「インスタグラムの新しいメッセージアプリ「Threads」で、親しい友達との交流が加速する?」の写真・リンク付きの記事はこちら

フェイスブックは、さまざまなソーシャルメディアのアプリを展開している。Facebook(テキストと写真の投稿用)、Instagram(写真共有用)、WhatsApp(テキストメッセージ用)、そしてMessenger(こちらもテキストメッセージ用)だ。

そこにさらに、新たにもうひとつ友達とつながる方法をつくり出した。その名は「Threads from Instagram」。カメラを起点としたメッセージアプリで、内輪の友達だけでチャットするために使うものだ[編註:日本語版もダウンロード可能になっている]。

表面上は、ThreadsはInstagramのダイレクトメッセージ(DM)タブとかなり似ている。それもそのはず、似せてつくられているからだ。ThreadsはInstagramの派生アプリとしてつくられたのである。

親しい仲間とだけのコミュニケーション

ダウンロードは別々に行う必要があるが、ログインにはInstagramのユーザー名とパスワードを用いる。ログインすると、Instagramに昨年導入された機能の「親しい友達」リストが読み込まれる。この機能は、選ばれた一部の人向けに限定したコンテンツを見せられるというものだ。Threadsに表示されるのは、親しい友達リストの人たちだけであり、Threadsであなたに連絡できるのは、あなたが親しい友達に指定した人たちだけとなる。

「みなさんの会話の大部分が、ひと握りの人たちと交わされているとしましょう。それなのにどうして、ひと握りの人たちとの会話をメインに設計されたメッセージ体験がないのでしょうか?」と、インスタグラムで製品責任者を務めるロビー・スタインは問いかける。

「設計にあたって、わたしたちも自問自答しました。誰かの携帯電話の番号を知っているというだけで、その人にいつでも好きなときにテキストメッセージを送ってじゃましていいと思ってしまうのはなぜだろうか? 誰から連絡が来るのか完全にコントロールできるようなコミュニケーションを中心とした体験をつくり、このアプリを通じて提供することは何を意味するのだろうか?といった問いです」

誰からのアクションでもいちいち通知を送ってくるInstagramとは異なり、Threadsではユーザーにとって大切な人からしか通知が届かないように設定できる。さらにThreadsでは、ステイタスをカスタマイズして友人たちと共有できる。ごく親しい仲間がかまってくれることを信じて、ステイタスを「🙃退屈」にしたりできるのだ。また「🏕️キャンプ旅行中」とすれば、電波の圏外にいることを暗に知らせることもできる。

センサー情報を基に現在のステイタスを自動更新

さらにオプションとして自動ステイタス機能「Auto Status」が用意されている。これは、スマートフォンに内蔵されたセンサーの情報をもとに、自動的に現在の状況をシェアしてくれるというものだ。例えば、運転中であることを検知すればステータスを更新して「🚗移動中」にしてくれたり、現在地がレストランであることを検知すれば「🍝晩ごはんに外出」と表示してくれる、といった具合だ。

さらに、スマートフォンのバッテリー残量がわずかになれば、ステイタスが自動的に「🔌充電残量わずか」と表示して友人たちに知らせてくれるという便利な機能もある(ちなみに新規ユーザーの場合は自動ステータス機能がデフォルトでオフになっている)。

スマートフォンのセンサーを利用して、ユーザーのステイタスを自動更新してくれる。PHOTOGRAPH BY INSTAGRAM

「ユーザーの現在地の座標ではなく、どんな状況であるのかに注目してみたかったのです」と、Threadsの開発を率いたプロダクトマネージャーのシャロン・ツェンは説明する。「どのレストランにいるのかは伏せておきながら、何をしているのかというハイレヴェルな“コンテクスト”を提供できればと思ったのです。ユーザーのみなさんからは、いつなら会話に参加できて、いつなら参加できないのかを通知する機能が欲しいという意見をいただいていました。人々は自分の最新の状況を常に仲間に伝えていたいと考えているのです」

