バブル世代で浪費グセが直らない夫は、どうすべきか?(写真:Fine Graphics / PIXTA)

今回のおカネの相談のテーマはズバリ、夫の浪費です。一家5人で相談者である妻の実家に同居をしていて家賃や公共料金は一切かからないはずなのに、貯蓄が一向にできていない状態。それどころか家計は毎月赤字で口座はつねにマイナスだというのです。

「3人の子どものうち2人は成人しましたが、3番目は大学2年生です。学費の支払い期日までにおカネを作るため、毎月の生活を赤字覚悟で学費優先に流用せざるを得ない状況です。まさに自転車操業状態。それでも追いつかない分は、貯蓄を取り崩して補填しています。マイナス家計の原因は夫の浪費なのはわかっているのですが、なんとかなりませんか?」こんな深刻なご相談がありました。

「バブル世代の浪費家」で財布を握る夫をどうすべきか?

相談者は大森宏美さん(53歳・パート・仮名)。夫は同い年で普通の会社員。いわゆるバブル世代のご夫婦です。夫の現在の手取り年収は約580万円、宏美さんのパートの手取り年収は約129万円(夫の扶養内)です。本来ならば、家賃がいらない分、貯蓄ができる「余裕のある家計」のはずです。


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しかし、現在の貯蓄額は宏美さんが独身時代に貯めてきたという300万円のみ。毎月の生活費の赤字補てんと残り2年間の学費で、底をついてしまう日もそう遠くはなさそうです。今の条件で夫が働けるのはあと7年間です。家計の立て直しを早急に、真剣に考えなければなりません。

浪費の原因は、夫の無計画なクレジット払いとギャンブル(パチンコと競馬)です。夫はクレジットカードを持っていて、本人の生命保険料と携帯電話代の支払いのほか、出張費用や通勤費、飲食代や衣服費でも使用しているそうです。出張費や通勤定期代は現金支給なのですが、こちらはすぐに使い込んでしまうため、必要な時にカードで支払うことになってしまいます。宏美さんは、毎月、手渡しをしているお小遣い5万円のほか、恐らく20万円程度は使っているのではないかと見ています。

さらに困ったことに、ご主人の給料が振り込まれるメイン口座のキャッシュカードは本人が持っていて、お給料日に生活費を引き出せないというのです。苦肉の策として、宏美さんは、インターネットバンキングでおカネをご自分の口座に移し替えて管理しているそうです。これで毎月の最低限の現金はなんとか確保できるのですが、結局多額のカード支払いで毎月赤字が続いています。

はっきり申し上げて、ご主人の金銭感覚は大問題です。バブル世代は消費に躊躇がない人が多いのですが、それにしてもひどすぎます。支出の中でも大きな割合を占める居住費が長年かかっていないことで、すっかり安心してしまい、真剣におカネに向き合おうとしなかったのかもしれません。しっかり者の宏美さんに甘え切り、自分勝手に浪費を続けてきたように思えます。もう少し、早い段階で、話し合いができればよかったですが残念です。

一方、宏美さんは、パート収入で家計を助けながらよく頑張ってきたと思います。家計を顧みない夫に対して、さぞかし腹立たしかったでしょうし、幻滅もしたでしょう。でももう我慢する必要はありません。今後、夫の改心と協力が得られない場合は、「三行半(みくだりはん)」を突きつけても良いのではないでしょうか! しかし、まあ、最終通告をする前に、今一度、家計を立て直す努力をしてみましょう。

クレジットカードとキャッシュカードを取り上げる

まず、宏美さんがすべきは、夫からクレジットカードとキャッシュカードを取り上げることです。いきなり取り上げるのではなく、現実的な数字を提示して説得しましょう。

今のままの生活を続けていくとどうなるか、数字で「見える化」しましょう。これは、いつもの「人生設計の基本公式」で知ることができます。「人生設計の基本公式」とは、ひとことで言えば老後(通常65歳)に「現役時代の何割の生活水準で暮らすか」(通常は7割)を決め、それまでに「手取り年収の何割を貯めるべきか」(=必要貯蓄率)を計算するものです。詳しくは、過去の記事「あなたは65歳までにいくら貯めればいいのか」をご覧ください。誰でも簡単に計算することができますので、ぜひ、ご自身の「必要貯蓄率」を求めて見てください。

