古豪復活目指す鎌倉学園、伝統の「K」健在ぶりを示す

5回に追撃の安打を放った藤澤君(慶應藤沢)

 かつて1960年代には2度、春の選抜に出場したという実績もある鎌倉学園。70年代頃までは、神奈川県内でも一目置かれる存在として一時代を形成していたともいえる存在だ。その時代から変わらない、左胸に「K」のワンポイントイニシャルだけというユニホームは伝統の証でもある。

 土地柄、古風モダンとでもいおうか、鎌倉時代からの歴史の香りとサザンオールスターズの桑田 佳祐に代表されるような湘南ボーイのモダンでハイセンスでちょっとお茶目な雰囲気とが、巧みに融合しているのが鎌倉という街なのだが、鎌倉学園はその象徴的な存在と言ってもいいのではないだろうか。

 その鎌倉学園、4回に4四死球もあって押し出しで先制すると、さらに暴投で追加点を挙げる。ここで慶應藤沢の木内 義和監督は先発左腕の小野君を外野に下げて、浅井君を送り出す。その浅井君の代わり端を3番片岡君が叩いて右線二塁打としてさらに2点を追加した。

 ところが、これで発奮したのか慶應藤沢打線も突如、5回に鎌倉学園の清水君を捉えだす。ここまで、慶應藤沢打線を無安打に抑えていた鎌倉学園の清水君だったが、この回先頭の小野君に四球を与えると、中村君が右前打して一二塁。続く田中君もいい当たりの右直。9番藤沢君が右前打でつないで一死満塁。さらに、1番に戻って渡辺君が左前打して1点を返し、杉山君も三塁手の横を抜く会心の一打で二者を帰し、たちまち1点差となってしまった。

 序盤の静かな展開から一転して、動きの慌ただしい試合となっていったが、6回から鎌倉学園のマウンドは清水君から左腕の横田君にスイッチした。横田君は変わった6回を3者三振という絶好調の滑り出しで、これに刺激を受けた攻撃陣は7回、二死一塁から5番東君が左中間をライナーで破るが、左翼95m中堅120mというグラウンドの最も深いところへ転がり、打った東君は好走よく、一気に本塁まで走り抜けてランニング2ランホームランとした。

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四球で丁寧にバットを置く鎌倉学園の選手

 鎌倉学園はさらに8回にも、慶應藤沢の3人目中村君が連続四球するなどで好機を作って、再登板した小野君から4番地主君が中前へ2点適時打を放って点差を広げた。

 慶應藤沢は、9回に追い上げたものの、渡辺君の二塁打で挙げた1点止まり。鎌倉学園のリリーフした横田君も暑さと緊張でややへばり気味ではあったものの、何とかしのぎ切った。

「最後は、心も身体もばてていましたね」と、鎌倉学園の竹内智一監督は、スコア以上に辛勝だったというが、試合時間も2時間30分以上かかった、いささか長いものだった。

「今日の試合は、反省点ばかりですね。勝ったということ以外には、何もいいことはありませんでしたから、恥ずかしい試合ですよ」と、言いつつも辛抱の試合を何とか凌ぎきったことに安堵していた。

 そんな鎌倉学園だが、感心したのはこの日は慶應藤沢投手陣の乱れもあって、13四死球を得るのだが、四死球で出塁となった各打者がいずれも丁寧にバットを打席の横に置いていくことだった。ともすれば、バットを放り投げて走って行きたくなるところでもあるが、このあたりは「意識して、言っています」という竹内監督の丁寧な指導の成果でもあると言っていいであろう。こういう部分を徹底していくところから古豪復活を始めていこうという姿勢にも、古風モダンの鎌倉学園らしさ…が感じられた。

(文=手束 仁)

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