男が描いたとされる漫画

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首相官邸に小型無人飛行機「ドローン」を侵入させ、威力業務妨害で逮捕された無職の男(40)がインターネットで公開していたとみられる漫画が、意外におもしろいと話題になっている。

作品は世代間格差の問題などを扱ったシリアスなテーマに本格的な絵柄で、過去に漫画雑誌に投稿していたものをアップロードしたようだ。

「老人駆除法」が施行された日本が舞台



男がドローンを飛ばした経緯などを公開したブログの2014年12月3日の記事に、「昔書いたマンガを思い出したからupした」とドワンゴのサービス「ニコニコ静画」へのリンクが貼られている。

漫画のタイトルは「ハローワーカー」で、05年頃に描いた読み切り漫画で「ヤンマガとかに送って落選」したという。漫画の投稿者名は「Yasprey」。男がドローンのひとつにオスプレイをもじって名づけていた「ヤスプレイ」と同じだ。

物語の舞台は「老人駆除法」なる法律が施行された日本。主人公のフリーター男性は、妊娠中の交際相手の両親から定職についていないことを理由に結婚を反対され、ハローワークで仕事を探しているところを、「国家公務員になる気ない?」と勧誘される。その仕事は高齢者を駆除(殺害)することだった。主人公は公園でゲートボールに興じる高齢者などを次から次へと剣で切り裂いていく。

登場人物のセリフによるとこの「老人駆除法」は「厚生労働相が導き出した年金・雇用・少子高齢化などを一挙に解決できる特効薬」。失業者を雇用し高齢者を「駆除」することで、高齢者にかかる年金、医療、福祉の費用を削らし、出産、育児、教育にまわすという。

施策から数年後、出生率は戦後最高になり第3次ベビーブームが起こるほどの「成果」となり主人公も出世して家庭を築くが、意外な形で結末を迎える。

プロ漫画家や評論家が評価



ネットでは「絵も上手いし普通に面白かった」「ドローンおじさんの描いた漫画おもしろい」「きちんとしたストーリー漫画を一本描きあげられる才能ってけっこうすごい」などの感想が書き込まれている。

プロのクリエイターからの評判も良く、「完全教祖マニュアル」「よいこの君主論」などの著書がある架神恭介さんはツイッターで、「大した説明もないのに、ちゃんとジジイ3人のキャラが立ってる辺りとか普通に巧いぞ、これ。オチの辺りが弱いのだけちょっと残念だけど」とツイート。「クピドの悪戯」シリーズなどで知られる漫画家の北崎拓さんも「確かにかなり上手い」とツイートした。

マンガ評論家の伊藤剛さんは、
「あのマンガがドローン犯人作かどうか、確証が得られてないのだけれど、新人賞応募作だったら賞とったかも、というレヴェルというのは同感。うちの卒業制作だったとしても、学内の賞を出すかどうかの議論にはなっただろう」とTwitterで述べている。

ストーリーは高齢者を一方的に悪者にする内容というわけではなく、「ハローワーカー」の続編である「禁老区」では、追われる側の高齢男性3人組の視点で話が展開する。ニコニコ静画での閲覧数は26日午前10時現在、「ハローワーカー」が5万8000回、「禁老区」が2万8000回を超えるほど注目が集まっている。