Threadsは、いかなる種類のメッセージの送受信にも使える。だが、中核機能はInstagramと同じで写真の共有にある。Threadsアプリを開くと自動的にカメラが起動し、Instagramと同じフィルターを使って写真や動画を撮影できる。そして指先ひとつで、親しい友達リストに登録された相手に送信できる。

「画面の下には友人たちのプロフィール写真があり、それらをカメラショートカット(Camera Shortcuts)と呼んでいます」と、ツェンは説明する。プロフィール写真は順番を入れ替えることができるので、写真を送ることが多そうな相手をカメラボタンのすぐ横に置いておくこともできる。「こうしてThreadsアプリのカメラ機能は、それぞれが個人ごとにパーソナライズされた独自のものになるのです」

Instagramの体験を新アプリで補完

Threadsは、インスタグラムのメッセージアプリ「Direct」に続いて登場したかたちになる。Directもカメラを起点にしたメッセージアプリだったが、今年になってすでに提供が終了している。インスタグラムの広報担当者が「TechCrunch」に語っていたところによると、同社では「(DMである)Instagram Directを友人たちと楽しく会話できる最高の場にし続ける」ことに注力したかったのだという。

しかし、インスタグラムの製品責任者であるスタインによると、ユーザーにとって大切な人たちとの「可能な限り最高の体験」を既存のInstagramアプリ内で構築するのが、どうしても不可能だったのだという。

「現時点でInstagramの起動直後にカメラを表示することはしていませんし、メッセージの送受信のためにカスタマイズすることもしていません。プライヴェートな内輪だけの“空間”で大切な人たちからだけプッシュ通知が来るという場をつくるのは、Instagramアプリのなかでは不可能だったのです」とスタインは説明する。「わたしたちが優先したのは、こうしたことを最高に楽しめる体験です。だからこの場合は、個別のアプリをつくることが最適であると判断したわけです」

Threadsアプリでの会話は、すべてメインのInstagramアプリにも同期される。このためユーザーは、いちいちThreadsとInstagramを切り替えなくても相手に返信できるようになっている(もし、自分が誰かの親しい友達リストに登録されている一方で、自分がその人を登録していない場合、自分からはInstagramのDMでメッセージを送ることができる。それに対して相手はThreadsからメッセージを返せる)。

重要なポイントは、InstagramからThreadsへの乗り換えを促すことが目的ではない点にある。Instagramでの体験をうまく補完する、新たな機能を提供することにあるのだ。

カメラボタンの上に「親しい友達」が並ぶ。PHOTOGRAPH BY INSTAGRAM

ひと握りの大切な人たちのために

ユーザーがプライヴェートなメッセージを好む傾向は、フェイスブックのエコシステム全体を見ても感じとれるものだ。フェイスブックの創業者で最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグは、インターネットを「リヴィングルーム」になぞらえている。これまでに出会った全員に向かって最新情報をまき散らすのではなく、ひと握りの大切な人たちだけにコンテンツを共有したいという考えが、人々の間で急速に広まっているのだ。

だとしても、フェイスブックがメッセージアプリを細分化するには、いまは奇妙なタイミングでもある。同社は反トラスト法違反の疑いによって、複数の調査の対象になっているのだ。

例えば9月には、フェイスブックが市場を独占しているとして州検事らが調査を開始した。また米司法省も独自に、反トラスト法違反の疑いで調査を計画していると報じられている。フェイスブック傘下に新たなメッセージアプリが登場したことで、「独占状態ではない」という同社の主張は、さらに厳しいものになるだろう。

「親しい友達」の機能に飛びついたInstagramユーザーにしてみれば、Threadsの登場によって、さらに積極的にメッセージをやり取りできる場がひとつ増えたかたちになるかもしれない。「大切な人たちの存在を近くに感じられるような、可能な限り最高の体験をつくりだそうとしているんです」と、スタインは言う。「これらすべての機能が合わさることで、人々は互いにそばにいられないときでも、互いの存在をより近く感じられるようになると考えています」

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