ひとつの編成に1000人以上の座席が設置されていることもある新幹線の列車。座席の構造はどれもほぼ同じですが、その場所と使い方によってメリットとデメリットの両方があります。どこに座れるのが便利で快適なのでしょうか。

席によってメリットとデメリットの両方ある

 新幹線は長い距離を移動するときに使うことが多い乗りもので、乗車時間も長くなりがち。それだけに、移動中の車内では快適に過ごしたいところです。


東海道新幹線を走るN700A「のぞみ」は1編成で1323席ある(2014年7月、草町義和)。

 新幹線の普通車は、1両の座席数が最大で100席程度。東海道新幹線を走る16両編成の列車なら、全体で1323席もあります。普通車の場合、中央から少し偏って通路があり、その両側に2人掛けと3人掛けのリクライニングシートが横に並ぶ構造。ひとつひとつの座席の構造は大きくは変わりませんが、場所によって快適さや便利さが若干変わってきます。どの席に座るのが快適で便利なのでしょうか。

 まず考えたいのは、通路側と窓側のどちらに座るか。流れる車窓をじっくり見たいなら窓側席が一番ですが、それ以外にも選択のポイントがあります。

 窓側席は、目の前を人が出入りすることはありません。通路側に比べれば人の足音はうるさくありませんし、食事しているときや眠りについているとき、ほかの誰かに遮られることがないというメリットがあります。ただ、通路に出る場合は通路側の席に座っている人にお願いし、よけてもらう必要があります。混雑している場合、車内販売やトイレを頻繁に利用するには不向きな席といえます。

 通路側の席は、メリットとデメリットが逆になります。すぐに通路へ出られますから、車内販売やトイレを利用しやすくなります。ただし、窓側席の人が通路に出るときはいったん席を立ってよけなければなりません。通路を通る人の足音もあり、ゆっくり休むことができないかもしれません。

車両の前後中央でも変わる

 なお、3人掛けは窓側席と通路側席に挟まれた中央席もあります。通路側席と同様、窓側席の人が動くときはよけなければなりませんし、自分が通路に出る場合も通路側席の人によけてもらわなければなりません。ただし、中央席はほかの座席より幅が広く、横に少し余裕があるというメリットがあります。N700Aの場合、中央席の幅はほかの席より3cm広い46cmです。


2人掛けと3人掛けの座席が並ぶ新幹線の普通車(2014年7月、草町義和撮影)。

 このほか、車両の前方、中央、後方も座席選択のポイントになります。

 最前列の座席は目の前に客室とデッキを仕切る壁があり、人によっては圧迫感を覚えるかも。デッキのすぐそばですから人通りが多く、騒がしくなりやすいという難点もあります。とくに駅の停車時には大勢の人が通りますから、ゆっくり休みたい人には不向きかもしれません。ただ、壁には大きなテーブルが設置されていますから、使い方によっては便利な席になります。

 最後列の席はどうでしょうか。人通りが多いのは最前列と同じですが、壁が座席の後ろになるため圧迫感はありません。また、座席と壁の間のスペースは荷物を置くスペースになりますから、大きな荷物を持っているときは便利です。後ろに人がいませんから、気兼ねなくリクライニングできるという利点もあります。ただし、壁に設置されている大型テーブルは使えません。

 それ以外の座席は、車両の中央に行けば行くほどデッキから離れて人通りが少なくなります。できるだけ静かに過ごしたいなら、中央に近い席を選ぶようにした方がいいでしょう。乗り心地も一般的には台車に近い車両の端の振動が大きくなり、中央は振動が比較的小さくなります。

赤ちゃん連れなら多目的室がある車両

 ただ、快適さや便利さを決めるのは座席の配置だけではありません。実際に新幹線をどのように使うかによっても、選択の基準は変わります。

 移動中の車内でノートパソコンを広げて仕事したり、スマートフォンやタブレットを使いたいときは、電源コンセントが欲しいところ。ただ、すべての座席にコンセントがあるのは、北陸新幹線を走る電車だけ。それ以外の新幹線は車両によってあったりなかったりで、ある場合も数が限られていたりします。

 東海道・山陽新幹線を走る車両の場合、おもに「のぞみ」で使われている16両編成のN700A(改造でN700A相当になった車両を含む)は、グリーン車の全席にコンセントを設置。普通車は各列窓側の壁の下にひとつ、客室とデッキを仕切る壁にも1席につきひとつ設置されています。最前列の席なら窓側や通路側にかかわらずコンセントを使うことができますし、先に述べたように大型のテーブルが設置されていますから、ノートパソコンを使って仕事したい人に向いている席といえます。

 赤ちゃんを連れて旅行するなら、多目的室が設置されている車両を使うのがいいでしょう。これは体の不自由な人向けに用意された個室ですが、空いている場合は授乳や着替えに使うことができます。16両編成のN700Aは11号車に多目的室があり、その隣にはおむつ交換台の付いたトイレもあります。

 このように、新幹線の座席は「場所」だけでなく「使い方」によっても快適さや便利さが変わってきます。予約の際は、車内でどのように過ごすかを考えた上で座席を選んだ方がいいかもしれません。

コンセントがある新幹線の車両

●東海道・山陽新幹線
・500系 なし
・700系 一部編成にあり(車両両端)
・N700A あり(グリーン車:全席、普通車:窓側と車両両端)

●山陽・九州新幹線
・800系 あり(車両両端)
・N700系 あり(グリーン車:全席、普通車:窓側と車両両端)

●東北・北海道・秋田・山形・上越新幹線
・E2系 一部編成にあり(グリーン車:2席共用、普通車:窓側と車両両端)
・E3系 一部編成にあり(グリーン車:全席、普通車:窓側と車両両端)
・E4系 なし
・E5系 あり(グランクラス・グリーン車:全席、普通車:窓側と車両両端)
 ※一部のE5系編成は全席設置
・E6系 あり(グリーン車:全席、普通車:窓側と車両両端)
・H5系 あり(全席)

●北陸新幹線
・E7系 あり(全席)
・W7系 あり(全席)

【写真】将来は東海道も「全席コンセント」に


現在開発が進む東海道新幹線の新型車両「N700S」の普通車。すべての席の肘掛けにコンセントが設置される(2018年3月、恵 知仁撮影)。