■新社会人に教えたい「給与明細の読み方」

4月より新社会人として働き始めた若い読者の方は、仕事にも慣れて若干余裕が出てきたころでしょうか。

おそらく人生経験豊富な職場の先輩、ご両親などから「将来、あるいは万が一のとき」のために余裕をもったライフプランを立てるよう勧められ、どうしようか迷っていらっしゃる方もいると思います。実は皆さんはすでに「4つの保険」に加入していることをご存じでしょうか。

4つの保険とは何か? それは、皆さんの給与支払明細書(以下、給与明細)を見れば一目瞭然です。

毎月、給与明細の「総控除額」を確認して「こんなに給料から引かれるなんて」とガッカリしているかもしれませんが、実はこの「総控除額」の中に、保険料の支払いが含まれているのです。

控除は大きく分けて「法定控除」と「法定外控除」の2つに分けられます。

このうち後者に該当するものは、社宅費や財形貯蓄、従業員持ち株会の拠出金、労働組合費、社員旅行の積立金など。控除内容は会社によって異なりますが、法律に定められていない天引きが「法定外控除」です。

一方、前者の「法定控除」は、名称の通り、法律上、会社が賃金から差し引くことが定められているもので、新卒なら次の5つとなります。

本人や家族が、病気・ケガなどで診療を受ける場合、一定の自己負担分のみで医療等を受けるために支払う「健康保険」。年金の支給を受けるために支払う「厚生年金保険」、退職したときなど、再就職するまでの間の給付を受けるために支払う「雇用保険」。

個人の所得に対して課税される「源泉所得税」、地方自治体による行政サービスを受けるために支払う「住民税」。最初の3つは社会保険料で、残り2つは税金です。

社会保険料を支払っているということは、あなたはすでに保険に加入しているといえるでしょう。

そして、事業主が保険料を負担するため給与明細に記載されませんが、業務上、通勤上の労働者の疾病や死亡に対して、労働者やその遺族に必要な保険給付を行う「労災保険」を加えると、「4つの保険」に加入していることになります。

また、40歳以上となると、介護サービスを受けるための「介護保険」も加わり、いずれ加入する保険は5つに増えるのです。ただし、初任給から控除されるのは、所得税と雇用保険のみ。

健康保険と厚生年金保険は、前月分が翌月の給料から差し引かれるので5月から。住民税は、前年度の所得に対してかかるものなので、2年目の6月までは天引きされません。そのため、新社会人の手取りは多いのです。今後天引きされる額が増えることを覚悟しておきましょう。

■可処分所得は残り80%

額面の収入から、これらの社会保険料や税金を差し引いた金額を可処分所得といいますが、社会保険料約15%、税金約5%を負担している場合、法定控除だけで約20%。いわゆる手取りともいえる可処分所得は残り80%です。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/frema)

法定控除の保険料率は定期的に改正されますが、少子高齢化社会の現状を考えると、これらの負担が軽くなるとは考えにくい状況です。

決して小さくはない金額が給料から徴収されるわけですから、自らの給与が何に使われているのか、早い時期から、今後の社会人生活の戦略を立てていくことをお勧めします。手取りの多い今こそ、貯蓄グセをつける好機ですよ。

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黒田尚子
ファイナンシャルプランナー
CFP1級FP技能士。日本総合研究所に勤務後、1998年にFPとして独立。著書に『50代からのお金のはなし』など多数。

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黒田 尚子(くろだ・なおこ)
ファイナンシャルプランナー
CFP1級FP技能士。日本総合研究所に勤務後、1998年にFPとして独立。著書は『50代からのお金のはなし』など多数。
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(ファイナンシャルプランナー 黒田 尚子 写真=iStock.com)