東 啓介の前に開かれた新しい世界「どこまで歌えるのかチャレンジしたい」
大都会の片隅に存在すると言われる「Club SLAZY」を舞台に、セクシーでダンサブルなショースタイルのなかで男たちの葛藤を描く。2013年の初演からファンに熱い支持を受けている人気シリーズの最新作『Club SLAZY-Another world-』に、人気急上昇中の若手俳優・東 啓介が初参戦することが決まった。身長187cm、切れ長の瞳。一見クールな印象を受けるが、自他ともに認める“末っ子”タイプ。人懐っこい笑顔で現場を盛り上げる姿に、彼が愛される理由が見えた。

撮影/後藤倫人 取材・文/江尻亜由子 ヘアメイク/SAYAKA

ハタチの自分に、あんな色気が出せるかな。



――『Club SLAZY』シリーズに初参戦ですね。

この作品のことは、僕が初めて舞台に立つ前から知っていました。歌やダンスの実力がある人ばかりが出演しているので、そのメンバーに加わらせていただくことに、うれしさとプレッシャーを感じつつ…でも、楽しみな気持ちが一番大きいです。

――過去のシリーズをご覧になってみての感想は?

色気がスゴい(笑)。出演者全員から、個々の色気がふんだんに出ているなって。ハタチの自分にあんなふうな色気を出せるのか少し不安ですが、全力でパフォーマンスをして食らいついていきたいです。

――東さんが演じるウィルは、かつてのトップエースということですが、どんなキャラクターなのでしょう?

まだ台本を読んだだけですが(※取材を行ったのは5月中旬)、「オレがエースだ!!」って自ら主張するようなオラオラ系ではなくて。「エースになってください、僕たちが支えますよ」って周りに思われた結果、いまの座にいるのかなっていう印象です。

――役作りについては、現段階でどういうプランを考えていますか?

台本を読んでみて、彼がどうしてエースなんだろう?って思うところもあるんですけど、きっとトップエースになる人は、何かすごく長けてるところがあるんだろうなって。そこにみんなが惹かれているんだと思います。

――その“何か”を、稽古で探りながら。

そうですね。試行錯誤しながら詰めていきたいと思います。あとは、1作目から出演されている加藤良輔さんや、周りの方たちの力をお借りして、この世界観を創り上げていきたいです。いつもの『Club SLAZY』とは一味違う面白さがあると思います!



――共演者の方で、いままで共演したことのある方というと。

(大山)真志くんは、『BOY BAND』という舞台で共演させていただきました。そのときは直接絡まない役だったんですが、今回は密に関わることができるので楽しみです。真志くんは僕と同じくらいの身長でダンス、歌の見せ方がとても上手い役者さんなので、稽古場でそこを学んでいきたいです。

――顔合わせは、まだなんですよね?

まだです。Kimeruさんには、出演が決まったあとにご挨拶させていただきました。「パートナー役なんでしょ? よろしくねー!」って言ってくださって。壁がない方でしたね。とってもフレンドリーで、スポンジのような柔らかい性格なのかなって(笑)。

――先輩方の中に初参戦という立場で入っていくのに、Kimeruさんのような方がいらっしゃると心強いですね。

そうですね。僕も最初は、人見知りしてしまいがちなので、気軽に声をかけてくれるととても安心します。

――目上の人にかわいがられるタイプなのかなと思いましたが…?

どうなんでしょう。でも末っ子なので、そういう立ち回りは得意なほうかもしれないです(笑)。

――舞台の見どころになる歌やダンスについてはいかがですか?

いままでソロで、こんなにしっかりと歌った経験がないので、猛特訓中です。みなさんに感動してもらえるように頑張りますのでお楽しみに!! ダンスはあまり得意なほうではないので、本番までに得意分野と言えるくらいにもっともっと頑張ります(笑)。

――では、今回の舞台にかける意気込みというと。

自分の歌とダンスをもう一段高いレベルになったものを、本番でみなさんにお届けしたいです。稽古場には真志くんをはじめ、歌やダンスの表現が上手い方がたくさんいらっしゃるので、先輩方の技術をどんどん盗んでいきたいです!!




