今年の7月は東京で観測史上初めて最高気温が40度を超えるなど、日本列島が猛烈な酷暑に見舞われました。夏は20世紀より間違いなく暑くなっており、エアコンは命を守る必需品となっています。今回の無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』では著者で科学者のくられさんが、実はハイテクなエアコンのメカニズムと冷房効率が上がるちょっとした工夫について解説しています。

室外機の冷却と省エネのコツ

ちょうど室外機を冷やすとエアコンが効く…みたいな話が話題になっていますが、室外機ってなんじゃろ? とエアコンって部屋の中にあるやつじゃろ、室外機は熱風を捨ててるだけじゃん…と思っている人も多いかと思います。以前、たぶん去年あたりにも同じような話をしていたと思いますが、エアコンの本体は実は室外機であり、室内にあるのはぶっちゃけ送風機レベルのものでしかありません。

エアコンはコンプレッサーを使って熱交換というものを行って、エアコンのガス(冷媒)を用いて室外機と屋内で熱を大移動しているびっくりするほどハイテクな装置です。

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その昔、エアコンが生まれたばかりのころはこの冷媒にアンモニアガスなどを使っていたのですが、当然腐食性が高く、しょっちゅうラインが腐っては溶けて漏れてアンモニアくさいガスが充満して壊れるといったものだったそうです。

時は流れ、オゾン層の破壊の原因となるフロンの登場により冷媒効率は劇的に向上。ただ先述のように、オゾン層に大ダメージを与えるというとんでもな害があり、その結果、代替フロンというものが生み出され今日使われています。

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ただこの代替フロン、だいたいエアコン1台あたりに1kgくらい使われているのですが、このガスが漏れ出ると恐ろしい温暖化ガスであることはあまり知られておらず、CO2を1とすると、数千から1万数千倍という恐るべき猛烈な温暖化ガスであるので、無許可で大気開放することは法律で禁じられています。

ゆえにエアコンは有資格者が工事をする…ということにはなってるのですが、法的にダメだからといって、取り締まりが困難なので、わりかし適当にされているところはあります(日本のごみ処理関連法はツメが甘いのが特徴)。一応「みだりにフロン類を放出すると、50万円以下の罰金又は1年以下の懲役に処せられます」となっています。

もしエアコンにけりをいれて冷媒が噴射した場合、なかなかの環境破壊指数です。エアコン1台から漏れ出るガスだけでCO2数トン相当ということです。なかなかの罪深さなので、絶対に素人工事を止め、安いだけの怪しい業者を使わないようにしましょう。

さて、室外機を冷やせば効率が良いというのはもはや自明の理で、とはいえ電化製品に水なんかかけてもいいの? と思う人もいると思いますが、さにあらず。もとより雨水などの雨ざらしになることを前提とした構造なので横から大量に水をぶちこむなどをしないかぎり壊れることはありません。

写真のツイートだとバケツに入れた水が毛細管現象でタオルを通って冷やしていますし、またエアコン室外機の日差しよけなども効果的です。

ただ排気と吸気口を塞がないようにすることがなにより大事です。また水まきの際に、室外機のまわりの地面も湿らせておけば、エアコンの効率を遙かに上げることができますし、節電効果も高く、資料によっては2割くらい電気代が節約できるという話もあります(当然置き場所や環境によって変わるので一律ではありませんが)。

まだまだ猛暑というか、灼熱、酷熱の日々が続きますが、みなさまどうかご安全に!

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