日本を代表するYouTuberの1人となったキングコングの梶原雄太は、成功するためにどのような努力や工夫をしたのだろうか?(写真:「YouTuberカジサック誕生!!」 YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=-sQmxfgOPIA

今や本来の芸名よりも「カジサック」という名前のほうが有名になっているかもしれない。最近、YouTubeの世界で人気を博しているキングコングの梶原雄太のことだ。

梶原はYouTuber「カジサック」として、2018年10月にチャンネルを開設して活動を始めた。「2019年末までに登録者数が100万人に届かなかったら芸人を引退する」と公言してスタートした。

背水の陣の覚悟でYouTubeの世界に挑んだ梶原は、7月11日に見事に目標を達成。8月16日には自身のチャンネルで緊急生放送を行い、登録者数100万人を超えたチャンネルに贈られるという「金の盾」を公開した。

YouTubeの世界で、登録者数100万人を超えるというのは本当に難しいことだ。芸能人でもそれを達成できている人は数えるほどしかいない。有言実行でこの高い目標を達成したのは文句なしの快挙である。8月29日時点で、登録者数は118万人を超えている。

カジサック「成功の秘密」

梶原はなぜYouTuberとして成功することができたのか。その理由を一言で言うと「本気でやっていたから」ということに尽きる。名の知れた芸能人がYouTubeを始めても、それほど再生回数が伸びないというケースは珍しくない。

その理由は、彼らの多くはテレビなどのマスメディアに出ることを本業にしているため、YouTubeを副業として片手間でやってしまうからだ。そこにきちんと労力を注ぎ込んで、テレビと同じかそれ以上の真剣さで取り組むということがなかなかできない。

しかし、梶原は最初から本気でYouTubeに臨んだ。そこには彼なりの悲壮な覚悟があった。相方の西野亮廣は絵本作家としてベストセラーを連発したうえに、多角的なビジネスを手がけて成功を収めていた。

だが、一方の梶原は芸人として行き詰まりを感じていた。テレビタレントとしてレギュラー番組も少なく、満足のいく活動ができていなかった。このまま普通の芸人として生きていてもいいのか。先細りになるだけではないのか。悩み抜いた梶原が導き出した1つの答えが、YouTubeという新しい市場に進出することだった。

梶原はYouTubeを始める前に、そこで求められていることは何なのか、どうすれば多くの人に見てもらえるのか、徹底的に研究を重ねた。企画や撮影や編集に関しては親しいスタッフの協力を得て、チームとして動画制作を手がけた。ちょっとしたテレビ番組を作るぐらいの意識を持って本気で取り組んだことで、クオリティーの高い動画が量産される体制ができて、登録者数はどんどん増えていった。

YouTuberに頭を下げたプロ芸人

また、芸能人YouTuberとして梶原が特別だったのは、ラファエルなど既存の人気YouTuberに頭を下げてアドバイスをもらいに行ったことだ。


人気YouTuberに頭を下げてアドバイスをもらいに行った、梶原の真剣さがうかがえる(写真:「ラファエル兄さんにYouTubeで成功する秘訣教えてもらった!」 YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=FozAPdgtlEE)

実は、これがなかなかまねできないのである。プロの芸人は、笑いに関しては自分たちがいちばん優れているという自負がある。そのため、ある年代以上のプロの芸人の多くは、半分素人のようなYouTuberをどこか見下しているようなところがあり、彼らに対して下手に出ることが難しいのである。

YouTuberが社会的にも認知された昨今では、芸人が公の場で露骨に彼らを馬鹿にするようなことはなくなったが、内心ではまだまだ壁を作っている人も多いと思われる。

そんな中で、梶原は本当に下からいった。彼らの成功の秘訣を調べて、直接会って話を聞いた。早い時期にその対談の動画も公開した。これによって、YouTuberや彼らのファンに梶原の真剣さが伝わった。

また、梶原は親しい芸人をゲストに呼んで対談をすることもあるのだが、そこでは後輩に対しても「さん付け」で呼んだりするなど、敬語を使う場面が目立つ。自分は「カジサック」としてはデビュー間もない新人なのだから、芸人に対しては敬語を使うのが当然だ、ということなのだろう。こういうところにも梶原の本気が現れている。

勝因は「プロのエゴを捨てたこと」

芸人の世界は体育会的な縦社会だから、先輩が後輩に偉そうにするのが当たり前になっている。テレビでもそれは普通の光景だ。

だが、テレビを見る習慣のない若いYouTube視聴者は、それにも違和感を覚えることがあるのではないか。いわば、梶原はプロの芸人としてのエゴをYouTubeの世界に持ち込まず、徹底的にYouTube側の文脈に自分を合わせていったのだ。これが彼の成功の最大の要因である。

梶原のYouTubeチャンネルの動画を見ていると、彼が芸人として本来持っている明るさ、動きの機敏さ、人当たりのよさ、ちょっと抜けているところなどの資質が、見事に生かされているのを感じられる。それは、テレビタレントとしての彼を見ているだけでは十分に伝わりきらなかったことだ。何よりも、彼自身がYouTubeの活動を心から楽しんでいるのが伝わってくる。

今や日本を代表する人気YouTuberの1人となった梶原は、お笑い界とYouTube界をつなぐ架け橋のような存在になりうる。梶原を通じてお互いが交流を深めていき、相手のことをよく理解し合えば、それぞれの世界がより活性化していくことになるだろう。今の梶原は間違いなく、お笑い界とYouTube界の未来を変えるキーマンの1人である。