マジョルカに移籍した久保建英。デビュー戦は交代出場で、プレーしたのは15分程度だった。気になったのは、その割にプレーの機会が少なかったことだ。久保にパスはせいぜい2、3度しか回らなかった。
 
 その中で、あえてよかったところを語るなら、それはポジショニングだ。右ウイングというか、右サイドハーフというか、微妙なところだが、少なくとも久保の位置取りに問題はなかった。ボールが回ってこなかった理由が、そのポジションの悪さに起因しているわけではなかった。
 
 想起するのは、かつてマジョルカに在籍した2人の日本人選手だ。大久保嘉人と家長昭博。彼らはその点に一番の問題を抱えていた。適切なポジショニングが取れずにいた。自分を客観視できていないという感じだった。
 
 それは2人に限った話ではなかった。日本人の攻撃的な選手は総じてポジショニングに無頓着だった。日本でその重要性が説かれていなかったからだ。テレビ解説者や評論家は「試合が始まってしまえば、ポジションなどあってないようなもの」と、率先して述べていた。「流動的な動き」という言い回しをこだわりなく使っていた。
 
 日本代表ではかつての中村俊輔や香川真司がその代表的な選手になるが、現在の久保に彼らのような癖はない。むしろその逆。協調性に優れたプレーをする。
 
 しかし、それでもボールは回ってこなかった。まだチームに受け入れられていない様子だった。強敵バレンシアとのアウェー戦。スコアはその時0-2で、焦りを伴う攻撃になっていたので致し方ない面はあるが、心配の方が勝るけっして楽観的にはなれないデビュー戦であったことも確かなのだ。好プレーを披露するには、一刻も早くチームに馴染む必要があるーーとは衆目の一致するところだと思う。

 ところが久保は「メスタージャ」で15分プレーしただけで、チームをおよそ10日間も離れることになった。パラグアイ戦(5日)、ミャンマー戦(10日)を戦う、日本代表メンバーに招集されたからだ。

 パラグアイ戦は親善試合。一方のミャンマー戦はW杯予選(2次)のアウェー戦ながら、日本の大勝が予想される弱者との一戦だ。海外組ではなく、東京五輪を目ざすU-22チームやJリーグ勢を中心とする国内組で臨んでも十分に対処できる、心配のない相手だ。

 ところがご承知のように、日本代表森保監督は今回、久保をはじめ欧州組を19人も招集してしまった。開幕して間もないこの時期、各所属クラブで立場が確立されている選手は少ない。チームを離れたくないと考えている選手が多数を占める中で下したこの森保監督の判断。強引と言わざるを得ない。流れに逆らう、横車を押すような行動と言われても仕方ない。

 久保の場合はそのうえ18歳になったばかりだ。いろいろな意味で大人になりきっていない危うい年頃である。マドリードから突如、マジョルカ島を訪れたと思ったら即帰国。そしてミャンマー遠征を経てマジョルカ島に戻るわけだが、このタイミングで、そんな強行軍を課していいものだろうか。

 マジョルカ島でチームメイトと一緒に過ごす時間を作ってやるのが、日本代表監督としての親心というものはないのだろうか。

 日本代表にとって、マジョルカで1日も早くスタメン出場し活躍してもらうことが、パラグアイ戦やミャンマー戦で活躍することより100倍有益なことであるぐらい、サッカーにそれほど詳しくない人でさえ分かると思う。

 ゴルフの世界で飛ぶ鳥を落とす勢いにある選手と言えば、全英女子オープンを制した渋野日向子だ。彼女は連日、多くの人に取り囲まれている。大会ではまさに客寄せパンダの役割を果たしているわけだが、たとえば今週開催される大会(ゴルフ5レディストーナメント)には欠場する。自らの意志で。ゴルフは出場試合をコントロールできる。ツアーのスケジュールを組むことができる。細かい規定があるとはいえ、自由が保障されている。