新宿駅で最も混雑が激しい山手線ホーム。内回り・外回りとも対面は中央総武緩行線で日中は比較的空いているものの様子は一瞬で変化する(撮影:久保田 敦)

鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2018年3月号『JR新宿駅の現在』を再構成した記事を掲載します。

JR新宿駅は、国鉄時代最後の時期、1980年代後半まで山手線と中央緩行線のペアで2面、それに中央線快速と列車ホームで3面、都合5面10線というホーム構成であった。房総方面の急行が存在していたものの、「国電」以外は中央本線の長距離・優等列車ホームが1面あったのみで、東京駅や上野駅に比べるとかなりシンプルだった。

ところがその後、JRになってからの変貌、発展が目覚ましい。国鉄時代最後の時期に埼京線が入り、次いで「成田エクスプレス」の都心ターミナルの一つとなり、東北・高崎線方面の中距離電車の乗り入れが湘南新宿ラインとして本格化し、埼京線は南に延びてりんかい線との直通も開始した。この発展を追ってホームも増設され、結果、現在では8面16線に拡大している。

これらの増設スペースは、国鉄の消長とともに姿を消した車扱輸送時代の貨物扱い、荷物輸送用のスペースが充てられたのだが、それらは新宿駅の南東側に隣の代々木駅にかけて広がっていた。その跡地を活用して新ホームを展開していった関係で、既存のホームと位置がそろわず、構内全体は極端に言えば平行四辺形に変形している。結果、既存の改札口と直接的に結ばれないホームが出現するなど、動線が複雑を通り越して難解な部分も生じている。

「バスタ新宿」がシンボルとなった新南口の整備のおかげで、ある程度往来しやすくなったが、巨大駅の宿命は変わるものではない。平日2350本、土休日2034本の列車が発着する、そのような各ホームの様子を紹介したい。

1〜4番線

埼京線と湘南新宿ラインのホーム。山手貨物線上にあたるため、現在もわずかに貨物列車の通過がある。埼京線だけが乗り入れた当初は1面2線だったが、N'EX(「成田エクスプレス」)の誕生に伴い2面4線化され、そこに湘南新宿ラインが加わった後、構内の大規模改良を機にN'EXは別ホームに移された。

基本的に1・2番線は南行、すなわち埼京線大崎、りんかい線直通新木場方面と湘南新宿ライン逗子・小田原方面、3・4番線は北行、すなわち埼京線大宮、川越線直通川越方面と湘南新宿ライン高崎・宇都宮方面だが、新宿を跨いで運転される列車は主に1・4番線を使う。2・3番線は新宿以北の埼京線折り返し列車が多い。

新宿に集まる各線の平日朝ラッシュ1時間あたりの本数は、ほぼ全線とも8時台が最多となる。1〜4番線について見れば南行が埼京線12本、湘南新宿ライン8本で計20本、北行が埼京線15本、湘南新宿ライン6本で計21本。山手貨物線ルートの列車としては、ほかに5番線から成田空港行きのN'EX 1本が加わる。


人工地盤に延びる埼京線と湘南新宿ライン南行の1・2番線。ただし2番線は埼京線の折り返し列車が多く発着(撮影:久保田 敦)

さて、新宿駅の改札内通路は、基本的に地下の北通路、中央通路と、橋上の南口コンコース、オーバークロスする国道20号(甲州街道)を挟んで新設の新南口コンコースと、計4本で構成される。これらの位置関係は“平行四辺形”を如実に反映し、1〜4番線は北通路に到達しておらず、中央通路への階段が北端(北通路と中央通路は地下通路でつながる)になる。南口、甲州街道、さらに上部をバスタ新宿とする新南口と続く人工地盤は広大で、12両が収まってしまう。そのため、ホームはさながら地下駅のようだ。逆に南端は新南口のテラス下から代々木方に突き出しており、歩を進めると、昼間はあらためてまぶしさを感じるほど。
 
また、立地の宿命でホーム北端がややすぼまっており、小田急や京王線との乗り換えも至便な中央通路との往来で混雑が激しい。そこで、15両編成がホームいっぱいに停車する湘南新宿ラインに対して、10両編成の埼京線は2両ほどセットバックした位置を停車位置とし、多少なりとも混雑を回避している。

