左ワイドにはシリア戦で好パフォーマンスを見せた清武、右SBには評価を上げる塩谷が抜擢される可能性も。

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 シリア戦が行なわれたオマーンと比べて気温・湿度ともに低く、イランの気候は快適だ。標高1500メートルという高地であることを差し引いても、「パフォーマンスはかなりよくなるんじゃないかなという期待はあります」(吉田)と選手たちもモチベーションを高めている。
 
 香川が「しっかりとリカバリーできているので、次の試合に向けて良い準備ができると思います」と言うようにコンディション調整も順調で、12日の前日練習を控えた時点では23人全員が怪我なく、イランとの一戦に向けて準備を整えている。
 
 約10年ぶりとなるアザディ・スタジアムでのゲームは、これまでのワールドカップ・アジア2次予選とは大きく趣が異なる。イランはFIFAランキングで日本より上のチームで、なおかつスタジアムには8万人の観衆が押し寄せるとも言われている。完全アウェーの雰囲気のなかでの、力のある相手との対戦。日本の現在地が問われる試合になるということだ。
 
 その意味で言えば、スタメンには現時点でのベストチョイスが並ぶと予想できる。今年3月の就任から積み上げてきた「縦に早いサッカー」や「デュエル」が、このレベルの相手に通用するのか。その見極めを最優先するはずだ。
 
 もっとも、イラン戦は6人交代が可能な親善試合だ。いくつかのポジションでスタメンの変更もあるかもしれない。例えば、シリア戦で3点目の起点になった清武や、強烈な身体能力を備えた塩谷あたりは、スタートからピッチに立っていてもおかしくない人材だ。
 
 ふたりとも評価は高く、ハリルホジッチ監督は清武について「ビルドアップのクオリティが高い」、塩谷については「テクニックのクオリティも良いものを持っていますし、パワーも十分ある。チャンスを与えるメリットはあると考えています」と語っている。当人たちもメンタル面での準備は万全で、「試合に出たいという思いはすごく強い」(塩谷)と出番に飢えているようだ。
 
 塩谷の起用が予想される右SBは、内田が長期離脱中で、代役を務める酒井宏、酒井高がいずれも合格点と言えるパフォーマンスを示せていない。塩谷にとっては、序列を上げる絶好のチャンスと言える状況で、本人が意気込むのも当然だろう。
 一方の清武はシリア戦では、途中出場でトップ下と右ウイングに入った。こうした起用法を見る限り、ハリルホジッチ監督はユーティリティ性を評価しているようで、イラン戦では左ウイングに入る可能性もあるだろう。
 
 清武は所属クラブのハノーファーではトップ下でプレーしているが、左右のスペースに流れて変化をつけるシーンも少なくない。また、アギーレ前監督が指揮を取った今年1月のアジアカップでは左ウイングで、ザッケローニ体制下やロンドン五輪では右MFで起用されており、サイドでのプレーはお手のものだ。サイドのスペースに流れて起点になる香川とポジションチェンジを繰り返しながら、攻撃に厚みをつけてくれるだろう。
 
 もちろん、清武、塩谷のふたりだけでなく、このところ代表での出場機会に恵まれていない柴崎やA代表初招集の南野、東アジアカップで評価を挙げた米倉、生き残りに執念を燃やす柏木にもチャンスが与えられる可能性はある。
 
 とりわけ、「我々はゴール前の効率性でハイパフォーマンスを見せられていません。だから彼が必要です」(ハリルホジッチ監督)と絶賛された南野には注目で、「数年後には、日本代表にとってものすごく効果的な選手になる」(同監督)という布石も含めて、比較的長いプレータイムを与えられるかもしれない。
 
 イラン対策について言えば、もっとも警戒すべきは高さだろう。上背のあるFWを活かしたロングボールはもちろん、セットプレーの対応にも細心の注意を払うべきだ。