「日本史上、最高の選手に」。吉田麻也が語る岡崎慎司のすごさ
4月3日に行なわれたレスター・シティ対サウサンプトン戦後の記者会見。「その件については......」と、レスターのクラブ広報が止めに入ったのは、試合当日に『サンデー・タイムズ』紙が掲載した「ドーピング疑惑」に関する質問が出たときだった。
記事の内容は、ロンドン拠点の医師がアーセナルとチェルシー、レスター、バーミンガム・シティの4クラブの選手に禁止薬物を投与したというもの。『タイムズ』紙のオリバー・ケイ記者が、「心配ではないか?」とクラウディオ・ラニエリ監督に問うと、広報が「クラブから声明文を出している。ラニエリ監督が答えることはない」と質問をさえぎった(※レスターは事前に「証拠不十分」と疑惑を否定していた)。
レスター側が神経質になっていたのは選手への取材も一緒で、許可が下りたのはクラブ指定の3選手のみ。このなかに岡崎慎司は含まれず、試合後に話を聞くことは許されなかった。「お疲れ様です」とひと言だけ残し、日本代表FWはスタジアムを後にした。
その岡崎は12試合連続となる先発出場を果たすも、無得点で64分に途中交代で退いた。交代を告げられると、天を仰いで悔しそうな仕草を見せたが、日本代表戦での長距離移動のせいか、後半になると攻撃に絡めなくなっていた。さらに、ベンチでは足首をアイシングする姿も......。ラニエリ監督が「(岡崎に)ケガはない」と話したことから重症ではないと思うが、「疲れ」と「足首の痛み」から次第にキレがなくなっていったように見えた。
そして、このサウサンプトン戦は、吉田麻也との日本人対決にも注目が集まった。だが、ベンチスタートの日本代表DFに出番はなく、ふたりが同時にピッチに立つことは叶わなかった。「チャンスはいつ来るかわからない。使われるタイミングはあると思うので、そのときに良いパフォーマンスが出せるよう準備します」と吉田は語る。直近6試合中5試合でベンチスタートと、試練のときが続いているが、「1試合でも多く出られるように頑張りたい」と前向きに話した。
さらに、取材エリアでの話題は、レスターと岡崎の話に。岡崎について、吉田はこう証言する。
「岡ちゃんだけじゃなく、チーム全体に言えることですが、相手にとって嫌なところ、嫌なところを突いてくる。アクションが1回だけでなく、2〜3回続けられるところがすごい」
筆者の目から見て、岡崎の怖さがもっとも出ていたのが、クロスボール時の「マークを外す動き」だった。クロスに「点」で合わせる動きは、岡崎の武器のひとつである。
たとえば、こうだ。いったんファーサイドに向かうフェイクの動きを見せ、クロスが入りそうになると、身体の向きを変えてニアサイドに突進。ここからスピードを一気に上げて、敵のマークを剥がそうとする。それでも外せなければ、スピードを緩めたり、ステップバックしたり、あるいはもう一度ファーに抜けたりすることでフリーになる。こうした巧妙な駆け引きを、ゴール前で何度も続けるのだ。
ストライカーとして当然の動きではあるが、初速のスピードが速く、俊敏性も高い岡崎のトライは、プレミアリーグの他のFWと比べても危険度が高く、オプションも多い。別の表現をすれば、ペナルティエリア内でのスペースの使い方が抜群にうまい。
サウサンプトン戦に関して言えば、4分と11分のシーンが象徴的だった。「チャンス」と見てニアサイドに突っ走り、クロスボールに合わせることに成功した。いずれも得点には結びつかなかったが、サウサンプトンのDFからすれば、対応は相当に厄介だったはずだ。ペナルティエリア内でスピードの強弱をつけ、バネのように左右に動いて突進してくるのだから、一瞬たりとも気は抜けないだろう。
それだけでなく、中盤まで下がって守備をこなし、パスワークにも絡む――。プレミアリーグで戦うことの難しさ、競争の激しさを身をもって知る吉田だからこそ、感心しながら言葉をつないだ。
「すごいですよね。あれだけ走り回って、60分ぐらいでヘトヘトになっているんだから。なんて言ったらいいんだろうなあ......日本サッカー史上、最高の選手になりつつあるんじゃない。これで優勝したら、誰も何も言えないでしょう」
吉田の分析は、サウサンプトンを1−0で下したレスターにも及んだ。1−0での勝利は4試合連続。高速カウンターやセットプレーから1点を奪う「力強さ」と、その1点をしっかりと守り切る「したたかさ」を、レスターは身につけている。
「強いねぇ。形が確立されているし、各々がやるべきことを理解している。やるべきこと、やれないことがハッキリしている。あとは、やっぱり試合を重ねて、勝ち点も積み重ねて、自信がかなりついているんだと思います。(動きに)迷いがない。逆にサウサンプトンは、『どっちに行くんだろう?』『どうするんだろう?』というのがあって、やっぱりそこの一瞬の判断でズレていくのかなと。レスターは、やるべきことを理解しているし、徹底されている。あと、ボランチのふたり(エンゴロ・カンテとダニー・ドリンクウォーター)がすごくいい」
試合前日にトッテナム・ホットスパーがリバプールと引き分けたことから、2位との勝ち点差が「7」に広がった。残り試合は「6」。優勝への気運が高まっているのはサポーターも一緒で、試合終了間際の5分間は、スタジアム全体が総立ちで声援を送った。その声量も、今シーズンでもっとも大きかった。
「ミラクル・レスター」と世界中の話題をさらっている彼らだが、その奇跡は「優勝」という最高の形で、いよいよ結実しそうである。
田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke

