「マルチタスク」が苦手でも心配することはない
スキルアップを望んで転職したのですが、マルチタスクが苦手なこともありミスが重なってしまうときがあります。今の自分に不安が拭えず、前に進み出せません(写真:ABC/PIXTA)
→安井さんへのキャリア相談は、こちらまでお送りください。
はじめまして。このキャリア相談ではしばしば、将来は自分でつくりあげるものだから、失敗は成長材料にしてポジティブに、とおっしゃっていますね。私は今の自分に不安が拭えず、前に進み出せません。どうかアドバイスをいただけたらと思います。
現在、社会人3年目、営業事務をしています。今の勤め先は2社目で、入社してから8カ月ほどになります。ファイリングや電話の取り次ぎが主業務の前社からスキルアップを望んで入社しましたが、うまくいきません。
スピードを求められるうえ、苦手なマルチタスクな面もあるため、大小ミスが重なります。なくすための努力はしているつもりですがあおられたり、できていないところを問い詰めるような先輩の言動に萎縮してしまい、必ずしもうまくいきませんし、仕事上の必要な会話もしどろもどろになってしまいます。
そういったことがつらく、職場を離れてしまうことが2度ほどありました。職場に迷惑をかけるのはもちろんですが、自分のことも嫌になります。一方できつくあたってくる先輩への対処法など親身になってくれる先輩もいます。
そんな中で1日1日やりきるつもりでいても、どうしてもめげてしまいます。職場での信用がない、社会人としてなっていないと思ってしまいます。
卑屈にならず、あるべき自分の姿をどう見つけだし、進むべきでしょうか。転職も考えていますが、こうしたことを繰り返してしまっては元も子もないです。アドバイスのほどお願いいたします。
営業事務 お茶っ葉
まずは「できた経験」の積み重ねを
スピードを気にしたり、マルチタスクをこなすことはまずは考えず、1つのことを完璧にこなすことで「できた経験」を積み重ねていきましょう。
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転職した会社において、ミスが重なってしまう現状は非常に苦しいでしょうし、自信がなくなってしまう気持ちもわかります。
作業におけるミスやそのことに起因する先輩からの叱責が重なり、自信をどんどんなくしてしまっているお茶っ葉さんの姿が目に浮かびます。
しかしながら、まだ社会人3年目ですから、現状の自分が永遠に続くという前提で、将来の自分に対してまで自信を失ってしまう必要はまったくありません。
とはいえ、現状を打破しないことには前に進むことも、将来の展望を描くことも困難でしょう。そのような状況において、一番避けるべきは逃げることと過度に焦ることです。
逃げるというのは、現状を変えようと思って転職をするという行為ですが、これは「自分×環境」という2軸における環境だけを変える行為ですから、お察しのとおり自分が変わらないかぎりは転職して職場という場所だけを変えてもまた同じことの繰り返しになるでしょう。
一方で、いろいろとできていないから全部頑張ろうと、焦って物事にぶつかってみるというのも無理があります。人間誰しもそこまで器用ではありません。
ではどうすればいいか?
おそらく現時点においてお茶っ葉さんにいちばん必要なのは、「何かを成し遂げるという経験」です。
仕事ができる人も、最初からできたわけではない
成功した経験がないがゆえに、自信が持てない。自信が持てないから何をやってもうまくいかない。そんな負のスパイラルに陥ってしまっているように思えます。
「何かを成し遂げるという経験」というと、大きな仕事とか目先の仕事全部、と思ってしまいがちですが、小さな仕事でもよいですし、目先の仕事のうちたった1つでもよいのです。
例えば、目先の仕事のうちいちばん重要な仕事、または緊急性のある仕事に「だけ」まずはフォーカスし、その仕事を完璧にこなしてみる。
たとえ小さくとも、そういった成功体験を積み重ねていけるかどうかがその後の自分自身に対する自信や仕事に対する自信には大きな影響を及ぼしますから、自分の中でまずはゴールを設定し、それを成し遂げるという経験を重ねていきましょう。
世の中仕事ができる人もそうでない人もいますが、仕事のできる人だって、最初から仕事ができたわけではありません。
いろいろなミスを重ねる中で、自分はどういったミスをする傾向があるのか、自分が仕事をするうえで気をつけるべきポイントは何か、そういった学びを通じて成長した結果として今があるのです。
であるから、現時点でできなかったとしても、まったく問題ではありませんし、できないということを自覚しているからこそ、対応策も練れるというものです。
現時点における自分と将来の自分は異なります。したがって、現時点での自分を見て将来を諦める必要はありません。将来が現状の延長線上でしかないのか、それとも違うのか。
それはひとえに個々人の人生に対する姿勢や、諦めない努力や困難にぶつかった際の創意工夫にかかっています。
将来なりたい自分から逆算して、今何をするべきかを考え、今できる範囲で小さな成功体験を積み重ねていく。そうすることで、小さかった成功はやがて大きな成功につながる可能性すらあるのです。
失敗をたくさんし、許される権利がある年齢
社会人3年目の自分の現状だけをもって将来を悲観する必要はまったくありません。まだ20代の半ばでしょうから、自分自身の行動によっては「将来何者にでもなれる」可能性のある年齢です。
失敗をたくさんする権利もあるし、そしてそれが許されるのも若者ならではの特権です。失敗をすることが悪いのではなく、失敗を次回に生かさないことが悪なのです。
すべてをやろうとせずに、まずは落ち着いて1つひとつの仕事を丁寧に、そして完璧にこなしていくことで、小さな1歩を踏み出し、小さな成功を重ねていきましょう。
現在の自分のできなさをベースに考えるのではなく、将来の輝ける自分から逆算して、腰を据えて1歩1歩着実に前に進んで行けばよいのです。
周りのペースはまずは気にせず、自分のペースで完璧にこなすということにフォーカスしてみてください。そのような歩みを通じてお茶っ葉さんが仕事と自分自身に対する自信を取り戻し、輝ける社会人として活躍されるであろうことを応援しております。