元カノの姪にまで魔の手が…(写真はイメージです)

写真拡大

 2014年6月17日の早朝、千葉県市原市で通学途中の女子中学生(当時13)が車で連れ去られそうになったという“千葉中2女子誘拐未遂”事件が発生した。翌日に千葉県警が逮捕したのは住所不定の無職、赤木良治(54)。

 しかし赤木が犯した罪はこれだけではなく、今年4月、千葉地裁で開かれた赤木に対する裁判員裁判でその悪行の全貌が明らかになった。

 赤木が罪状認否で「すべて間違いないです」と認めた罪には、先述の中2女子誘拐未遂だけでなく、知人Aさんの娘、Bちゃん(当時7歳)に対するレイプ未遂も含まれていたのだ。

 起訴状や冒頭陳述によると赤木はBちゃんを『お菓子をあげるからおいで』と誘い出し車に乗せ人気のない山中で強姦しようとしたが、Bちゃんの性器が未発達なため挿入を遂げることができなかったという。だがそれであきらめる事なくアナルセックスをしようと肛門への挿入も試みるが、こちらも未遂に終わった。

 赤木には覚せい剤取締法違反の前科が3件あった。2013年の3月、服役を終え出所、元カノの父親が身元引受人となり、その家に身を寄せていた。仕事も元カノの父親の自営業を手伝うなどしていたという。肝心の元カノは、赤木の服役中に死去していた。知人Aはこの元カノの姉である。

 つまりBちゃんは、元カノの姉の娘。赤木は事件まで、Aさん宅にたびたび出入りし世間話をする仲であり、Aさんの子供らとも親しくしていた。見境のなさには驚くばかりである。

「事件の日は子供らと夕食に食べようと、寿司を買って自宅へ向かっていました。すると長女から、次女のBが帰って来ないと電話がかかってきました。(中略)帰宅後、知人友人に片っ端から電話をかけ、担任の先生にも一緒に探してほしいとお願いしていました。その中で、唯一電話の応答がないのが、赤木でした」(Aさんの調書)

あだ名はスケベの「スケロク」

 赤木は出所後、元カノ一家にお世話になり、家族皆と交流があった。『俺は子供の頃、親父にスケベと言われ、“スケロク”と呼ばれていた』と語っていた赤木のことを、Aさんと子供らは、『スケロク』と呼んでいたという。Aさんは夜になり警察にも連絡し、事情を聞かれていた。

「赤木は何らかの情報を知っているのではないかと思い、また電話をかけましたが応答はありませんでした。娘は殺されたのか、あんなに可愛がってくれていたのだからそんなことはない……そうしていると23時すぎに玄関のドアが開きBの『ただいま』という声が聞こえました。思わず『何やってたの』と聞くと『スケロクと一緒にいた。ママ、ウソつくと怒るから言うけど、スケロクにお股舐められた』と言われ、この時点で頭が真っ白になりました」(同)

 当時7歳だったBちゃんは取り調べでスケロク赤木が犯した悪事を拙い言葉で語っている。

「この日の夕方公園で遊んで服が汚れたので家に帰って着替えました。スケロクから電話があり『お菓子をあげるからおいで』と言われました、お母さんの友達だから行くとローソンにいました(中略)その後車に乗ると森へ連れて行かれました。帰りたいといっても『ダメ』と言われ怖くて死ぬかと思いました。おまたにちんちんを押し付けられて痛かったです」(Bちゃんの調書)

 調書によればローターを使おうとしたこともわかっている。Bちゃんへの強姦未遂事件を起こしたのち赤木は行方をくらました。その翌年、中2少女への誘拐未遂事件を起こし逮捕となる。

 こちらの少女については朝早く人気の少ない市道で、自転車に乗っていた女子中学生に声をかけおもむろに抱きかかえ、乗ってきたワンボックスカーに放り込み、手足を結束バンドで縛り顔を殴って連れ去ろうとしたとき、ちょうど車が通りかかったことで未遂に終わった。

 法廷に現れた赤木はメガネで禿げかけた頭にずんぐりむっくりした、ただの中年おやじで、目つきが悪く態度が悪いとかいうような絵に描いた凶悪犯というわけでもない。それもまた恐ろしい。

 赤木の犯した罪はこれだけではなく、覚せい剤の所持・使用、そして逮捕後に検察庁の取調室で激高して机を蹴って破損させた公務執行妨害・器物損壊というアッパーすぎる罪にも問われていた。

 だが法廷では小さくまとまっており、「あなたちょっと語尾がはっきりしないのでちゃんと喋って下さいね!」と何度も裁判長に指摘されながらモゴモゴと語る。つくづく人は見かけによらない。

赤木「(Bちゃん事件のときは)やっぱり、クスリやったのと、わいせつな本やDVDを観たせいで……(聞こえない)……何か……」
裁判長「(食い気味で)何か!?」
赤木「わいせつなことをしようとしていたのかもしれない……なんか……あのときなんか……クスリのせいでアタマおかしくなった……」
赤木「(中2女子誘拐未遂のときは)直前にクスリを1グラム購入しました、早朝まで3回使った……声をかけたのは、なんか……援交みたいのしてもらいたいと……」
弁護人「きっかけは?」
赤木「前日観た本やDVDにそういうのいっぱいあって……たぶんクスリのせい、あると思います」

 つくづく、少女たちにとっては最悪の事態にならなかったことだけが救いである。なんでもかんでも覚せい剤とエロコンテンツのせいにしていた赤木には懲役14年の判決が下されている。

著者プロフィール

ライター

高橋ユキ

福岡県生まれ。2005年、女性4人の裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成。著作『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)などを発表。近著に『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)