何か良くないことをあらかじめ想定していても、実際に起こってしまうと落ち着かないものである。1月9日に行なわれたアジアカップのトルクメニスタン戦は、そんな試合だった。

 トルクメニスタンには、ヨーロッパのクラブに在籍する選手がひとりしかいない。背番号8を着けたルステン・ミンガゾフが、チェコのスラビア・プラハに所属している。

 アジアの他国でプレーする選手は3人いる。日本戦で先制のスーパーミドルを決めたアルスラン・アマロフがウズベキスタンで、2点目のPKを決めたアフメト・アタエフがインドネシアのクラブに籍を置く。さらに控え選手のイリヤ・タムルキンが、キルギスタンのクラブの一員だ。

 チームの骨組みを担うのは、国内リーグ5連覇のアルティン・アシルの選手たちだ。日本戦ではスタメンの7人を占めた。交代出場した3人も、アルティン・アシルの所属選手である。ヤズグリー・ホジャゲルディエフ監督も、代表監督就任前はこのクラブを率いていた。

 欧州でプレーする選手の比較なら、日本のほうが圧倒的に多い。ただ、ひとつのクラブをベースとした日常的なコンビネーションの構築では、トルクメニスタンが上回っていた。

 いずれにせよ、力関係で日本が先行するのは明らかである。日本の立場を分かりやすく言えば、天皇杯でJ3やJFLのクラブと対戦するJ1のクラブ、といった感じだろう。勝って当然と思われる相手であり、選手からすれば自分たち本来のサッカーで力の差を見せつけたい。

 果たして、天皇杯でしばしばジャイアントキリングが起こるように、日本も冷たい汗をたっぷりとかかされた。自分たち本来のサッカーが見栄えのいいサッカーの追求へとつながり、ボールの奪い合いで負けない、攻守の切り替えを早くするといった原理原則でトルクメニスタンに劣ってしまった。

 0対1で終えた前半から一転して、後半は戦い方を一新した。立て続けに3点を奪い、勝点3を引き寄せた。

 ハーフタイムを挟んだ修正は評価できるものの、前半のうちに対応できなかったか、との思いは残る。0対1とリードされたあとにも、トルクメニスタンに決定機を作られている。権田修一のセーブで2点は許さなかったものの、ここで追加点を奪われていたら結果は違ったものになっていたかもしれない。

 そして、これからグループステージで対戦するオマーンとウズベキスタンは、トルクメニスタンよりも手強い。先制点を奪われたことよりもむしろ、前半のうちに流れを変えられなかったことを、いまのチームは重く受け止めるべきだろう。

 苦境を救ったのはW杯の経験者たちだった。2ゴールの大迫勇也は、分かりやすい結果を残した。取り替えの効かない存在であることが改めてクローズアップされ、彼への依存度の高さを危惧する声も聞こえている。

 だが、絶対的なストライカーをふたり揃えているチームなど、世界的に見ても少数と言っていい。大迫が取り替えの効かない存在となっているのは、それだけ彼がレベルアップをしているからだ。悪いことばかりでは決してない。

 今回のチームなら、武藤嘉紀がいる。「大迫への依存度が高い」と見るのは、武藤がチャンスを与えられて結果を残せなかったあとであるべきだ。

 その意味で、第2戦以降の選手起用は興味深い。チームの結果をひたすらに追い求めるなら、ベストの布陣を可能な限り送り出すべきだろう。それにしても、アジアカップは短期決戦である。11人から13、14人のグループでは、最後まで勝ち抜けない。

 チームの結果と個人の成長のバランスを、森保監督はどこに見出すのか。トルクメニスタン戦ではひとりのみだった交代選手の起用が、第2戦以降は大切になってくると思うのだ。