眠るときに「悪夢」を見てつらい思いをしている人は決して少なくないはずですが、まだその謎はヴェールに包まれた部分が多く、研究者にもわかっていないことが多々あります。そんな中でも、悪夢に悩まされている人に効果がある可能性のある方法が専門家により示されています。

Can you 'turn off' a nightmare? | Live Science

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睡眠には「レム睡眠」「ノンレム睡眠」の2つの段階があり、夢を見ているのは「レム睡眠」の最中。このとき、人の脳は起きているときと同じように働いています。夢の中では「空を飛ぶ」といった、普通ならありえないことも起きるので、日常生活に悪影響が出るほどの悪夢を見てしまう人もいます。

悪夢の原因はトラウマやストレス、特定の薬物に起因するとみられる睡眠障害、悪夢障害などの可能性が考えられます。ジョンズ・ホプキンス大学医学部神経学准教授で睡眠障害の専門家であるレイチェル・サラス氏によると、悪夢は複雑で、研究者にもわかっていないことが多いとのことですが、過去10年の研究から、明晰夢を用いる方法が悪夢に悩まされている人に効果的である可能性が示されています。



「明晰夢」とは、夢を見ている状態であることを寝ながらに自覚し、その内容を思い通りにできるというもの。

「明晰夢を見るための方法」はいくつか存在していて、リオグランデ・ド・ノルテ連邦大学のポスドク研究者、セルジオ・アースロ・モタ=ロリム氏は「WBTB(Wake Back to Bed:二度寝法)」と呼ばれる方法を推奨しています。アースロ氏によれば、ふだん起きている時間の30分前にアラームをセットし、アラームが鳴っても起きずに「明晰夢を見よう」と意識することで暗示がかかって、二度寝の間に明晰夢を見やすくなるとのこと。夢で見る内容は、暗示によりある程度は誘導することができるとのことで、前夜のうちに夢に見たいことを考えたり話したりするのもアリだそうです。

肝心の「悪夢を避ける方法」は、明晰夢のように「夢であることを自覚」できるようにすることで、悪夢を見ている時に「自分はいま夢を見ているのだ」と自覚して、目を覚ますというもの。また、目を覚まさなくても、夢の中で「身体的な危険はない」と自覚することで恐怖を取り除くことができるとのこと。実際に、悪夢を楽しい夢に変えたという人も報告されています。

明晰夢を用いる方法の難点は、そもそも「明晰夢を見る」というのが一般的ではない点で、人生で明晰夢を見る回数は平均して10回未満であると考えられています。研究は進んでいて、見るための方法がいろいろ示されていますが、まだ「セラピー」として確立できるほどには十分な検証が行われていません。

明晰夢を過去最高の確率で見られる科学的な方法が判明 - GIGAZINE



こうした経緯から、サラス氏は「もし悪夢により睡眠を妨げられていたり、夢の中で自傷行為をしたりしているなら、医師の診察を受けるべき」と述べています。