埼京線電車は緑の帯を巻くE233系7000代と、りんかい線(東京臨海高速鉄道)保有車両は青帯の70-000系。湘南新宿ラインはグリーン車を含む中距離仕様のE231系1000代とE233系3000代。このグリーン車があるため、両ホームにはSuicaグリーン券売機が設置され、今はパスケースからカードを取り出さずに済む、置けば読み取りと書き込みが可能な最新型の装置となっている。

5・6番線

主にN'EXと、東武線直通特急用のホーム。N'EXは一部のみ1時間おきのほかは基本30分間隔で、成田空港行きは早朝から19時台まで、成田空港発の到着は朝9時台から深夜23時台まで。ただし、さすがに朝のピーク時間帯は通勤最優先となり、8時02分発の後、9時39分発までは、間に列車を挟んでいない。30分間隔の時間帯は、池袋発着と新宿発着の列車が交互であり、朝晩の一部は大宮と高尾発着となる。さらに土休日は富士山観光の利便を図った富士急行線直通列車1往復もある。

東武線直通特急は定期4往復で、行楽列車らしく土休日とシーズン用に3往復の臨時ダイヤも確保されている。JRの253系と東武100系スペーシアが相互乗り入れの形で姿を現し、スペーシアの乗り入れ開始時は大いなる話題をまいた。現在でも異彩を放つ。

さて、このホームは、老朽化した国道20号新宿跨線橋架け替え工事とあわせて行われた新宿駅改修工事により実施された中央線ホームの配置入れ替えに際し、一部ホームを使用停止とする期間中の代替ホームとして設置された。当初の目的を果たした後は、臨時ホームとして予備的に使用する予定だった。ところが結果的には、列車本数の増加から特急ホームとして定期列車が使用することになる。しかし、事の経緯からいささか無理を強いて設置したため、位置は1〜4番線以上に南に大きくずれ、既存の中央線や山手線ホームとはオーバーラップもしていない。新宿〜代々木間の駅間距離は0.7kmと短いため、大げさに言えば、その中間部に位置するとさえ表現できる。

線路配置(分岐器の設置位置)と駅を覆う人工地盤の位置関係から、南口コンコースには直接的に5・6番線に至る階段、エレベータ等がない。いったん7・8番線に下りたうえで、専用の地下通路(中央通路ともつながる)をたどる。かつては一部ホームとの行き来が不完全だった現新南口が全ホームと結ばれたことで、動線は改善されたが、それでも既設ホームから遠いことに変わりなく、乗り換えは当人だけでなく案内をする駅員にとっても要注意のようである。


5・6番線が新設の特急ホーム。明るい幕屋根の中で「成田エクスプレス」が折り返し整備を行う(撮影:久保田 敦)

だが、喧騒に包まれるほかのホームと違って、ゆったりした時間が流れている。大きなスーツケースを携えた外国人は、たいていこのホームに関係するので、国際色の密度が濃い。集まってくる人々の荷物が小さいと思うと、東武線直通特急の入線が近い――といった様子である。新南口(バスタ新宿)の人工地盤に掛かる部分は少ないため、幕屋根と相まって明るく、1〜4番線とは対照的。優等列車用ホームとして、ガラス張りの待合室や喫煙室まで設置されている。夕闇が迫った頃からはバスタのクリスマスイルミネーションも見える。ただし、売店はない。

一方、運転面においては、ホームの前後が部分的にだが単線に絞られるため、山手貨物線(埼京線)との合流箇所で交差支障が生じることと合わせて、ダイヤの維持に対してとくに意を払わなければならない面もあるという。

とはいえN'EX、東武線直通特急のほか、臨時を含めて伊豆方面の「スーパービュー踊り子」、高崎線系統の「スワローあかぎ」等、また、東海道線系統の通勤ライナーの発着もあり、本数はわずかずつだが多彩な優等車両が出入りするホームでもある。

7・8番線、11・12番線

中央快速線上にあるホームは、数字が若い方から上り東京方面行き、優等列車用、下り立川・高尾方面行きの3面が並ぶ。以前は優等列車用、上り快速、下り快速の順で並んでいたが、当時の配置では優等列車の出入りの際に本線交差支障を生じていたため、駅改修工事を契機とする大改良で入れ替えられた。