今回は、この公式を応用編として使ってみましょう。まずは、大森家の「必要貯蓄率」を求めてみます。

大森宏美さん(53歳・パート)、夫(53歳・会社員)の家計
家計の今後の平均手取り年収(Y)
600万円
(現在の手取り年収ではなく、残りの現役時代の年数も考え、これからもらえそうな手取り年収の合算額を考えて記入します)
老後生活比率(x)0.7倍(老後、現役時代の何割程度の生活水準で暮らしたいかを設定します)
年金額(P)253万円(ねんきん定期便より。今の条件で60歳まで働き続けた場合)
現在資産額(A)120万円(現在の貯金額は300万円ですが、教育費が2年間で180万円かかるため、差し引いて120万円として計算)
老後年数(b)35年(60歳から95歳まで生きると想定した年数)
現役年数(a)7年(60歳まで働くことを予定しているので7年)

これを人生設計の基本公式にあてはめて計算すると、以下のようになります。


必要貯蓄率30%!厳しい現実が浮き彫りに

必要貯蓄率は30.29%になりました。今後、この必要貯蓄率を守れれば、老後の生活費は約24万4000円を確保できます。年金受給額は夫婦で253万円と想定していますので、月額は約21万円です。不足分の3万4000円を貯蓄から取り崩すことになります。

ひとことで言い換えれば、「今後は毎月お給料の3割を貯蓄して行き、定年までの7年間で約1270万円を貯めて行きましょう」という計画です。不可能ならば、老後生活費は年金のみということになります。ここから健康保険料や介護保険料、税金などを支払わなければなりません(公的年金から天引きされる)。これが、現在の大森家の現実です。

やはり、これからは宏美さんが家計の主導権を握り、家計の立て直しをして行くべきでしょう。ちょうどボーナス時期ですので、まずはボーナスをクレジットカードでの引き落とし分に当てて、口座のマイナスを解消してください。

ご主人のお小遣いは減らすべきでしょうか? 現状の5万円は維持します。しかし浪費癖は難病です。ご主人が消費者金融などで借り入れをしないように、「現実」をよく理解してもらう必要があります。

きついことですが、「今後の家計の立て直しに協力できないなら、離婚も致し方ない」とはっきり伝えるのが良いでしょう。一番下の子どもさんも後2年で社会人ですし、離婚をして本当に困るのはご主人のほうです。今の住まいであるご実家は、宏美さんがいずれは相続する財産ですので、ご主人は住まいをなくします。また、宏美さんは、第3号被保険者であるため、婚姻期間中のご主人の老齢厚生年金の2分の1を受け取ることができます。ご主人は、自分の老齢基礎年金と老齢厚生年金の半分の約10万6000円で生活していかなければならなくなります。ご主人としても避けたい現実のはずです。

妻も収入増を目指し、必要貯蓄率に近づける

ともかく、できるだけ貯蓄を増やすことが重要です。夫の給料の管理の次は、宏美さんが収入を増やすことを考えましょう。現在、夫の被扶養者となっていますが、週30時間以上(従業員501人以上の企業は週20時間以上)、収入160万円を目指して働きましょう。年130万円を超えると社会保険料を自分で支払う事になりますので手取りが減ります。その手取りの回復は153万円です。160万円稼げば、現在より年間4万5000円ほど増えます。たった4万5000円かとお思いでしょうが、10年間働くことにより、厚生年金は年間で8万8000円増えるのです。

これらを「人生設計の基本公式」に入れて、再度「必要貯蓄率」を計算してみましょう。パートの手取り収入は、10年間で約1200万円として「現在資産額」に加算します(Aは1300万円になる)。「年金額」は、宏美さんの老齢厚生年金8万8000円を加算します(Pは262万円になる)。

すると、「必要貯蓄率」は、22.38%となり、老後の生活費は27万2000円になります。持ち家ですし、子どもたちも成人していますので、老後の生活費率を現在の6割に下げた場合は、「必要貯蓄率」は12.68%になります。今後、宏美さんのパート収入全額と、夫の給料の12.7%を貯蓄して行けば、老後は26万2000円で生活することが可能です。

いかがでしょうか。今後7年間が勝負です。ぜひ、しっかり話し合いをして、この貯蓄率を守ってください。難しい金額ではないはずですが、これを守れるか守れないかは、ご主人の改心と自覚なしには成立しません。老後の安心のために、現実を受け入れていただければと願っています。