2018年5月に「レオパレス21」の施工不良を告発したテレビ東京『ガイアの夜明け』が、2019年2月5日に続報を放送しました。昨年の放送後に約束された同社の物件調査が進んでいない上に、ウェブサイト上では進捗率を誤魔化している実態を報じたのです。今回の件に怒り心頭なのは、『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者でマンション管理士の廣田信子さん。廣田さんは、経営陣による「現場の判断という言い逃れは通じない」と断じ、その理由についても解説しています。

レオパレス21、新たに1324棟の施工不良で1万4000人に引っ越し要請の衝撃

こんにちは!廣田信子です。

2月7日のニュースで、レオパレス21の物件で新たに1324棟の施工不良が発見され、1万4000人以上に引越し要請することになった…と報じていました。

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私が、この問題を知ったのは昨年、5月29日放映の『ガイアの夜明け』でした。数戸が並ぶ2階の天井裏が、まったく界壁がなく、広々とした空間になっている映像にぞっとしました。1戸で火災が発生したら、天井裏を通じて、あっという間に、離れた部屋にまで火災が広がるということです。もちろん建築基準法違反です。

火災の延焼防止や遮音目的のために天井裏に防火壁(界壁)を設けることは、建築基準法で義務付けられている基本中の基本です。申し訳程度に何か壁があっても、隙間があったら、延焼防止目的も、遮音目的も果たせませんからアウトです。

先週の『ガイアの夜明け』で、レオパレス21問題のその後を放送していました。全棟を速やかに調査して対応すると約束したのに、調査も、オーナーへの説明も、改修も進んでいない状況が放映されていました。それなのに、レオパレス21のホームページには、調査進捗率98.47%と表示しているのです。

ある物件では、レオパレス21の調査に市の担当者も同行して、界壁に隙間があることを確認しているのに、その後、レオパレス21からは、「問題なし」という報告書が届けられているのです。

これを見て、レオパレス21の悪質性を再確認しましたが、この放映を受けて、レオパレス21側も、1324棟の施工不良、1万4000人以上に引越し要請という記者会見をせざるを得なかったのでしょう。しかし、現場の判断でやったことで経営陣は知らなかったと言うのです。社長は、「驚いている」…と。「あきれる」を通り越して聞きました。

レオパレス21の物件では、あまりにも遮音性が悪い、壁に隙間がある等々様々な問題がネット上でも指摘されていましたし、一時、経営不振に陥ったレオパレス21が業績回復した陰にこういった組織的な不法行為があったのでは…とも言われています。

2012年には、裁判で界壁がない事実が明らかになり、レオパレス側も認めて和解に応じ、改修工事を行っているのです。それなのに、その裁判のことも、社長以下経営陣がまったく知らなかったなんてあり得ないことだというのは、誰が聞いても明らかじゃないでしょうか。

新たな問題の発覚を受け、レオパレス21は今期、380億〜400億円の赤字を見込んでいると発表しました。それでも、レオパレス21経営陣は、18年12月末時点での現預金は892億円、自己資本は1069億円で、自己資本比率は35%。資金は十分あるので問題ないと言っているようですが…。今の状況で、新たに、レオパレス21と契約しようという人が現れるのでしょうか…。

しかし、早急に今の居住者に引っ越しをお願いし、改修工事を終える…それを急いでもらわなければなりませんから、居住者のためにも、オーナーのためにも、それまでは、この会社に持ち堪えてもらわなければならないと、複雑な思いがします。

しかし儲けていたんですね。サブリースというのはそんなに魅力があるのでしょうか。不動産関係の方に聞くと、相続税対策、家賃保証、働かなくてもお金が入るというのは、いつの世になっても強い魔力を持つのだといいます。

私は、こんなに粗悪な住宅が大量に造られ、そんなところに我慢して暮らす人がたくさんいたことが、何だか悲しいです。設計者、施行者、チェックする行政…専門家が多数関わりながら、1324棟で、それが見逃されていた事実は、余りにも重いと思います。

唯一の救いは、実際に火災等で被害者が出ないうちに、この事実が明らかになったことです。『ガイアの夜明け』、お手柄だと思います。

image by: Lombroso [Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由で

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