■偏差値30から世界トップ大学へ

「そんなの無理」とか「絶対できない」などなど……。私の人生はずっと、まわりの否定的な声との闘いでした。それでも高校時代には偏差値30台から勉強を始めて同志社大学に現役合格し、大学では経済学を専攻しました。そして大学院はイギリスの名門・ケンブリッジ大学にチャレンジし、経済学ではなく心理学を学びました。

ジーエルアカデミア代表取締役 塚本 亮氏

実はイギリス留学のために現地の語学学校に入学した時点では、ケンブリッジがどのような大学なのかも知りませんでした。たまたま語学学校のあったケンブリッジの町並みが気に入ったので、この町の大学院に行きたいと思っただけで、そこが世界トップクラスの超難関校だとは夢にも思っていませんでした。改めて調べると、通っていた語学学校の大学院進学コースからケンブリッジに合格した人などほとんどおらず、クラスメートたちからは「おまえ、正気か?」とまともに受け止めてもらえませんでした。

そうなるとむちゃくちゃ燃えるんです。誰がどんなに「無理」と言おうとも「何か方法がないか」と考えたくなります。しかも、私にとって大学院合格は通過目標にすぎず、目的は別。経済学の知見を活かして心理学を学ぶことです。どうせ学ぶならトップレベルの大学院がいいに決まっています。必ず道は開けると信じ、自分の思いを誰彼なく発信し続けていました。

すると世の中不思議なもので100人中99人が反対しても、必ず1人ぐらいは味方が現れるものです。私の場合も語学学校の先生が「そこまで言うなら、一緒に頑張ってみよう」と手を差し伸べてくれました。その先生はケンブリッジに関わりがあり、知人の教授に引き合わせてくれて、そこからトントン拍子に話が進んでいったのです。

どんな状況でも自分のやりたいことを発信し続ければ、必ず誰かが共感してくれる。そこから未来が開けるのです。

■心が折れそうなとき何をしたらよいか

勉強で直面する一番の課題はモチベーションの維持でしょう。最初はやる気があってテキストを買ったのはいいけれど、次第に勉強するのが嫌になってきて三日坊主になってしまうことがよくあるかと思います。

そこで、私が常に考えているのは、人間のモチベーションが持続する限界は3カ月、ざっと90日だということです。例えば、仕事でも半年のプロジェクトを立てても、最初にあった高いモチベーションは次第にどこ吹く風で、絶対に中だるみをし、最後にまずいと感じて締め切りのギリギリで頑張るということがよくあるケースです。

私の場合も、ケンブリッジに入学するにあたっては、1つ条件が課せられており、入学するには英語試験の『アイエルツ(IELTS)』のスコアを大学が要求するレベルまで高めなければなりませんでした。私は当時のスコアが「7.0」。ケンブリッジ入学の条件は「7.5」と、あと「0.5」不足していました。けれども、その時点での「7.0」というスコアが既にかなり頑張った結果であったため、モチベーションの維持が難しい状況でした。「7.0」であれば、ケンブリッジ以外の大学院なら何の問題もなく合格できるレベルなので、ケンブリッジにこだわらなくてもいいのではないか、と何度も心が折れそうになりました。

そんなタイミングで何をしたかというと、ケンブリッジの教授たちに会いに行きました。すると改めて「どうしてもここで学びたい」と気持ちが奮い立ちます。人間である限り、モチベーションの下がるタイミングは誰にでも必ずあるものです。そんなときに自分ひとりでなんとかしようとしても、簡単にはうまくいきません。だから人の助けを借りて自分のやる気に火をつけるのです。

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■集中力の復活には15分かかる

集中して効率よく学ぶには誘惑を断つ必要があります。今なら最大の誘惑源はスマホ。英語学習などもスマホアプリで取り組む人が多いのですが、アプリでの学習には明確な目的意識と強力な自制心が求められます。「さあ、勉強するぞ!」と意気込んでも、SNSの着信などが入ると、ついそっちを見てしまうのは人間の性ですから。

学ぶには誘惑に勝たなければなりません。けれども、誘惑に勝とうとする意識自体がストレスになります。誘惑と戦うだけで目標達成率が下がること、目標達成率の高い人はスマホのような誘惑物にそもそも接触しなかった人であることが、心理学研究で明らかになっています。

だから「これから1時間、集中して勉強しよう」と決めたら、スマホの電源を切るなり、別の部屋に置いておくなどして通知が届いても気づかないようにしましょう。せっかく高まった集中力が通知音などでいったん途切れると、再び同じ集中レベルまで復活するのに15分ぐらいかかってしまいます。

集中を途切れさせないために、カフェなどで時間を区切って勉強するのも一案です。カフェに入って1時間だけはスマホの電源を切る、機内モードにする、カバンの奥にしまい込む。1時間だけ集中するぞと自分に言い聞かせれば、自制心を無理やり働かせてストレスを感じることもありません。

■ニュートンのように巨人の肩の上に立つ

ケンブリッジでの修業で、何より今も役に立っているのが毎週の課題レポートでした。指導教官から課題図書を指定され、自分の考えをまとめたレポートをもとに教官と議論します。考え方の偏り、独りよがりな点などを厳しくチェックされ、思考を徹底的に鍛えあげる濃密な知的訓練です。

その際に叩き込まれたのが、参考文献の読み込みでした。1つ論文を読めば、その最後に参考文献が記されています。それらをすべて読むように指導されました。読んだ文献の最後にはまた参考文献が記されていて、それも全部読む。論文を一本読めば、そこからピラミッド状に参考文献のすそ野が広がっていきます。こうして先行研究すべてに目を通す網羅的な学び方を叩き込まれました。

これは、ケンブリッジ大学出身のニュートンがかつて語った、「巨人の肩の上に立つ」ということに通ずるものです。偉大な先人たちが積み重ねたものを徹底的に読み込むことが大切です。

ビジネスパーソンの勉強でも同じことが言えるでしょう。例えば読書をするとき、いいなと思った著者がいれば最新刊からデビュー作までさかのぼって読むと、その人の思考の軸をより深く理解できるようになります。また、文中で引用している本があれば、その本を読んでみたり、類書があれば類書も読んでみたりすることもいいでしょう。おすすめの勉強法です。

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塚本 亮(つかもと・りょう)
ジーエルアカデミア代表取締役
ケンブリッジ大学大学院修士課程修了(心理学専攻)。『偏差値30でもケンブリッジ卒の人生を変える勉強』など著書多数。
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(ジーエルアカデミア代表取締役 塚本 亮 構成=竹林篤実 撮影=石橋素幸)