目立つことが昔から苦手だった。だけど…



――東さんは2013年のオーディションを経て、ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンで本格的に俳優デビューをされたんですよね。もともと俳優志望だったんですか?

いえ、僕はずっとテニスのインストラクターになりたくて、中学高校とテニスをやってたんですけど、高校1年生の後わりにケガをしてしまって…。休んでるあいだにテレビでドラマを見る機会が増え、俳優業に興味が出てきました。そんなときに友だちが「違う場所でもテニスってできるんじゃない?」と、オーディションを勧めてくれたんです。

――そうだったんですね。

だから、「この役者さんに憧れて」とか「こういう歌が歌いたくて」とか、そういう明確な理由があったわけじゃなく、夢を探しに行くぞって感じで芸能界に飛び込みました。でも、スクールで学んでいくうちに俳優として表現したいことの欲求が強くなり、もっと上を目指したいとD-BOYSオーディションを受けました。一緒にオーディションを受けた人や共演してた人は、いまでも競いあう仲の人が多いですね。

――突然芸能界に入るという話になって、ご家族の反応は?

ビックリしてましたね。「だ、大丈夫?」みたいな(笑)。でもいまは、すごく応援してくれています。

――そして、そのお友だちの言った通り、テニミュで俳優デビュー…って、ほぼ予言じゃないですか! お友だちは、舞台を観に来てくれました?

実はまだ一度も観に来てくれてないんですよ。僕のほうから「舞台のDVDがあるんだけど…観る?」って貸しました(笑)。彼も自分の夢を追いかけていて忙しそうなので、仕方がないんですけどね。自分も頑張らなきゃって思うし、昔もいまも、刺激をもらえる存在です。

――しかし、こんなに背が高くてカッコよくて、オーディションを受ける以前からスカウトされていそうですけど…。

そんなそんな…まったくなかったです。

――でも学校では「きゃー!東先輩ー!」みたいな感じで目立っていたのでは…?(笑)

学校では……目立つほうだったと思います。でもテレビや雑誌に出たいとか全然思わなかったんですよね。俳優さんやモデルさんを見てカッコいいなとは思ってましたけど、自分がそこに立つのは、恥ずかしい気持ちのほうが強いというか。

――いま、こういうお仕事をされていて、「人前に立つのが苦手」なところを知っていたお友だちのみなさんは驚かれているのでは?

そうですねぇ…。でも、高校の友だちには「いや、(芸能界に)行くと思ってたよ」って言われました(笑)。

――実は嫌いじゃないでしょ、的な(笑)。

結果、嫌いじゃなかった(笑)。



――デビュー以来、2.5次元の舞台に数多く出演されていますが、演じる側として面白いと感じるのはどんなところですか?

面白いところは、世界観ですかね。絵で描いてあるものが立体的に現れる面白さ。たとえば『弱虫ペダル』だったら、舞台の上で、原作のあの臨場感をどうやって出すんだろう、とか。舞台ならではの表現を突き詰めていく作業が好きです。

――原作をベースとしつつも、自分の中で想像を膨らませて補完していかなきゃいけないですよね。

絵だけじゃわからない仕草だったりを自分で考えるのは、役者として面白かったりもします。たとえば『弱虫ペダル』の葦木場(拓斗)くんを演じたときのこと。彼は背が高くて猫背なんですけど、なんで猫背なんだろうな?と。

――なんで猫背なんだろう……?

すごく優しい性格で、周りの人に合わせちゃうタイプで、臆病なところもあるから、どんどん縮こまっていっちゃったのかな?って、僕は考えました。そうやって考えていると、行動とかしゃべり方とかも自分なりに解釈できて、面白いなって。

――逆に、難しいところは?

やっぱり原作があるぶん、お客さまひとりひとり違うキャラクターのイメージがあるので…。自分なりに作ったものを受け止めてもらえるかどうかっていうのは、初日、舞台に立つまですごく不安だったりします。

――舞台に立って、お客さんの反応がダイレクトに伝わるのはドキドキですね…。

拍手の大きさとか終演後の歓声で、公演がどう受け止められたのかわかるんですよね。笑顔が見られると、「あぁ、良かった」ってホッとします。