カリキュラム、運営などは自らが商人でもある運営委員の意見が反映される『商業界ゼミナール』は、商人の、商人による、商人のための、学びの場です。3日間で計25講座が実施されますが、最終日、つまりゼミナール参加者に最も印象付けてほしい、聴いてほしい講座の一つが飛騨産業の岡田贊三社長の取り組みです。そこには「業界では当たり前とされたこと」「できるわけがないとされたこと」を“本当にそうなのか”と疑問を呈し、ヒット商品に転じさせた物語があります。

第88回『商業界ゼミナール』の内容についてはhttps://www.shogyokai.co.jp/sseminar_2020/ から!

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業界常識と対峙し、社内の改革を行った

 律令の時代から建築・木工技術が高く評価され、時の中央政府から税を免じてまで貢進を義務付けられ、その技術によって都づくりに貢献してきた「飛騨の匠」。その地場産業の伝統と技術を受け継ぐ家具製造企業が岐阜県高山市にあります。

 1920年創業の飛騨産業は、国内外からの観光客でにぎわう江戸時代から続く高山の古い町並みから車で15分ほどの森の中で、今日も家具を製作しています。

 しかし、100年にわたる営みは決して順風満帆ではありませんでした。

 今日、“地場”と名がつく産業の多くは衰退の一途をたどっています。家具も同様で、総務省の家計調査によると一世帯当たりの家具の年間平均支出はこの30年間で3分の1程度にまで減少しています。

 その一方で価格競争は平成の30年間を通じて激しさを増し、ニトリやイケアなど海外に製造拠点を置く企業が市場を席巻。食品、衣料品で先行した“ファスト化”が住関連分野においても進んだのです。

 こうした顧客ニーズ、市場環境の変化への対応に遅れた同社も業績が急減。経営危機の最中にあった2000年に代表取締役に就任したのが岡田贊三社長でした。岡田社長は若き頃、『商業界ゼミナール』で商業界の創立者・倉本長治から商いの原則を学び、日本リテイリングセンターの渥美俊一氏からチェーンストア理論を学び、自らホームセンターを経営してきた人物。

 家具製造に関しては門外漢でしたが、それだけに業界、そして同社が抱えていた問題点を冷静かつ客観的に直視することができました。

「販売戦略」「製品開発」「生産体制」「後継者育成」「ブランディング」「地域プロモーション」

 これら6つの改革に、岡田社長は社内外の抵抗に遭いながらも、諦めることなく着実に取り組んでいきました。

「改革」は「改善」とは違います。「改善」が現状肯定から始まるのに対し、「改革」は現状否定です。それだけ抵抗も激しく、業界常識ともぶつかり合う。

 例えば、これまで節のある木材は家具づくりにおいてタブーとされてきましたが、岡田社長は「本来、木材は工業製品ではありません。天然自然の植物です。だから節があって当たり前。節がある家具を愛し、ありのままの樹木を愛するというスタイルを大切にする人はいる」と社内を説得して製造に着手しました。

 そして、これが同社の再生のきっかけとなったヒット商品、節のある家具「森のことば」の誕生となったのです。また、強度面から家具用材としては不向きとされた杉についても独自の造形・圧縮技術により、快適な触り心地、座り心地を持たせた家具「HIDA」も生み出しました。

 両ブランドとも最近は多くの情報誌や各種メディアに取り上げられるなど、現在のキーワードであるソーシャルやエコを意識する人々のライフスタイルにじわじわと浸透しているのです。

※飛騨産業の岡田贊三社長の講演を聞きたい方はhttps://www.shogyokai.co.jp/sseminar_2020/