再び世界に挑戦するシャープスマホ! 日本での復活とシャープブランドを武器にヨーロッパ進出する戦略と展開とは

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日本のスマートフォン市場での復活を果たしたシャープが、いよいよ世界市場での勝負に出てきた。海外、ヨーロッパ向けの新製品「AQUOS B10」「AQUOS C10」の2モデルを発表したのだ。

シャープのスマートフォンは、国内では人気も市場シェアも確立しているが、これまで海外では台湾などアジアのごく一部でしか販売されていなかった。

しかし台湾の鴻海に買収されたことで、ブランド力アップ戦略により日本市場で復活し、グローバルメーカーとして本格的な海外進出を開始している。

新製品のB10とC10の大きな特徴は以下の通り。
AQUOS B10
ディスプレイサイズ:5.7インチ、
CPU:MT6750T
アウトカメラ:1300万画素+800万画素

AQUOS C10
ディスプレイサイズ:5インチ
CPU:クアルコムSnapdragon 630
アウトカメラ:1200万画素+800万画素

このディスプレイとCPUの組み合わせは日本モデルにはなく、B10とC10は海外向けのオリジナル製品となる。


ヨーロッパ向けのシャープのスマホ、B10とC10


これまでシャープの海外進出では、2014年に3辺がベゼルレスの「AQUOS Crystal」をアメリカ向けに販売したことがある。
ソフトバンク傘下のアメリカのキャリアSprintと共同で端末を仕入れることでコストを下げる目的もあった。シャープとしては同社の誇るディスプレイ技術を武器に、アメリカで販売数を拡大する見込みだった。

しかし当時は、シャープのブランド名でのスマートフォンの認知はされず、ベゼルレスデザインも奇抜というイメージで受け入れられなかった。
その後、販売戦略を変えてアメリカのプリペイド市場向けに投入さたが価格の高さが災いして売れ行きは思わしくなかった。

アメリカ市場でのシャープのスマホの進出が失敗に終わった理由は、
・キャリア頼みの販売
・ユーザー不在の機能
・ブランド力の欠如
この3つが原因だと言える。


アメリカでは結果を出せなかったAQUOS Crystal


その後、2016年にシャープ本体は台湾の鴻海(ホンハイ)に買収される。
しかしここからシャープのスマホ事業は急展開を迎える。

当時の鴻海は、傘下にスマートフォン事業を持っており、iPhoneの製造も請け負うほどの技術力を有していた。しかし自社ブランドでのスマホの販売は、ブランド力もなく細々とした事業であった。

そこにシャープのブランドが手に入った。
鴻海は自社が開発したスマホを「シャープ」ブランドとして海外市場向けに投入できるようになったのだ。
特に鴻海の地元でもある台湾は、日本ブランドも強い。
このことからもシャープブランドのスマホが真っ先に投入された。

現在シャープはスマートフォンメーカーとして海外では全く認知されていない。
しかし「テレビ」のシャープブランドは海外ではまだまだ強い。
その証拠に調査会社が行う世界のブランドランキング100位以内にもTVメーカーとしてシャープの名前は必ず入っているほどだ。

つまり海外ではきれいな液晶のTVや日本製というイメージから、今でも「シャープ」のブランドは根強い人気を維持しているのだ。


鴻海に買収されてから、海外向け独自スマホを増やしていった



海外での販路を持つ鴻海が、そのシャープのブランドを使ってスマートフォンを展開すれば、海外市場でも十分にリーチできる可能性がある。
以前のアメリカ進出では、キャリアに販売を依存したことで、市場での価格競争に対応できずに失敗した。
しかし今回のヨーロッパ進出では、シャープが自ら価格設定を行うSIMフリーモデルとして販売される点が大きな違いであり、成功の可能性を秘めている点でもある。

C10は、
日本でもおなじみの丸いカメラがディスプレイ上部に埋め込まれた独自のノッチデザイン
価格も400ユーロ

B10は
スペックをやや抑え
300ユーロで販売される。
スペックを考えると十分に戦闘力のある価格設定だ。

またBとCという2つのモデルを出したことから、今後はさらに低価格な「A10」や、高性能な「D10」、あるいはほかのアルファベットを使った上位モデルが登場する可能性もありそうだ。

ローエンドモデルでは、
200ユーロを切る低価格でA10が出てくればプリペイドユーザーなどにも受け入れられる。

またハイエンドモデルでは、
Snapdragon 845を搭載モデルが600ユーロくらいで出てくれば十分に競争力があるだろう。

シャープならではの美しいディスプレイをうまくアピールしつつ、下位モデルから上位モデルまで競争力のある製品がそろえば、海外ユーザーの目を惹きつけられるだろう。


現在のヨーロッパ各国には、低価格スマホを出すメーカーがある。
フランスベースのアルカテルやウィコウ(Wiko)は各国で300〜100ドル台のスマホを多数販売している。

海外進出を目指すシャープの目下のライバルは、この2社にもなる。
TVメーカーとしてのシャープブランド力をうまく使えば格安スマホの販売合戦の中から頭一つ分抜け出すことも可能だ。

日本ブランドのスマートフォンとして、ぜひともシャープにはヨーロッパで成功してほしいものだ。


山根康宏