「これからは『遊動の時代』、つまり移動を常態と考えるような生活感になっていくかもしれない」

 ー大きなパラダイムシフトですね。ただ人間には所有欲がありますし、マイカーの普及によって自動車産業は社会をリードしてきました。
 「メーカーの方々は既に分かっていると思います。高性能な車が安く買えるようになると、車はステータスとはいえない。あえて買うなら趣味的なものになる」

 「僕はマイカーの自動運転には興味がありません。むしろ『車を所有する不合理』に、社会がいかに気付くかに興味がある。たとえば渋滞という不合理や所有コストの不合理。これが是正される社会が、いずれ来るのではないでしょうか」

 「こうした変化は産業構造の高度化にもつながると思います。産業は、20世紀的な『モノづくり』から『価値づくり』へとシフトします。製造業の国から、世界のモデルになる高効率・循環国家へと転換していくべきでしょう」

 ー自動運転で、移動のあり方はどう変わるのでしょうか。
 「あくまで感覚的な予想ですが、都市の中はもっと低速・スムーズに移動できるようになると思います。都市間の長距離移動は自動運転の高速移動レーンが整備されて、人が運転する車は入れなくなるかもしれません」

 「モノの輸送、すなわち物流はヒトの移動より先に自動化されると思います。トラック輸送は人工知能(AI)による全体制御で、同じルートを往復する必要はなくなるでしょう。おそらくは小型化されて、最適なルートでブラウン運動をするように輸送車が動き回るようになるでしょう。今のように物流拠点で大型トラックから荷物を下ろし、積み替えて運ぶ無駄もなくなり、高効率になると思います」

 ー人々の生活そのものにも変化がありますか。
 「僕は特定の住所に家があって、そこに『定住』していると思っているのですが、冷静に振り返ってみると家にいる日数より移動している日数の方が長いことに気付きます。『定住』の反対語を『遊動』といいますが、これからは『遊動の時代』、つまり移動を常態と考えるような生活感になっていくかもしれないと思います」

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<プロフィール>
1958年岡山県生まれ。1983年武蔵野美術大学大学院デザイン専攻修了。日本デザインセンター代表。長野オリンピック開・閉会式プログラム、EXPO2005愛知公式ポスターでは日本の美意識を伝えるデザインを展開。2002年より無印良品アートディレクター、代官山蔦屋書店、森ビル、GINZA SIX、MIKIMOTOなどのVIをはじめ、領域を超えたデザインプロジェクトを多数手がける。2008~09年に展覧会『JAPAN CAR』をパリ/ロンドンのサイエンスミュージアムにて開催、日本車の可能性を世界に問いかけた。現在、外務省「JAPAN HOUSE」総合プロデューサー。世界インダストリアルビエンナーレ大賞、毎日デザイン賞、東京ADC賞グランプリ、亀倉雄策賞、原弘賞など、内外の受賞多数。2003年より武蔵野美術大学教授。著書『デザインのデザイン(岩波書店)』『白(中央公論新社)』『日本のデザイン(岩波書店)』『白百(中央公論新社)』は、多言語に翻訳され、世界に広く読者を持つ。