中央線快速はオレンジの帯のE233系。朝は、国鉄時代から、首都圏のJR線でも最も列車密度が高いダイヤとして知られる。上下とも8時台は29本(下りはうち2本が特急)を数え、2分間隔である。30本とならないのは、ダイヤ上のクッションが必要なためで、1本に均すとたった4秒の予備タイムという計算になる。新宿では停車時間も必要なため、2分間隔の時間帯は上り快速の7・8番線、下り快速の11・12番線とも、ホーム左右両側に交互に列車を入れる両面発着を行う。一方、そうした必要が薄れる日中以後、および土休日の終日は、快速は8番線と12番線のみの使用となる。

7番線の番線表示は具体的な行先の案内も空白で、平日は夕方になってから、東京発のライナーへの送り込み回送特急車がしばらく時間調整で停車したり、総武線千葉行きのライナーが発車する程度に限られる。土休日はホームライナーもないが、代わって朝夕に房総方面の特急や、奥多摩方面のホリデー快速の発着がある。


中央線下り快速のホームの発着標には高尾までの停車駅を示す電光掲示も付加されている(撮影:久保田 敦)

一方、11番線には「中野・立川・高尾方面」の文字はあるが、それに留まらず、ホリデー快速の「ビューやまなし」「あきがわ・おくたま」、富士急行線直通の同「富士山」等の乗車位置案内札が頭上に掲げられ、土休日の華やぎをうかがわせる。いまや国際列車の態の「ホリデー快速富士山」は、稀少な国鉄型特急車189系で運転されており、鉄道ファンにとっても注目の列車。「ビューやまなし」の215系は、平日は東海道線ライナーが任務のダブルデッカー車で、土休日のアルバイト運用が定着している。

日中以降の快速は8番線と12番線発着で済むとは言え、のんびりした様子は微塵もない。1本の電車が出ると、その瞬間から次の電車を待つ整列乗車の列ができ始める。これら中央線ホームは、改良を経ているので上家の造作も新しいが、雑踏の中では目が向くこともなさそうだ。

その中にあって11・12番線にのみ見る装置として、LED式発車標の下に、電光式の停車駅表示器が付随していることに気づく。中央線快速には快速のほかに特別快速(中央特快・青梅特快)、通勤快速(下りのみ、上りは通勤特快)があり、行先も多様で、さらに土休日ダイヤでは快速も高円寺・阿佐ヶ谷・西荻窪を通過するなどと複雑なため、こうした一目瞭然の装置を導入しているのだ。対する7・8番線は基本的に東京行きオンリーで、どの快速も停車駅は同じなので、特段に必要はない。埼京線や湘南新宿ラインも種別や行先が多様だが、発車標以外の装置は見ない。

なお、つねに発着はひっきりなし、人波が途絶えることのない中央線快速のホームだが、すっかり人影が消える時間帯がある。平日の場合、下りは朝が6時台前半までと夜は0時台も中盤から、上りは5時台までと23時台終盤からとまさしく早朝・深夜で、その時間帯はすべて各駅停車となって快速線に列車が走らないためだ。土休日は6時台も快速がまばらで、夜の快速終了時間もやや早まる。利用機会もそうそう多くない時間帯だが、人一人立っていない様子を目にすると、新宿駅の中央線快速ホームにもそのような場面があることに、ある種の驚きを覚えてしまう。

9・10番線

上下の快速ホームに挟まれた「中央本線」の特急ホーム。E351系「スーパーあずさ」や、E257系「あずさ」「かいじ」が基本30分間隔で発着する。夕方以降の「中央ライナー」「青梅ライナー」も主にこのホームの発着だ。新宿駅構内には現在、E353系の登場を予告するPR放送が流れており、世代交代を予感させる。第一陣は12月23日のデビューだ。

平日のホームはビジネス客が多いが、通勤の雑踏とは異なる。そして土休日は観光客が目立つ。5・6番線同様にガラス張りの待合室と喫煙室があり、さらにキヨスクに加えて、その名も「駅弁屋」が営業している。駅弁のホーム店舗は、いまやそうそう見かけるものではなくなった。

番線表示サインの色は快速ホームのオレンジ色に対して青。これは、中央本線普通列車に使用されていた“スカ色”の115系から導かれたものと察せられる。中央本線普通列車が立川以西での運転となり、新宿に姿を現さなくなってから20年以上を経るが、今でも彷彿とさせてくれる。

特急は到着後、ホームで座席回転と清掃を行って折り返す列車が多く、「○○号、車内整備が終わりましたので、前へお進みください」「XXM、ドア開放」といった放送が流れる。これも、数分間隔で電車が入ってくるホームとは違った時間の流れや距離を感じさせてくれる。

