後半立ち上がりに2点目を決めたところまでは優勝に向かって順調な歩みだった韓国。しかし、終盤に入り一気に崩れてしまった。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 せっかく手にしたリオデジャネイロ五輪出場への喜びも吹き飛んだ。日本と戦ったU-23アジア選手権決勝での結果に、韓国メディアは強い衝撃を隠せない。
 
 これまで韓国ではカタール・ドーハとは言えば1993年のアメリカ・ワールドカップ・アジア最終予選時の“ドーハの奇跡”として記憶されてきたが、各種メディアではその枕詞を引き裂くような見出しが並んだ。
 
「痛恨の敗戦、まさに“ドーハの衝撃”」(スポーツ総合メディア『エクススポーツ』)
「“ドーハ・ショック”」(『マイデイリー』)
「“ドーハの逆転”に茫然自失」(通信社『聯合ニュース』)
 
「崩れた韓国、“ドーハの悪夢”の誕生」(サッカー・メディア『インターフットボール』)と題する見出しも出た。
 
 ただ、それも当然だろう。後半途中まで2点のリードを奪いながら、まさかの3失点で大逆転負けを喫したのだから。各メディアの報道もこの3失点の原因を追及する記事が多い。
 
 例えば『スターニュース』は「痛恨の大逆転負け、なぜ3失点で崩れたか」と題した記事のなかで、「2点目が決まるまでは、完璧な韓国のペースだった。が、韓国は突如集中力を失った。最終ラインが相手の鋭いパス一発で崩れた。相手アタッカーたちを捕まえきれなかった。日本は執拗に韓国の弱点を攻略した」と指摘している。
 
『Goal.com KOREA』版も「またもや体力と集中力不足を露呈」と題した記事のなかで「集中力が不足し、体力も急激に落ちた。攻撃から守備に転換するスピードが遅くなり、カウンターに強みを持つ日本の攻撃の前に崩れた」と分析した。
 
「集中力不足が今回の惨事を生んだ」としたのは、サッカー専門メディア『ベストイレブン』だ。
 
「浮ついた雰囲気が惨事を招いた。2得点で早くも優勝の雰囲気だった。その蔓延した雰囲気が集中力低下につながり、相次ぐ失点を招いた。韓国はディフェンスラインを上げ過ぎて、裏のスペースのケアに失敗した。あまりにも簡単に日本にスペースを許し、一瞬にしてゴールを許してしまった」(サッカー専門メディア『ベストイレブン』)
 
 韓国メディアが指摘するのは、こうした問題点が今回の決勝戦に限ったことではなかったということだ。
 
 ネットメディア『マイデイリー』は「得点後が不安だったシン・テヨン号、韓日戦でも再現」と題した記事で、「今大会の韓国は毎試合で先制するも、その後は試合の流れを調律できずに苦戦する内容を繰り返していた」と指摘。
 
『NEWSIS』はその原因のひとつとして、「リーダー不在」を指摘している。曰く「最初の失点のあと、日本の気勢を折るために試合のテンポを遅らせることも選択肢だった」。スポーツ新聞の『スポーツ朝鮮』も、「時限爆弾のような守備の問題が韓日戦でも露呈された。今大会は攻撃に比べてお粗末な守備が常に問題だった。この問題の改善が急がれる」と厳しく言及している。
 
 またシン・テヨン監督のベンチワークを問題視する見方もいくつかある。「ベンチの安易な対応が生んだ残念な結果」としたスポーツ新聞『スポーツ朝鮮』は、「2失点のあと、ベンチは変化を与えるタイミングを見誤った。攻撃よりもDFを投入すべきだった」としている。
 
 このようにほとんどの報道が韓国を主語にして厳しく報じられるなか、日本の選手がクローズアップされる記事もあった。日本にとっては逆転の立役者となった浅野拓磨だ。
「交代出場の浅野にやられた“痛恨の大逆転負け”」(サッカー専門誌『ベストイレブン』)
「日本の攻撃のスイッチとなった浅野」(スポーツ新聞『イルガン・スポーツ』)
 
 おそらく今後も韓国で議論になりそうな “ドーハの衝撃”。そのたびに、韓国のサッカーファンたちは浅野のことを思い出すことだろう。
 
文:慎 武宏(スポーツライター)