世界最大級の旅行口コミサイトであるトリップアドバイザーには世界中のホテルやレストランの情報が掲載されており、会員によるレビューや写真の投稿が行われています。このトリップアドバイザーで高評価を集めて「グルメ・セレブ・ブロガーが最も行きたいと思うロンドンのレストラン」の第1位に輝いたレストランが「The Shed at Dulwhich(ダリッジの物置小屋)」です。しかし、「The Shed at Dulwhich」がレストランではなく、本当にただの物置小屋だったと判明して、イギリスで大問題となりました。ただの物置小屋を一流レストランに仕立て上げるまでの経緯が、vice.comのアップロードした以下のムービーで解説されています。

How to Become TripAdvisor’s #1 Fake Restaurant - YouTube

フリーライダーのウーバー・バトラーさんが初めて請け負ったライターの仕事が、行ってもいないレストランの偽レビューを書くことでした。そこでトリップアドバイザーにある一部のレビューが虚構だと気付いたバトラーさんは、自分も偽レストランを作ってみようと考えます。



レストランに仕立て上げるのは、あまり手入れのされていない裏庭の片隅に立っている、1軒の物置小屋です。バトラーさんはここで1年半ほど生活しているとのこと。



「ほらこれがベッドルームで……」



「ここが仕事するスペースさ」



「キッチンには二口コンロとオーブンもあるよ」



「ここを架空の菜食レストランにしようと思う。きっとトリップアドバイザーで一番のレストランにしてみせるよ」



バトラーさんはレストランのコンセプトを4点に絞って定めました。まずは料理を外で食べるようにするということ。



2点目は、とにかく変わった店を気取るということ。



3点目は規模を小さくして、家庭的な雰囲気を演出するということ。



そして4点目は予約のみのレストランにするということ。



そのためバトラーさんは、トリップアドバイザーに登録する連絡用の電話番号を用意するために、携帯電話を新しく契約します。



さらに「The Shed at Dulwhich」の公式サイトを用意し、そこに掲載する料理の写真を準備します。これは「揚げニンジンのパンケーキ ~海の香りとパセリをそえて~」という料理ですが……



揚げたニンジンに見せているのはトイレ用の洗剤ブロック。他にもシェービングクリームなど到底食材には見えないものも映っています。「このままだとちょっとすっぱいからはちみつをかけてみたんだ」といいますが、もはや味の問題ではないことは明らかです。



こちらの料理はハムエッグならぬハムホック。ホックは英語で膝を意味しますが……



なんと卵がかかったベーコンに見えたものはバトラーさんの足でした。これらの写真に「沈思~脱構築したアバディーン牛のビーフシチュー」「渇望~ウサギの腎臓のトーストのせ」など、雰囲気だけでそれらしい料理名やメッセージを添えて公式サイトに掲載します。



さらに友人たちに、トリップアドバイザーへ自分のレストランを称賛するようなウソのレビューをつけてもらうように依頼します。



そして18190店あるロンドンのレストランのうち最下位からスタートします。



およそ1カ月後、寝ていたバトラーさんの枕元にある電話が鳴ります。取ってみるとなんと予約の申し込みでした。レビューがたくさんつくことで、トリップアドバイザーの口コミランキングはどんどん上がっていき、電話がひっきりなしにかかってくる度に「もう予約いっぱいで埋まっちゃってるんです」と断りの応対をします。



そして「The Shed at Dulwhich」はとうとう口コミランキングの1位に輝いてしまいました。



電話やメールに予約の問い合わせがあまりにも殺到してグロッキーになってしまったバトラーさんは「一度本当に開店してみよう」と決意します。



バトラーさんは、本当にレストランを営業するため、プロの料理人を1日だけ雇います。



ただしレストランで出すのは高級な食材を使った本格的なものではなく、スーパーの総菜やレトルトです。



店員役の人も調達。



またレストランのBGMを流すDJも呼びます。



さらに予約でいっぱいだったというウソを本当にするために、他の一般客を装うサクラを友人に依頼します。



屋根の上の特等席で食事をする客もサクラです。



時間になって、本物の客が到着。正確な場所を知られないように目隠しをしてレストランに案内します。



何も知らない客は、少し風変わりなレストランだと勘違いして普通に着席します。



一方その頃、物置小屋の中にあるキッチンではおいしそうなミネストローネが完成しましたが……



「沸かしたお湯とカップスープで作れちゃったよ」とシェフもご満悦です。



スーパーで売っているレトルトのグラタンをオーブンで焼いたら……



皿に盛り付けて、エディブルフラワーも添えて見栄えをよくします。



何も知らない女性客は「3カ月も待ったかいがあったわ」と語ります。



「トリップアドバイザーにあがってた、この店で食事するカップルの写真を見て来たの」という女性客もいますが……



「あの人たちは昨晩はパリにいたんだけど、今晩はこの物置小屋にいるんだ」といってバトラーさんは笑いをこらえます。



「今この庭がまるでロンドンで一番人気のレストランみたいになっているけど、これはまるっきりドッキリさ。みんなはネットで見たものだけを信じて、自分の感性を信じていないんだ」というバトラーさんの言葉でムービーは終わります。なおトリップアドバイザーはこの件を受けて「偽のレストランを作って人をだましても何の得もなく、今回の例は非常に特殊であり、『The Shed at Dulwhich』以外のレストランは何の問題もありません」という声明を発表しています。