競争“超”激化で倒産微増のフィットネス業界、選ばれるのは大手かそれとも新興か
「#腹筋女子」増加中
軽く汗を流したい人や、引き締まった体への憧れで頻繁にジムへ通う人のほか、健康維持という面からシニア層の会員も増えているフィットネス業界。世間では“運動の秋”到来を待たずして、もうすでにフィットネスブームが到来しているようだ。
経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、2018年のフィットネスクラブの会員数は336万5183人となり、4年連続で前年を上回った。2000年の会員数が約210万人だったことを考えると、この18年間で100万人以上も増えており、この増加数が人気の高まりを証明している。
最近では、SNS上で“#腹筋女子”というタグが付いた投稿が約39万件もあり、割れた腹筋を求めフィットネスクラブへ足繁く通う女性も多いようだ。男性のみならず多くの女性がジムで汗を流していることも会員数増加要因の一つと考えられる。
右肩上がりのフィットネス業界
増えているのは会員数だけではない。フィットネスクラブの会員数とともに、業界規模も年々増加している。帝国データバンクのデータによると、フィットネスクラブ経営業者の2018年度の収入高合計は前年度を4.2%上回る6387億3600万円となり過去10年で最高。加えて、2011年度から8年連続で前年度を上回っており、業界環境は“かなり”好調と言えよう。
ここ数年は、国や自治体をあげての健康啓発イベント開催により国民の健康志向が高まったことや、来年開催される東京五輪に向けた国民のスポーツ・運動への関心増加など、フィットネス業界には好材料が多かった。
24時間営業の店舗や女性専用、高級感重視など、フィットネス各社が提供するさまざまなサービスが、業界を押し上げている。
そうしたなか、ある切り口で各社の業績を見てみると、一つの特徴が表れた。
好調なのはどこ?
その切り口とは「業歴」だ。表の通り、「50年以上」を除く全てで増収企業数が減収企業数を上回ってはいるが、注目すべきは“増収の構成比”。最も増収企業が多いのは、老舗でも大手でもなく、「業歴10年未満」の新興企業だ。各レンジのなかで「業歴10年未満企業」の増収の構成比が唯一4割を超えており、新興フィットネスの好調さが見て取れる。
新興企業の代表例として挙げられるのはやはり“結果にコミット”でおなじみのRIZAPだろうが、今盛り上がりを見せているのはRIZAPだけではない。近年勢いを増している、暗闇フィットネスをご存じだろうか。
代表的なのは、ボクシングフィットネスのb‐monsterやバイクエクササイズのFEELCYCLE。特徴としては、音楽に酔いしれるクラブ感覚でエクササイズができ、スタジオ内が暗いため羞恥心を感じない点だろう。
実際にFEELCYCLEに通うユーザーからは、「暗いため他人の目を気にせず汗をかけるし、暗闇と大きな音楽の組み合わせで非日常感を味わえる」(20代OL)という声が聞かれた。
恥ずかしさが無い点と普段味わえない感覚を体感できることが大きな魅力となっており、フィットネス業界に新たな風を吹かせている。
まだ業歴5年にも満たない新興企業たちが展開する同事業は、若者を中心に広がりを見せており、顧客のニーズを汲み取った新たなサービスで市場席巻を狙っている。
競争超激化で倒産微増
新興企業が台頭するなか、最近では他業種からの参入も目立つようになった。アパレル業界のほか、コンビニ大手のファミリーマートもフィットネスクラブ経営に乗り出している。他業種他業界からの参入が今後増え続ければ、顧客獲得合戦が激化するのは火を見るよりも明らかだ。
実際に、倒産件数も増加している。フィットネスクラブ経営業者の2019年の倒産件数は8月時点で8件。
数としては少ないもののすでに前年(6件)を上回っており、競合に敗れ業績悪化した企業や設備投資に失敗した企業が目立ち始めた。
競争の激化に比例して倒産件数の増加が予想されており、好材料が多く追い風が吹く業界といっても、油断は出来ない状況にある。
小さな子供からお年寄りまで、幅広い年代・男女が顧客のフィットネス業界。どの層もターゲットになるため、今後も数多くの新サービスが登場することだろう。各社の顧客獲得合戦が厳しさを増しているなかで好業績を維持するためには、サービスの差別化がより重要になってくる。
このまま有名大手チェーンが市場を席巻し続けるのか、はたまた新興フィットネスがそれに待ったをかけるのか。今後の動向に注目したい。