Wix(ウィックス)の最高マーケティング責任者(CMO)を務めるオマー・シャイ氏には、イスラエルに本拠を置くウェブサイト作成プラットフォーム、Wixを世界のトップ100に入るブランドにするという高い野心がある。だが、世界で認知度や知名度をあげようとする多くのブランドと違い、Wixは伝統的なテレビ広告を戦略の中心に据えてはいない。

2006年設立のWixは、創業からおよそ10年を経て、米国でのブランドプッシュを加速させ、2015年のスーパーボウルでデビューを果たし、毎年同じ舞台に戻ってきた。しかし、スーパーボウルは別として、Wixは2017年第2四半期からテレビ広告を止めた。デジタル広告のほうがより効果的だと気づいたため、それ以来、テレビ広告は実施していない。

Wixは、「投資回収時間(time to return on investment)」という指標を使ってマーケティング活動を計測し、新規株式公開(IPO)以来、過去7〜9カ月にマーケティングに費やしたすべての費用の回収率を見ているという。デジタル広告の場所取り競争が激化していることを考えると、これは大きな偉業であり、GoogleやFacebookのようなプラットフォーム上での顧客獲得単価(CPA)コストが上がっていると、シャイ氏はいう。

ブランディング活動は継続

Wixが短期的な顧客獲得だけに集中していると言っているわけではない。Wixでは、2014年にマーケティングをすべて内製化してから、マンチェスター・シティーFCとニューヨーク・シティーFCのオーナーであるシティ・フットボール・グループ(City Football Group Limited)やニューヨーク・ヤンキース(New York Yankees)とのスポンサー契約など、ブランドマーケティング専用予算を別枠で確保してきた。Wixは2019年6月、人気の高いeスポーツチーム「フェイズクラン(FaZe Clan)」との提携を発表し、チームのブランド構築の一翼を担うことになった。フェイズクランの公式な「ウェブサイト開発ならびにデザインパートナー」として、Wixの名がチームの公式シャツに書かれ、両者でデジタルコンテンツやソーシャルコンテンツを共同制作している。

シャイ氏によると、今期のスーパーボウルでWixが再びスポット広告を出すかどうかはまだ決まっていない。前回は土壇場で急展開して、NBCとの「大きな取り引き」が成立した。今年もまた「ギリギリの判断になるだろう」と、シャイ氏は話す。

シャイ氏は、ブランドマーケティング支出とダイレクトマーケティング支出の具体的な配分の明言は避けた。

効果的な予算配分とは?

英国の専門家、レス・ビネー氏とピーター・フィールド氏による2013年発行の影響力を持つ研究報告書「ザ・ロング・アンド・ショート・オブ・イット(The Long and Short of It)」から広まったマーケティング業界の一般通念では、ブランドは平均して、予算の60%をブランド構築に使い、40%をより短期の販売活動の取り組みに使うべきとされている。正確な配分は業界ごと、個々の企業ごとに異なる。たとえば、B2Bブランドの場合、配分の割合は45対55または50対50に近くなる。

シャイ氏は「60%」は高過ぎると思っている。プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)のような伝統ある大手企業ならよいかもしれないが、Wixのような企業では「論外だ」とシャイ氏はいう。

「何十億ドルもの資金調達をしない限り無理だ。なかにはやっている企業もあるが、ほとんどの企業はそんなことはしていない」と、シャイ氏はいう。「長期的に60%を投資するとは、あっという間に多額の資金を使い果たしてしまうことを意味し、我々が生きているこの時代に、どうしてそのようなことが実現可能なのかが、私には理解できない」。

独立系マーケティングコンサルタントであるフィールド氏は、Wixには「効率を最大限にすることと、成長を最大限にすることのあいだの境界線を慎重に操る」必要があるという。

フィールド氏は「(シャイ氏が)世界のトップブランド100に入りたいなら、一貫してブランドに投資しなければならないだろう」と話す。

GAFAもテレビCMを多用

歴史を踏まえると、Wixのメディアミックスは、ブランドがその野心を追うなかで変化していくだろう。2019年10月、アディダス(Adidas)のグローバルメディアディレクターであるサイモン・ピール氏が、効果より効率に焦点を絞るあまり、スポーツブランドはデジタルに過剰投資していると発言したことを受け、マーケティング業界で激しい議論が起こった。世間に知られたインターネットブランドであるFacebookもテレビ広告で強いメッセージを流したり、多くのオーディエンスに向かって新製品を発表したりする機会を増やしている。アドエイジ(AdAge)によると、たとえばAmazonは、2018年に米国のテレビネットワークでの広告支出が10番目に多かった。

アレンバーグ・バス研究所(Ehrenberg Bass Institute)の所長でマーケティング科学の教授であるバイロン・シャープ氏は次のように話す。「オンラインブランドは特に、通常はオンライン広告からスタートする。だが、Amazon、Google、Facebookのようなブランドが今日いかに多くのオフライン広告をやっているかを見るのは、興味深い」。

Lara O'Reilly(原文 / 訳:ガリレオ)