目標とする額はあるだろうか?

200億ドル(約2兆2000億円)は良い目標だと思う。これは達成できる数値だと考えている。この分野は爆発的な成長を何年にもわたって続けている。ヘルスケア分野の投資家や機関に話を聞けば、同分野において人々がいかに無制限のアクセスや可用性、価格設定の透明性、利便性といった要素を備えるシステムを求めているかが分かるだろう。既存のヘルスケアシステムや市場もそのことは把握しており、当社は今後企業として、米国内においてモデルとなるような大規模ヘルスケアシステムを構築しうる立場にある。消費者の事を第一に考えながら、こうしたシステムの構築を進めていけば、20億ドルは達成不可能な数字ではないし、それを超えることも十分に可能だ。

ーーヒムズはヘルスケアとウェルネスの橋渡しのような存在にもなっている。ヒムズはヘルスケア企業なのか、それとも薬局なのだろうか?

当社は競合他社の大半とは異なった形の企業を構築しつつある。製品提供だけを行うわけでも、カスタマーとヘルスケア専門家を結ぶだけの遠隔医療プラットフォームというわけでもない。電子カルテやフルフィルメントを扱う薬局でもない。これらすべてを複合したような存在だ。さらにカスタマーが信頼のおけるブランドとして自身の健康のため積極的に利用する存在となっており、その点においても既存のヘルスケア機関とは異なっていると思う。既存のシステムは、NPSG(米国で定められた患者の安全を高めるための目標)が業界内でも最低レベルとなっている所もある。過去40年から50年のあいだ、さまざまな方面に多額の資金を投入することで構築された機関も多いが、その成功がカスタマーのケアや幸福に直接的に結びつくシステムはほぼ皆無といって良い。治療を受けたカスタマーと機関の成功が、カスタマーの治療に直接結びついていないのだ。これは非常に大きな課題で、当社はヘルスケアシステムのほぼすべての部門をクラウドベースかつ消費者第一のプラットフォームにしている。

ーーヒムズとハーズはD2Cブランドでありヘルスケア企業でもあるという独特な立ち位置にある。たとえば避妊具を購入するにあたって、保険適用で無料となる場合もあるのに御社の商品を選ぶというのはなぜだろうか? それは御社のブランドがなせることなのか?

当社製品がカスタマーにとってもっとも安価な選択肢にならない場合もある。それが正直なところであり、現実だ。当社もかならずしも一番の安値を目標としているわけではない。もっと安い値段で薬を手に入れられる人がいるのであれば、それは良いことだと思う。特に避妊においては、プランド・ペアレントフッド(Planned Parenthood)や12カ月分の薬を出してくれる医者がいれば、そのほうが安くなる場合も考えられる。幸いなことに、米国民の8割は高額控除可能な健康保険に加入しており、5ドル(約550円)または無料で避妊できることもある。ただその場合はほぼ必ず、医師は90日または180日ごとに薬を受け取りにくるよう求めるだろうが。

ーー御社は今後どのような道をたどるのだろうか?

当社を立ち上げたのは2年前だが、すでに1億ドル(約110億円)の収益をあげられるようになった。さらに成長を続け、あと5年か10年で上場できると考えている。あと数年は成長を続けながらビジネスモデルを洗練させ、そのあとに上場するだろう。

ヒムズとハーズについては、拡大可能な事業を構築できた。これは単なるデザインや包装といった話ではなく、D2C分野に本当に価値のあるものをもたらすブランドだ。当社は遠隔医療システムを市場に持ち込んだ。ヒムズやハーズがなければこういった治療を受けられない人たちにもこうしたサービスや製品を届けている。率直なところ、従来の医療システムが乗り込んできても十分に耐えられるビジネスモデルだ。当社はそのことを念頭に置いて投資を行っており、当社が急激に成長を続けているのはそのためでもある。

ーーヒムズで利益をあげられるようになるのはいつ頃だろうか?

利ざやでいえば、当社はキャスパー(Casper)よりもテレドク(TeleDoc)に近い。数年後の上場までに、キャッシュフローを生み出して十分に利益をあげられるようになるだろうと考えている。だが実際にそれを行うかは戦略による。成長を促し拡大するための十分な現金資本があれば、必ずしも黒字にこだわる必要はない。現在当社は銀行に十分な資金を持っており、それをもとに収益性を上げることが可能だ。

ーーキャスパーなどのD2Cによる最近のIPOを受けて、ベンチャーキャピタルはD2Cに見切りをつけるようになるだろうか?

何事にも栄枯盛衰はある。投資家や市場も、繁栄しているところもあれば衰退するところもある。去年は急速な成長への反動があった。そこから真に価値のある、持続して利益をあげ続けられるビジネスモデルの構築へと切り替わったのだ。数年以上、業界に残りたいのであれば、こういった基本的な要素を必ず心に留めておく必要があるだろう。これまでD2C業界では、製品のコピーのしやすさといった防御面が考えられていなかったり、既存の製品をキレイに見せただけで真のイノベーションがなかったりといったブランドにも多くの資金が流入していた。だが数年前とは異なり、現在の投資家たちはこういった疑問を投げかけるようになっている。

Gabriela Barkho(原文 / 訳:SI Japan)