by José Ignacio Pompé

人工肉といえばバーガーキングが自社メニューに採用したImpossible Foodsや、マクドナルドやケンタッキーが使用するBeyond Meatなどがありますが、イスラエルのスタートアップであるAleph Farmsは、地球から約400km離れた上空を飛行する国際宇宙ステーション(ISS)で、人工肉の作成に挑戦しています。

First meat grown in space lab 248 miles from Earth | Science | The Guardian

https://www.theguardian.com/environment/2019/oct/07/wheres-the-beef-248-miles-up-as-first-meat-is-grown-in-a-space-lab

Space station experiment makes meat in microgravity using a 3D bioprinter - CNET

https://www.cnet.com/news/iss-experiment-makes-meat-in-microgravity-using-3-d-bioprinter/

Aleph Farmsが最初に作成した人工肉は、2018年の12月に発表されたステーキ肉の「ストリップ」です。この段階の人工肉は「肉」ではあったものの、「味」に問題を抱えていたとのこと。

なお、Aleph Farmsによる人工肉のプロトタイプともいえるストリップは、数切れで50ドル(約5400円)でした。2013年に発表された世界初の人工肉の生産にかかった費用が2万5000ユーロ(約2万9000円)であったことを考えると、ストリップは「格安」といえるものだそうです。

以下は人工肉・ストリップを調理した写真。味のほかにも「肉の厚みを5mmよりも厚くする」という課題が残っているそうです。



これまでは地球上で人工肉を作成してきたAleph Farmsですが、新たに宇宙空間で人工肉を作成するという試みに挑戦しています。

2019年9月26日、Aleph FarmsはISSのロシア側モジュールで、牛の細胞から3Dバイオプリンティング技術を用いて小さな筋肉組織を作成するという実験に成功しました。宇宙空間で行われた3Dバイオプリンティングで筋肉組織を生成するプロセスは、実際に牛の体内で起こる筋肉組織の生成過程を模倣しているそうです。

3Dバイオプリンターを用いた肉の生成はISS内の微小重力条件下で行われており、将来的にはこの技術を用いて宇宙で暮らす人々に「食料としての肉」を提供することができるようになると記されています。



by Victoria Shes

Aleph Farmsの共同設立者でありCEOも務めているディディ・エトゥビア氏は、「我々はいつでもどこでもどんな条件でも、人工肉を生産できることを証明します。正確で適切なタイミングに、食料を必要とする人々に対し、食料生産を可能とする強力なソリューションを提供できるようになる可能性があります」と語り、人工肉が食糧問題に対する一種の解決策になる可能性があると主張しています。

また、エトゥビア氏は「1kgの牛肉を生産するのに必要な水は1万〜1万5000リットルほどですが、宇宙空間でそれほど大量の水を確保することはできません。今回の共同実験は、『既存の天然資源を保護しながら、次世代の食料安全保障を確保する』というビジョンを達成するための重要な第一歩となります」ともコメント。

近年問題視される環境問題ですが、その一因となっている温室効果ガスの排出を削減するには「人類が肉を食べる量を大幅に減らす必要がある」と主張する研究論文も存在します。また、環境問題に対して個々人が行える最大のアプローチ方法は「肉と乳製品の摂取を止めること」であるという主張もあることから、Aleph Farmsの人工肉が食糧問題だけでなく環境問題に対しても優れたアプローチになる可能性も示唆されています。