2019年シーズンが終了し、MotoGP、Moto2、Moto3の3クラスに参戦した7名の日本人選手たちのリザルトは、Moto3で4回の表彰台(優勝=2回、2位=2回)と2回のポールポジション、Moto2では1回のポールポジションという結果となった。


最終戦のバレンシアGPに手術を終えた中上貴晶がやってきた

 MotoGPクラスでは、最高峰2年目の中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)が右肩の手術で最後の3戦を欠場したとはいえ、ランキング13位で一年を終えた。ベストリザルトは第6戦・イタリアGPの5位。第8戦・オランダGPの決勝で転倒に巻き込まれた際に傷めた右肩を手術するため、10月の第16戦・日本GPがシーズン最後のレースになった。

 その後、手術を終えた中上は、右腕をブレース(医療用の補装具)で固定した状態で最終戦バレンシアGPのリカルド・トルモ・サーキットへやってきた。シーズンを終えたチームへの挨拶や現在の状況報告を兼ねた、一種の表敬訪問だ。

 抜糸を数日前に済ませたところだと中上は話し、メスを入れた右肩や固定した上腕の運動機能を早く取り戻すためにも、近々にブレースを取り外して水泳などの有酸素運動でリハビリを開始する予定だという。年内いっぱいは筋力や体力の回復に励み、1月頃からモトクロスなどで少しずつバイクトレーニングも再開したいと復活プランを明かした。

「まずは2月のセパンテストで(体調を)いい状態に持っていき、バイクを理解できるようにすることが今の一番の目標です」

 2020年の中上は、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)のチャンピオンマシンである2019年仕様でシーズンを戦うことになる。

「高いポテンシャルのバイクであることは結果が示しているとおりだし、その半面、他のライダーには乗りこなしにくい、難しいバイクであることも十分に理解しています。

 このバイクでいい結果を出せれば、自分に対する評価も上がると思います。年内のテストに参加できず、走り込みができない分、年明けに向けてしっかりとフィジカル面の回復を目指して、大事な2月のセパンテストに備えます」

 Moto2クラスを戦う27歳の長島哲太(ONEXOX TKKR SAG Team)は、最終戦を21位という不本意な結果で終えた。年間ランキングは14位。シーズン後半戦には何度も予選でフロントローを獲得したが、決勝レースではさまざまな要因から結果を残せないことが続いた。今シーズンは「いちばん変化の大きかった年」だったと、2019年を振り返った。

「ポールポジション獲得やトップ争いをできるようになり、自分の成長を実感できました。ようやくここまで来ることができた、という意味で、今まで支えてくださった方々には本当に感謝をしています」

 来年は、トップチームのRed Bull KTM Ajoへ移籍する。

「結果を残さなければいけないので、厳しい一年になると思うけれども、年齢的にもラストチャンスで、来年に好成績を残せなければ引退する、というくらいの気迫で臨みます」

 Moto3クラスの日本人ランキング最上位は、鈴木竜生(SIC58 Squadra Corse)の総合8位。最終戦のバレンシアGPは最後まで表彰台を争い、惜しくも4位で終えた。鈴木の2019年シーズンは、第4戦・スペインGPで2位を獲得。また、チームの地元である第13戦・サンマリノGPではポールトゥフィニッシュを決めた。

「今年は浮き沈みの激しいシーズンで、自分のせいではない転倒も多かったにせよ、100点満点で言えば50点程度の満足できない一年でした。チャンピオン獲得は視界に入っているし、チームのポテンシャルとしてもそうしなきゃいけない立場にいると思うので、ほかのライダーを寄せつけない速さと強さを身につけます」


Moto3の日本人ランキング最上位は総合8位の鈴木竜生

 今年が世界選手権フル参戦デビューの小椋藍(Honda Team Asia)はランキング10位。初年度ながらシーズン前半戦からフロントローを獲得する速さを見せ、第14戦・アラゴンGPでは2位表彰台も獲得した。

「今季の目標にしていた高い目標には届かなかったのですが、現実的な予想よりも上位では終われたので、まずまずの一年だったと思います。来年はどのコースでも強さとスピードを発揮することを目指し、チャンピオンシップ3位以内を目標にします」

 クラス3年目のシーズンになった鳥羽海渡(Honda Team Asia)は、開幕戦優勝という劇的なスタートを切ったものの、以後のレースでは転倒ノーポイントが続いた。最終的にはランキング19位という厳しい結果。

「優勝から始まったシーズン序盤はよかったのですが、悪い流れを断ち切れず、最悪な一年になってしまいました。でも、どうすればチャンピオン争いをできるのか、ということも勉強になった年でした」

 来年は、3年間過ごしたチームとホンダ陣営を離れ、Red Bull KTM Ajoへ移籍する。

「多くのことを学べたHonda Team Asiaには、すごく感謝をしています。この経験を活かして、新しいバイクとチームで来年は毎戦トップ争いをするようにがんばります。トップグループを毎戦争えれば、チャンピオンも争えると思うので、集中して臨みます」

 鳥羽と同様に、佐々木歩夢も3年間過ごしたPetronas Sprinta Racingとホンダ陣営を離れ、KTM陣営のRed Bull KTM Tech3へ移籍する。今回の最終戦は、前戦マレーシアGPで右手を骨折した影響で厳しいレースウィークを過ごしたが、19位で完走を果たした。年間ランキングは20位。

「転べない状況だったので、手が痛い状況でも、とにかくゴールを目指して終えることができました。このチームで最も学べたのは〈最後まであきらめない〉ことだったので、それを最後に見せることができてよかったと思います。今年はトラブルも多い一年だったけど、あきらめないことを学び、メンタルも強くなりました。来年はチームも環境も変わるので、気持ちをリセットしてプレシーズンテストに備えます」

 真崎一輝(BOE Skull Rider Mugen Race)はポイント獲得に苦しむ厳しいシーズンを過ごし、最終戦は16位でレースを終えた。ランキングは27位。

「今年はとてもタフな厳しいシーズンでした。精神的に弱くなりそうにもなりましたが、どうにか踏ん張ってきました。この経験以上にキツいことは、もう二度とないと思います」

 2020年の真崎は、2年間過ごした世界選手権の場をいったん離れ、活動の舞台をFIM CEVレプソル選手権のMoto3クラスへと移す。

「この2年間で得た経験を活かして、来年はチャンピオンを目指して初戦からしっかり走り、2021年にはここへ戻ってくることができるようにがんばります」

 2009年以降のこの10年間、日本人選手はどのクラスでもチャンピオンの座から遠く離れる状態が続いている。2020年は、はたしてその流れを断ち切るシーズンになるだろうか。