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●激痛が襲ってくるメカニズムを知る

尿路結石の経験者は皆、「のたうち回るほどの痛み」と口をそろえる。尿路結石を患った経験がない人でも、その痛みがつらいであろうことを想像するのは難くない。本稿はメンズヘルスクリニック東京で男性更年期外来・妊活外来を担当する辻村晃(つじむら・あきら)医師の解説をもとに尿路結石についてまとめた。

○尿路結石の原因

そもそも尿路結石とはどのような病気なのか、あらためて辻村医師にうかがった。

「尿路結石とはその名の通り、尿の通り道に結石が詰まった状態のこと。結石とは、体内の器官や管の中で作られる物質の凝固物のことを指します。尿の通り道(尿路)には腎杯(じんばい)、腎盂(じんう)、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道がありますが、腎盂でできた結石(腎結石)が尿管に下降して、尿管結石や膀胱結石になることが多いです」

強烈な痛みに襲われると言われる尿路結石だが、下腹部以外にも背中や腰、側腹部に激痛が走ったり、血尿が出たりすることもあるという。その痛みは「腎臓が内部から引き伸ばされるような痛み」と辻村医師は話す。

激痛とともに吐き気や嘔吐、発熱といった症状を呈することもある。結石が腎内にとどまっていれば、痛みを含めた症状はさほど強く出ない。腎盂から尿管に結石が下降すると激痛を伴うようになるが、人によってはあまり痛みを感じない人もいるとのこと。

「激痛の原因は、結石が腎臓内から尿管へ下降して、尿の流れを止めてしまうことにあります。結石が尿管にはまり込んでしまうと、尿が正常に流れなくなる状態になります。そして、尿が尿管の中に充満し、やがては腎盂まで膨らみます。これにより腎臓に圧力が加わって、激しい痛みが生じるという仕組みです」

●患者の3割は手術が必要になる!?

○尿路結石と胆石は別物

尿路結石は近年増加傾向にあり、日本人が生涯のうちに尿路結石になる確率は10%程度とされている。罹患する人は30〜60代の男性に多く、生涯のうちになる可能性は「男性が15%、女性が7%」とするデータや、「男性は女性の2.5倍かかりやすい」とするデータもある。

「上部尿路(腎杯・腎盂・尿管)にできるものと、下部尿路(膀胱・尿道)にできるものに分けられますが、ほとんどは上部尿路。約90%はカルシウムを含むカルシウム結石です」

代表的な結石はシュウ酸カルシウムで、リン酸カルシウム、またはその複合結石が大多数を占め、そのほかに尿酸結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石、シスチン結石などがある。症状がある場合の約70%は自然に排石し、30%は手術が必要になるとのこと。直径5mm以下は自然排石の可能性が高いとされている。

ちなみに同じ「石」でも、胆石は主に胆嚢(たんのう)にできるもので、尿路結石とはまったく別のもの。肝臓で作られた胆汁は胆嚢で濃縮されるが、このときに胆汁の成分のビリルビンやコレステロールが多いと結晶になって、やがて結石になるのだという。

●尿路結石を招く8つの原因

それでは、尿路結石を引き起こす原因にはどのようなものがあるのだろうか。辻村医師は次の8つを指摘する。

尿路の通過障害……先天的な尿路奇形や尿路の腫瘍、前立腺肥大症など尿路に何らかの通過障害があると尿路結石になる。そのほかにも腎盂と尿管の移行部が狭い人なども当てはまる。

尿路感染……尿素分解菌の感染による尿のアルカリ化が挙げられる。

飲水の減少……日常的に水をたくさん飲むことは、結石形成の予防になると言われている。水分を摂ると尿量と尿流が多くなり、尿中のいろいろな物質が溶けやすく、流れやすくなるためだ。

バランスの悪い食事……過食や偏食は万病のもとで、尿路結石の原因にもなりうる。特に動物性たんぱくと脂肪を摂り過ぎると尿中カルシウムを増加させ、クエン酸の尿中排出量を低下させる。これが結石形成を促進する原因になる。

また、シュウ酸を豊富に含む食品を多く摂取すると高シュウ酸尿症となり、シュウ酸カルシウム結石の原因になる。ホウレンソウやチョコレート、ナッツ類、タケノコ、紅茶にはシュウ酸が多く含まれているので、注意が必要だ。

高尿酸血症……高尿酸血症は痛風や痛風腎だけではなく、尿酸結石の原因にもなる。プリン体を多く含む食事、特にビールは尿酸値を上昇させるので、飲み過ぎはご法度。さらにビールの飲み過ぎは脱水症状を招くが、この脱水傾向が尿を濃縮させ、結石促進に作用するとも言われている。

副甲状腺機能亢進症……血中カルシウム値が高値を示す病気で、尿路結石の原因になると言われている。

ステロイドホルモンの内服……ステロイドホルモンは骨吸収を増加させ、骨形成を抑制する。すると血中に出たカルシウムとリンが尿中に過剰に排泄され、結石が作られてしまう。

過度なストレス……ストレスがかかると、自律神経の調節が乱れる。交感神経が優位になると心拍数が上昇し、緊張状態になる。そして血管の収縮が起こり、尿酸の排泄が悪くなり、尿酸結石の原因になるのではないかと言われている。

○発症の原因は環境因子にあり

食事やストレスなどは、ほかの病気にも通じる原因。やはり、不規則な生活は万病のもとと言えよう。ほかにも、近年の研究結果から尿路結石と動脈硬化の発症には極めて類似点が多く、「尿路結石はメタボリックシンドロームの結果、発症する生活習慣病の一疾患である」との概念が提唱されてきているそうだ。

「メタボリックの因子を予防する生活習慣は、尿路結石の予防にも必要不可欠。暴飲暴食は避け、十分な飲水を心がけ、適度な運動をすることが大事です。食事をしてからすぐ就寝すると、結石ができやすいという説もあります」

なお、尿路結石に遺伝性のものは極めて少ないと言われており、食生活や生活習慣などの環境因子が関与して発症すると考えられている。ただし、家族内に尿路結石の患者がいる人は、いない人より2〜3倍も尿路結石になりやすいという報告もある。家族やともに生活している人と一緒に、規則正しい生活スタイルを心がけることが大事だと覚えておこう。

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