緊急自動車の後追い走行は違法?(写真はイメージ)

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 7月16日、東京都渋谷区の明治通りで、緊急走行中の救急車の後ろを走って信号無視をしたとして、トラック運転手の20代男性が現行犯逮捕されました。

 報道を受けて、SNS上では「危なすぎる」「信号無視をしなければ捕まらなかったの?」「渋滞時に救急車の後ろをついて行く車はずるい」「家族の救急搬送の後追いで走ったことがあるけど、それは問題ないの?」など、さまざまな声が上がっています。

 オトナンサー編集部では、緊急車両の後追い走行にまつわる法的問題について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

後追い自体は違法ではないが…

Q.緊急車両の定義とは。

牧野さん「道路交通法第39条では、正式には『緊急自動車』と定義されており、『消防用自動車、救急用自動車その他の政令で定める自動車で、当該緊急用務のため、政令で定めるところにより、運転中のもの』を指します。人命救助や災害・事故などの急務のために使用される車両であり、具体的には、パトカー、消防車、救急車、自衛隊車、血液・臓器運搬車などが緊急自動車にあたります」

Q.パトカーや救急車を後追いする行為に、法的問題はあるのでしょうか。

牧野さん「緊急自動車の走行を妨げる行為を一切せず、信号無視などの交通違反もしなければ、特に問題ないと思います。ただし、以下のようなケースは違法行為とみなされるので、注意が必要です」

【緊急自動車と並走し、特別な扱いを受けようとする】

緊急自動車に並走する自動車が緊急自動車と同じ扱いを受けることはできません。緊急自動車の後追いや並走すること自体がただちに法的問題となることはありませんが、緊急車両と一緒に赤信号をそのまま通過したり、他の車に道を譲ってもらったりすることは、道交法違反に該当します。救急車に身内や友人が乗車し、それを追っているような場合も同様です。

なお、緊急自動車は赤信号で交差点に進入することはできますが、同法39条2項ただし書きで「他の通行に注意して徐行しなければならない」とされているので、もし事故が起きて、緊急自動車の運転に原因となる過失があった場合、緊急自動車の責任、つまり国や地方公共団体の損害賠償責任が認められます。緊急自動車でも、何をしても許されるわけではないということです。

【緊急自動車に道を譲らない】

緊急自動車が近づいてきた場合、車両には次の2つの義務が課されています。(1)交差点内で停止しないこと(2)道路の左側(一方通行では右側も可)で一時停止すること(道交法第40条第1項・第2項、第41条の2第1項・第2項)です。

緊急自動車を妨害した場合、違反点数1点・反則金6000円(反則金を支払えば刑罰は課されない、交通反則通告制度の対象となる違反)が課されます。反則金を支払わない場合、罰金5万円以下の刑事罰を受ける可能性があります。

【赤色灯をつけて緊急自動車のふりをする】

赤色回転灯を屋根につけて覆面パトカーを偽装し、サイレンを鳴らして走行する行為は各都道府県の規則で禁止されています。例えば、東京都道路交通規則では「緊急自動車の警光灯と紛らわしい灯火を点灯し、またはサイレン音もしくはこれと類似する音を発しないこと(第8条第13号)」とあります。罰則はないですが、一般車両に赤色灯を付けた場合、同規則違反となります。