居酒屋のメニューでもスーパーの総菜でも、刺身の「つま」に必ず添えられているものといえば「大根」の千切り。真っ白な大根は、主役を引き立てる“飾り”のような存在と思われがちですが、「つま」に大根が使われる理由とは何なのでしょうか。

 オトナンサー編集部では、8月16日に新刊「免疫栄養ケトン食で がんに勝つレシピ」(光文社)を出版した管理栄養士の麻生れいみさんに聞きました。

「毒にあたらない」から大根役者

 麻生さんによると、そもそも「つま」とは刺身に添える「からみ」「つま」「けん」という3つの「あしらい」の総称として使われる場合が多いそうです。「からみ」はワサビやショウガなどの香り物、「つま」は大葉やミョウガなどの野菜類やワカメなどの海藻類、「けん」は刺身の横に立たせる大根の千切りのこと。一般によく目にする、大根を下に敷き詰めたものは「敷きづま」といいます。

 この大根には、盛り付けを美しく見せるほか、刺身の水分を吸収する役割があります。「大根自体が水分を吸収するのに加え、千切りのすき間から水分が皿に流れることで、お刺身が水っぽい状態になるのを防ぎます。つまり、大根はお刺身の鮮度を保つために添えられていると言えるのです」(麻生さん)。

 しかし、大根以外の野菜でも千切りにすればよさそうなもの。たとえば、キュウリやニンジンならば彩りを加えることもできそうですが、なぜ大根なのでしょうか。

「キュウリやニンジンなどは、同じように千切りにしても大根ほど水を吸いません。また、大根の辛味成分であるイソチオシアネートが細菌の繁殖を抑えるため、生ものに添えることで殺菌や防腐作用が期待できるのです。大根を食べると、口の中の生臭さがなくなってさっぱりしますよね」

 イソチオシアネートは、切ったり、すりおろしたりすることで活性化する、大根の壊れた細胞が酸素に触れると生成される辛味成分。殺菌や抗菌効果が高く、牡蠣を大根おろしで洗って殺菌したり、のどの殺菌に使用したりと、古くから活用されてきました。売れない役者のことを指す「大根役者」は、大根を食べると「食中毒にならない=あたらない」ことから生まれたほどです。

消化を促進する「ジアスターゼ」

 それでは、大根に含まれるイソチオシアネート以外の成分や栄養素はどのようなものでしょうか。

「大根に含まれるジアスターゼという酵素には、消化を促進し、胃をスッキリさせる効果があります。また、大根を生で食べることにより、熱に弱いビタミンCなどの水溶性ビタミンを摂取することが可能です。なお、殺菌・抗菌作用のあるイソチオシアネートは生成後5分程度をピークに減少していくので、できるだけ早めに食べましょう」

 有効成分を豊富に含む大根の千切りは、とても理にかなった“名脇役”と言えそうです。

(オトナンサー編集部)