品川駅に到着した列車で異臭発生、サリンによるテロが行われたという設定で訓練が実施された(2015年6月9日、恵 知仁撮影)。

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京急が品川駅ホームで、化学テロを想定した訓練を実施。防護服を着用した警察・消防隊員らが負傷者の救助、ホームの除染などを行いました。ちょうど20年前に発生した「地下鉄サリン事件」の教訓が活かされています。

サリンを想定、防護服を装備して

「第953SH列車で異臭が発生。負傷者が出ています」

 2015年6月9日(火)の午前11時頃、京浜急行の品川駅に異常を伝える声が響きました。駆けつけた警察、消防隊員は、有毒化学物質によるテロ行為が想定されたため防護服を装備。問題の列車内へ進入していきました。

 京急品川駅でその日行われた「鉄道テロ対策訓練」の様子です。京急87人のほか、高輪警察署と警視庁の専門部隊が11人、高輪消防署と赤坂消防署赤坂化学機動中隊が31人参加し、実施されました。

 品川駅ホームにはそうした大勢の警察官、消防隊員がいたほか、「有毒化学物質によるテロ行為」を想定した訓練のため、ガスマスクや防護服を着用した隊員も多数。その異様な情景に「何事か」と一瞬驚き、「訓練」と書かれた看板を見て得心したような乗客の姿も見られました。

 京急はテロを想定した訓練を毎年実施しており、同社広報の飯島さんによると、なるべくリアルに行うほうが効果が高いといいます。また同社の小倉鉄道本部長は京急沿線に羽田空港が存在することを挙げ、テロ対策訓練を継続的に行っていくことの意義を話しました。

早い段階で「スイッチ」を入れることが大事

 こうした訓練を行う目的はその発生時、機敏に対応できるようにすることです。

 訓練後の総評において警視庁高輪警察署の松苗署長は、自身がちょうど20年前の1995(平成7)年、「地下鉄サリン事件」に関わったこと、そして当時はNBCテロ(核・生物・化学兵器)に対する備えが充分でなかったことを話しました。

 また東京消防庁高輪消防署の小杉予防課長は、除染などが必要になるNBCテロはいかに早い段階で「NBCテロである」というスイッチを入れて対応できるかが重要だといいます。

 今回の訓練は、日中は使用していない行き止まり構造の京急品川駅3番線を使い、「品川駅2番線に到着した上り快特の先頭車(8号車)に不審物があり、異臭がすると乗客から通報があった」という設定で行われています。使用された車両は1000形の4両編成(1461編成)です。