13〜16番線

山手線と中央線の各駅停車が方向別のペアで配置され、13・14番線が総武線直通の錦糸町・千葉方面(早朝深夜は東京行き)と山手線内回り渋谷・品川方面、15・16番線は山手線外回り池袋・上野方面と中央線各駅停車中野方面である。早朝深夜を除いて中央緩行線は総武線直通で運転されているため、ラインカラーとしては黄色で表示されている。今や新宿駅では最も古さを感じさせるホームなので、積年の間に煤けている分、明るい黄緑や黄色が対照的に見える。


山手線の内回りと外回りが並ぶ(撮影:久保田 敦)

優等列車があるため十数両編成に対応する中央快速線のホームよりも実質的な有効長は短いので、新南口との接続のために長い通路を人工地盤の下に新設した。薄暗がりの中、加減速が高いために勢いを保った電車が両脇の柵越しに通過してゆく通路は迫力があり、これも現新宿駅の珍しいスポットに挙げられるのではないか。

朝8時台の山手線は外回り21本(7時台が最多の22本)、内回り22本で、中央線快速のように両面発着ができない中で最大限の本数とされている。それゆえ、都市路線として10両編成が一般的な中で全編成が11両編成である。

朝の最大の流れは中央線や私鉄各線から山手線に乗り換えるものだが、もちろん山手線から中央線や地下鉄へも相当の乗り換えがあるため、両ホームは新宿駅の中で最も混雑する。とりわけ外回りホームの混雑が筆頭となる。昨今ドアへの荷物挟まり、急病人の救護などで電車が遅れることは珍しくない。スムーズに流れていた電車の間隔がわずかに狂ったか…と感じた途端、今まで見通せていたホームに整列乗車の列が延び始め、2本目、3本目と積み残しの行列が残ってしまう。するとホームは一杯になり、その間を縫って歩くことも難しくなる。

山手線の運行をつかさどる指令員は、ある列車が新宿到着を前に30秒遅れたら頭の中で対処方に考えが巡り始め、1分にまで膨らんだら前を走る列車に30秒の発車待ちをかけるなど、アクションを起こす。さもないと運転間隔が広がってしまった分の乗客が遅れた列車に集中することになり、ますます遅れが拡大してしまうからだ。

そのような混雑に加えて、新宿駅の騒々しさと混沌ぶりに拍車をかけているのが、依然として続く工事である。バスタ新宿側の工事に続いて現在は、地下通路の工事が盛んに行われている。東西改札内の北通路を拡幅し、広い自由通路を設けて地下を刷新するものだ。このため山手・中央緩行線から特急ホームを含む中央快速線にかけて、ホーム上はゴムの養生シートが敷き詰められ、しかも広い面積にわたり継ぎ接ぎであり、線路はH鋼の仮桁で支えられ、電車はその上をけたたましい音を立てて行き来している。

山手線と中央線各駅停車の組み合わせ

一方、そうした混雑を見せる山手線をとりあえず無事に運転することができるのは、同じホーム対面に発着する中央線の各駅停車が、さほど混雑しないことに助けられている面がある。中央線の利用者は快速指向が非常に強いため各駅停車のピーク1時間、最混雑区間の混雑率は都心の路線で唯一100%を割る。そのため、山手線の乗客であふれるホームに、それほど大きな負担を加えない。


なお8時台の運転本数は中野方面行き24本、御茶ノ水方面行き22本であるが、この本数は直通路線の総武線内の輸送に対応するものだ。総武緩行線の両国付近は逆に、今でも首都圏ワーストとされる混雑率となっている。仮に、山手線ホームが中央線快速や埼京線とペアを組むような構成だったら、とても対応しきれない状態になるはずである。

山手線と中央総武緩行線では、今まさに電車にも変化が生じている。山手線にはこれまでのE231系500代に代わる新型のE235系が投入されている。一方、そのE231系500代は小改造や帯の張り替えを経て中央総武緩行線への投入が進められている。それによって捻出される中央総武緩行線のE231系が武蔵野線に転属し、武蔵野線の205系を淘汰する手順である。

方形の顔立ちが特徴的な新車、E235系も順調に増え、次第に接する機会が増えてきた。最後部の行先表示には高輝度LED表示装置により季節に応じたアニメーション画像を表示しており、黄色いイチョウが終わった後、年末の現在はピンクのシクラメンの絵を輝かせている。