日本より海外が重要? なぜ日本メーカー、新型車を北米などで先行発売するのか 弊害も
日本よりも海外で先に発売される日本車、増text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
日本の自動車メーカーは世界有数の大企業で、日本よりも海外で売れ行きを伸ばす。ダイハツを除くと、世界生産台数の80-90%が海外で売られている。
そのために日本国内だけで販売される商品は、乗用車では軽自動車程度に限られるようになった。小型/普通車は大半が海外との併売だ。
日産ジューク。日本発売の予定は今のところない。そうなると日本と海外で、発売時期が異なる車種も生じる。以前はまず日本で発売して、その後に海外で売り始めることが多かったが、最近は順番が逆になる車種もある。海外の後に日本で発売する。
例えばホンダ・アコードは、ホンダのホームページを見ると、10代目が2020年初めに日本でデビューすると告知されている。
これだけ見れば新型車のアピールだが、10代目アコードは、既に2017年10月に北米で発売されている。
この後、南米や中国での発売を経て、2年以上を経過してから日本国内で売り始めるのだ。
スバル・レガシィは新型となる7代目の北米仕様が2019年7月に生産を開始した。日本仕様もフルモデルチェンジを行うと思われたが、日本では同年9月に一部改良を実施している。
新しいグレードやボディカラーの追加、悪路走破力を高めるXモードの性能向上なども行われたから、国内では少なくとも1年間は現行レガシィを売り続けるだろう。
日産ジュークは2019年9月4日に欧州で新型を発表した。ジュークのようなコンパクトSUVは日本でも人気のカテゴリーだから、フルモデルチェンジが期待されるが、メーカー、販売店ともに予定はないという。現行ジュークの生産を終了する話も聞かれず、しばらくは現行型を売るようだ。
フルモデルチェンジではなく、新規発売では、ジェイドに時間差が生じた。中国では2013年に発売したが、日本では2015年となっている。
日本車でありながら、なぜ国内の発売が海外に比べて遅れてしまうのか。その理由を探ってみたい。
売りにくいセダン/ワゴン、開発も海外優先
アコード、レガシィ、ジューク、ジェイドなどが海外で先に発売された理由を開発者に尋ねると、「世界の市場戦略に基づく」という曖昧な返答をされることが多い。
要は優先順位の話だ。海外の発売を優先させれば、日本と同じタイミングでデビューさせるのに比べて、発売時期を早められる。
ホンダ・アコードアコードやレガシィは、まず北米で発売して、売れ行きを早期に伸ばしたい。日本はその後で良いという考え方だ。
国内も海外も基本的には同じクルマを売るが、右/左ハンドル、搭載される装備やエンジンチューニングなどの違いなどもあり、地域に応じて異なる開発をするには相応の時間を要する。
そこで優先順位を決めるわけだ。
発売時期の格差には、生産拠点や調達の事情も影響を与える。今は原材料やパーツを海外で調達して、海外の工場で生産される日本車も多い。
こうなるとすべて海外の都合で進められるから、日本と足並みをそろえるのは難しい。日本と海外を連携させる必要も薄れる。
そして以前から「日本は特殊な市場だ」と述べる開発者が多い。新車として売られるクルマの40%近くを国内専売の軽自動車が占めて、海外でほとんど売られない3列シートミニバンも全体需要の15%前後に達する。
逆にセダンは10%程度にとどまる。そうなると「日本では軽自動車やミニバンが優先され、セダンやワゴンの開発は海外が主体になる」という。
ただしこの考え方が、日本と海外の格差を一層拡大させている弊害もあるだろう。
海外の発売優先 日本のユーザーに危険が
新型車が海外で発売された後、3か月程度を経過して日本で発売するなら理解できるが、アコードのように北米発売が2017年10月、日本は2020年となると、時間差が開きすぎだ。
日本仕様の古さが目立つ。レガシィの国内市場における今後の対応はわからないが、一部改良を行って1年間売り続ければ、同様に古さが生じる。欧州でフルモデルチェンジしながら、日本は従来型を継続生産するジュークも同じだ。
日産ジューク基本設計の古い車種を売り続けると、購入するユーザーにさまざまなデメリットをもたらす。特に問題なのが安全性だ。
今は動力性能の向上は安定期に入ったが、交通事故を未然に防ぐ先進安全技術は進化が著しい。新型を販売していれば事故を防げたのに、従来型だったから衝突した事例が生じる可能性もある。
新型であれば事故が生じた後で乗員を守る衝突安全性、危険を避ける基本性能の走行安定性も向上する。フルモデルチェンジを先伸ばしにすると、日本で危険なクルマを売ることになってしまう。販売する以上は、日本と海外の発売時期を縮める努力をすべきだ。
それが難しいから「日本では廃止する」と消極的な判断を下すと、日本で買えるクルマの選択肢がさらに減ってしまう。
ユーザーとしては、アコードやレガシィのようなセダン&ワゴンも常に最新モデルを導入して、国内販売のテコ入れを図る考え方を持って欲しい。
今では国内市場におけるセダンの販売比率が10%前後に減っているから、発売タイミングの海外優先を続けると、セダンの販売低迷もさらに進行する。
軽自動車やミニバンとの販売格差が広がるばかりだ。
安心して気持ち良く商品を買える配慮を
国内と海外で発売タイミングの時間差が大きなアコードとレガシィ、欧州で新型を発表しながら国内では従来型を売るジュークを見ていると、「グローバル」のキーワードを都合良く使っていることがわかる。
ボディサイズなどを海外のニーズに合わせるのがグローバル化だというなら、発売タイミングも一致させるべきだ。
トヨタRAV4少なくとも先に述べた安全性能は、日本と海外で、不公平が生じないように配慮しなければならない。
発売タイミングの格差以外にも、ホンダCR-V、トヨタRAV4などは、国内販売を一度終了してその後に復活させた。
理由は「SUVが予想以上に人気を高めたから」というものだ。日本のメーカーは国内市場に最も精通しているのだから、ユーザーが安心して気持ち良く買えるようにして欲しい。
国内での売り方にも疑問がある。例えばマツダがマツダ3の国内販売を開始したのは2019年5月だが、同年10月中旬時点でも、新しいスカイアクティブX搭載車の動力性能や燃費数値が明らかにされていない。もちろん試乗もできない。
一般的にクルマを買う時は、車種を決めて、次に性能や燃費と価格のバランスからグレードを絞り込む。マツダ3では、購入したくても買えない状態だ。これでは購買意欲も下がり、販売を低迷させやすい。
メーカーの皆さんには、時々社員の立場を離れ、1人のクルマ好きとして国内の商品開発や販売と向き合っていただきたい。
友人とプライベートな場面で、仕事を離れてクルマの話をすることも大切でしょう。
