1/12世界有数の極寒の都市、ロシアのヤクーツク。露店で食料品を買う女性。PHOTOGRAPH BY ALEX VASILYEV 2/12気温がしばしばマイナス40℃を下回るシベリアの冬。児童公園には、ほとんど誰もいない。PHOTOGRAPH BY ALEX VASILYEV 3/12ヤクーツクから少し離れたトゥムル村の農夫が、マイナス20℃以下という気温に備えて着込んでいる。PHOTOGRAPH BY ALEX VASILYEV 4/12ヤクーツク博物館の敷地に立つマンモス像の隣でポーズをとる、カメラマン(アレクセイ・ワシーリエフ)の母親。PHOTOGRAPH BY ALEX VASILYEV 5/12ヤクーツクのほとんどの住民にとって、バスは主要な交通手段だ。住民は冬の間、バスの待合所で最長20分ほど待たねばならないこともある。PHOTOGRAPH BY ALEX VASILYEV 6/12ヤクーツクの住民は冬の間、極寒から身を守るために分厚い毛皮の帽子や上着を着る。PHOTOGRAPH BY ALEX VASILYEV 7/12ヤクーツクにあるこの屋外市場は1年中ずっと営業しており、真冬でも凍った肉や魚を売っている。PHOTOGRAPH BY ALEX VASILYEV 8/1210日間の新年休暇の間、オルジョニキーゼ広場に集まるヤクーツクの住民たち。PHOTOGRAPH BY ALEX VASILYEV 9/12言語障害児を対象として寄宿学校の前でポーズをとる双子のウラドとスタース。この学校は、シベリア各地の生徒を受け入れている。PHOTOGRAPH BY ALEX VASILYEV 10/12ヤクーツクの図書館の机で書き物をする高齢男性。シベリアの冬の間、図書館は人気の“避難場所”になる。PHOTOGRAPH BY ALEX VASILYEV 11/12ヤクーツクのショルサ湖でアイススケートをする子どもたち。人気のある冬の娯楽だ。PHOTOGRAPH BY ALEX VASILYEV 12/12ヤクーツクの家は、支柱の上に建てられている。熱で永久凍土が解けないようにする工夫だ。PHOTOGRAPH BY ALEX VASILYEV

ロシア連邦に属するサハ共和国の首都ヤクーツクは、人間が定住している街として世界で最も寒い場所のひとつだ。シベリアに位置するこの街は、冬の平均最高気温がマイナス40℃程度にまで下がる。2008年1月、冬服を何枚も重ね着してヤクーツクを訪れたあるジャーナリストは、屋外で13分間過ごしただけで、体全体に「激痛」を感じ始め、屋内に引っ込んだ。

「冬の気温はマイナス40℃! 世界有数の極寒都市、ヤクーツクの過酷な暮らしがわかる12枚の写真」の写真・リンク付きの記事はこちら

「最初に痛みを感じるのは、露出している顔の皮膚です。ひりひりし始め、いきなり激痛が走ったあとに感覚を失います。皮膚への血流が止まったということなので、明らかに危険です。その後、二層構造の手袋の中まで寒さが染み通り、冷えた指を襲い始めます」

こんなにも居住に適さない場所に、誰が住みたいと思うのだろうか? 数十万人もの人々だ。なかには生まれたときからのシベリア人で、永久凍土に埋葬されるつもりのカメラマン、アレクセイ・ワシーリエフもいる(シベリアの冬に墓を掘るには、数日間にわたって火を燃やし、凍った大地をまず溶かす必要があるのだが)。

ワシーリエフの友人の多くは、大人になるとすぐにモスクワやサンクトペテルブルクに引っ越した。ワシーリエフもかつては、そうしたいと夢見ていたという。

「ヤクーツクでの生活は退屈で単調に思えました」と、ワシーリエフは振り返る。「半年間も雪と氷に閉じ込められる世界は、誰もが望む暮らしとは言えません。けれども、わたしを含むたくさんの人にとって、ヤクーツクは快適な場所なのです」

寒さに対処する創造的な方法の記録

ワシーリエフの最新の写真シリーズは、故郷へのラヴレターであり、最も過酷な気候下でも続く人々の生活を見せてくれる。

ショルサ湖でアイススケートをする子どもたちや、真冬に行商人が肉や魚を売る屋外市場、トナカイの毛皮を使った靴を製造する工場、バス停で暖を求めて身を寄せ合う通勤者などの心温まる写真がいっぱいだ。「屋外は寒いですが、どの家も暖房が効いています。屋外でも暖かい格好をしていれば危険ではありません」とワシーリエフは説明する。

この写真シリーズは、ヤクーツクの住民たちが寒さに対処する創造的な方法の記録でもある。例えば、セントラルヒーティングによって永久凍土が解けないように、支柱の上に家を建てる(ロシアではヤクーツクは「脚の上の都市」として知られている)、上下水道の配管や公益配電を、凍らないように地上に設置する、といった具合だ。

だが、こんな極北でも年中ずっと寒いわけではない。6月と7月には、気温が30℃以上にまで上昇し、1日のうち20時間は明るいままとなる。

ワシーリエフによると、カメラマンとして働くことで故郷を理解する方法が変わってきたという。「いまではヤクーツクを違った目で見ています。ここは退屈なところではないと気づきました。もっと近づいて見る必要があるだけなのです」