下品、だが深い…。謎に満ちあふれたわらべ歌「みっちゃんみちみち」を知ってる?あれは何だったのか?

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突然ですが、「みっちゃんみちみち……」と始まる歌を知っていますか?全国的にどこからともなく伝わり、知っている人は知っている、そんな歌です。『Dr.スランプ』のアラレちゃんで知ったという人もいるかもしれませんね。

歌の内容は極めて下品だけど

どんな歌詞かというと、地域によって若干の違いはあるものの、東京で歌われたとされるのはこんな感じです。

みっちゃんみちみち(びちびち《神奈川の一部》)うんこたれて 紙がないから手で拭いて もったいないからなめちゃった

みっちゃんの謎より

地域によっては「みちみち」が「道ばた」になっていたり、「なめちゃった」が「食べちゃった」になっていたり、いろいろバリエーションがあります。「みちみち」が「道ばた」に変化するところを見ると、意味は「道々」なのですが、擬音としてとらえる見方もあります。

アホみたいなわらべ歌だと思うかもしれませんが、これを真剣に研究した人がいるというのだから驚きです。民族音楽学者の小泉文夫氏は、日本各地のわらべ歌の記録を行っており、この誰が作ったともわからない「みっちゃんみちみち」の音源もテープに残しています。昭和36年に録音されたこの音源は、おそらく唯一の公式記録であるといわれています。

また、国文学者の林望氏は、著書『古今黄金譚 古典の中の糞尿物語』の中でいちばん最初に「みっちゃんみちみち」を取り上げ、「天下の傑作」だと評しています。「みっちゃんみちみち」と「み」が連続して韻をふんでいるところ、「みちみち」と「道々」で、歩く道中と排便の擬音の掛詞になっているところ、また後半の対句の巧妙さも称えています。

いつから歌われている?

この歌は、少なくとも19世紀ごろには歌われていたといい、昭和初期には全国に広まっていたようです。誰が作ったかもわからないわらべ歌で、下品なため教育上よろしくないとされてきたはず。だからこそわずかな記録を除いては口頭でのみ伝わってきたわけですが、しっかり受け継がれているのがすごいですね。

頭文字に「み」のつく子をからかう歌としても歌われていたわけで、いい気持ちのする歌でないことは確かです。もしかすると、近年はこの歌を知らない層も増えているのかもしれません。ジェネレーションギャップでからかう材料になっていることもあるでしょう。

時代背景を表わした歌詞だったのかも

そういう意味では表立って歌うのも憚られる歌なのですが、いろいろ考察される中で、「もったいないからなめちゃった(食べちゃった)」という表現は糞尿を恵みをもたらす神聖なものととらえる農耕信仰的価値観からきているのではないか、という見方もあるようです。糞尿は作物を育てる肥料にもなるからです。

結局いつから、どこから始まったかわからない歌ですが、中世の末法の世、飢餓に苦しんだ時代に生まれたのでは?とも言われているんだとか。

いまだ謎の多いわらべ歌です。

参考:みっちゃんの謎