TikTok(ティックトック)が、自社のプラットフォーム上で収益を上げようとするパブリッシャーの支援に乗り出している。

短編動画アプリのTikTokはこの1年間、クリエイターやエージェンシー、パブリッシャーを魅了し続けてきた。NBC、ESPN、グループ・ナイン・メディア(Group Nine Media)といったメディア企業も、こぞってTikTokで実験を行っている。そんなTikTokにとって、次の挑戦はパブリッシャーがプラットフォームでマネタイズできる方法を見つけ出すことだ。同社はそのための取り組みを続けているが、まだ正式に公開できるものはないという。

TikTokは2019年にコンテンツパートナーシップチームを編成すると、多くのメディアパブリッシャーと提携して彼らのオーディエンス拡大を支援してきた。また、ブランデッドコンテンツを公開できる機能をまもなく導入して、パブリッシャーのマネタイズを支援する計画だ。

TikTokのコンテンツチームと仕事をすることが多いパブリッシャーのコンプレックスネットワークス(Complex Networks)は、TikTok上で公開するブランデッドコンテンツを増やそうとしている。特に念頭に置いているのは、熱心に取り組んでいるeコマースの分野だ。コンプレックスは最近、自社のオンラインストアをオープンし、スニーカーやパーカーなどのアイテムを販売しはじめた。今後は、広告パートナーと提携してTikTokアカウントでブランデッドコンテンツを展開する方法を探りたいという。また、自社製品をTikTokで宣伝したり、場合によっては販売したりすることまで考えていると、ソーシャルメディア担当ディレクターを務めるアマン・ワリア氏は述べている。

「こうしたパブリッシャーは、優秀な営業部隊を抱えてブランドと良好な関係を築いており、さまざまなチャネルで自分たちが作成できるコンテンツについて毎日のように話している」と、TikTokにおいてコンテンツパートナーシップの責任者を務めるブライアン・ソエンセン氏はいう。

TikTokのクリエイター向けマーケットプレイスは、もともとインフルエンサーのみを対象としていたが、いまはブランデッドコンテンツの分野でマーケターと提携したいと考えているパブリッシャーにも開放されている。

マーケター目線で改善

TikTokはまた、ユーザーがパブリッシャーやクリエイターのコンテンツをより簡単に見つけられるようにする取り組みも行っている。フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times:以下、FT)が1月12日に報じたところによると、TikTokはさらに多くの大手広告主を惹きつけるため、キュレートされたブランドセーフティなコンテンツフィードを開発しているという。この機能は、Snapchat(スナップチャット)の「デイスカバー(Discover)」タブのように、パブリッシャーの編集コンテンツやオリジナル番組をフィーチャーしたものになる可能性がある。Snapchatは、この広告収入をパブリッシャーと分け合っている。

ソエンセン氏は、キュレートされたコンテンツフィードを提供する可能性に触れたFTの記事についてコメントしなかったが、「自社のプラットフォームで(コンテンツの)発見を支援する機能を刷新する方法を常に模索している」と語った。

ソエンセン氏のチームは、パブリッシャーがTikTokのプラットフォームを使ってマネタイズする方法を模索したり開発したりするだけでなく、ハッシュタグのトレンドや効果がある(または効果がない)ハッシュタグに関するインサイトレポートを毎週提供して、オーディエンスの拡大を目指すメディア企業を支援している。

コンプレックスの事例

コンプレックスが2019年6月に作成したTikTokのメインアカウントは、最初の3カ月で100万人のフォロワーを集め、いまでは220万人以上のフォロワーを獲得している。ワリア氏によれば、当初はリソースが不足していたため、TikTokでコンテンツを投稿するのに適したアプローチを見つけ出そうと「格闘していた」という。だがいまでは、TikTok専門のソーシャルメディアスタッフを抱え、以前よりはるかに仕事が楽になったと同氏は話す。また、TikTokでどのようなものがバイラルになるのかについて、さらに理解が深まったことも助けになっているという。「何かがバイラルになるのを見ても、以前はその理由がわかならかった」と、ワリア氏は述べている。

TikTokは、2019年の「コンプレックスコン(ComplexCon)」イベントで、コンプレックスと提携してハッシュタグチャレンジを開催した。「#CheckTheDrip(#チェックザドリップ)」と名付けられたこのチャレンジは、11月に開催されたコンプレックスコンの来場者に、そのときの自分のファッションを投稿するよう呼びかけるものだった。コンプレックスも、10人のTikTokインフルエンサーをイベントに招待して、このハッシュタグを付けた動画を制作した。最終的に、7日間で40万本以上の動画がユーザーによって作成され、視聴数は8億5000万回に達した。コンプレックスのワリア氏によれば、2020年にはもうひとつのチャレンジを開催することを検討中だという。

TikTokは、パブリッシャーを支援するもうひとつの取り組みとして、TikTokのプラットフォームに最適化されたコンテンツの制作に関するインサイトを提供している。その狙いは、こうしたコンテンツの制作に必要な時間やリソースが考えられているほど多くないことをパブリッシャーに示すことにある。実際、ワリア氏は「昔の古い動画を取り出して、その動画に新しい命を吹き込むことができた」と述べており、こうした制作方法をソエンセン氏はコンテンツの「TikTok化(TikTok-ifying)」と呼んでいる。コンプレックスがTikTokに投稿しているのは、再利用した動画やオリジナル動画、それにインフルエンサーやセレブの動画などだ。

ESPNにおける事例

ESPNでデジタルおよびソーシャルコンテンツ担当シニアバイスプレジデントを務めるライアン・スプーン氏も、250万人のフォロワーを抱える同社のTikTokアカウントを使った取り組みで同じようなことに気づいた。「コンテンツがいつまでも新鮮さを失うことなく存在できる」と同氏はいう。また、「音楽やビートや感性をクリエイティブに組み合わせた投稿であれば、TikTokではうまくいく」と語った。その例としてスプーン氏が挙げたのは、オクラホマ大学のアメフトチームのキャラクターであるスーナー・スクーナー(Sooner Schooner)を乗せた荷馬車がひっくり返る動画を載せた投稿だ。ESPNはこの動画をリル・ナズ・Xの歌に合わせて編集し、投稿した。「2カ月後でも、いまと同じように楽しめるクリエイティブな動画になっているだろう」と、同氏は話す。

ESPNは、ソーシャルメディアコンテンツへの投資も増やしている。最近では、いまブリーチャー・レポート(Bleacher Report)が運営している人気の高いインスタグラム(Instagram)アカウント「ハウス・オブ・ハイライツ(House of Highlights)」を創設したオマール・ラージャ氏を迎え入れた。ラージャ氏は、ESPNのインスタグラムアカウントとTikTokアカウントを担当するデジタルメディアとソーシャルメディアの専門家4人から構成されるチームの責任者となる。

さらにESPNは、TikTokに投稿するコンテンツについて、ほかのプラットフォームよりクリエイティブなアプローチを試そうとしている。たとえば、Twitterに投稿しているコンテンツとは異なり、TikTokでは速報性を重視していない。そればかりか、ESPNが得意としているスポーツに関連していないコンテンツさえ投稿しているが、これはソエンセン氏と同氏のチームが、多くのパブリッシャーに奨励していることでもある。

「(TikTok上の)コンテンツは実にさまざまで、ほかの場所とは大きく異なっており、我々は臆することなく楽しみながら取り組んでいる」とスプーン氏は語った。

Deanna Ting(原文 / 訳:ガリレオ)