「夫婦。」DVDBOX/TBS
遊川和彦が2004年に書いた熟年夫婦の問題を描いたドラマ
「◯○妻」で主人公のお母さんを演じている黒木瞳が出演している。

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◯◯妻」(NTV水曜10時〜)が絶好調。第4話までの平均視聴率は14.6%(関東地区 ビデオリサーチ調べ)で、2月11日放送の第5話に期待がかかる。
1話からずっと、柴咲コウ演じる◯◯妻・ひかりとはいったい何者なのか? その謎で引っ張ってきた。
謎の◯◯妻ひかりは、いつもひっつめ髪で質素なボーダーのカットソーを着ている。自分のことは二の次で、夫である人気ニュースキャスター久保田正純(東山紀之)に尽くしまくり、山内一豊の妻のようだと表されるほど。
家事全般優秀、正純の父母にも実にかいがいしく接し、夫の仕事のバックアップも徹底的。
1話では、夫の番組に出てもらいたい相手の弱みを握り出演を承諾させ、3話では、夫が酔って仕事に穴を空けそうになると、看護師経験を生かして立ち上がらせ、4話では、ネットで夫を非難する声を沈静化するためにネットカフェで大量の擁護書き込みをした。
どんな時も、彼女はボーダーを着ている。
異常過ぎるほど何もかも先回りしてひたすら夫のために献身するひかりだが、彼女と正純の関係は正式な夫婦ではなく、3年ごとに更新する契約を結んでいるだけだった。契約結婚6年めにして、正純は正式に結婚し子供を作ろうと提案するが、ひかりは、いつか夫の気が変わり愛が消えることがこわいという理由から頑なに拒む。
過去(10代の時)結婚しようと考えた男に心変わりされたトラウマも手伝っているとはいえ、それにしても、である。
ひかりがそこまで強く思い詰めるのには、実は、ほかに大きな理由があった。
4話の最後でひかりは、過去に人を殺していると、正純の父・作太郎(平泉成)だけに告白。とても重たいものをひかりは背負っていたのだ。
いよいよこれから、ひかりと正純の内面の暗部が出てくるヘヴィー路線に突入するのだろうか。どんなに重い展開になっても、ひかりの服はライトなボーダーなままなのだろうか。

気になるボーダー服。細いのから太いのまで幅はいろいろあれど常にボーダー服という記号的な◯◯妻は、実はかわいい万能奥様ロボットとかいう話だとわかりやすいが、そういうファンタジックな話ではないことは、劇中、正純が、忍者か、ロボットか、透明人間か、などと毎回、疑問視するシーンが出てきて、その都度、ひかりが「違うと思うけど」と真顔で答えることで、十分わかっている。
なんといっても、脚本の遊川和彦は、謎の家政婦がやって来たことではじまる家庭崩壊を描いた「家政婦のミタ」や、かつてないショッキングなヒロインの結末を描いた朝ドラ「純と愛」、視聴者から賛否両論あった女教師の鬼のような教育を描いた「女王の教室」など、常にテレビ的モラルのギリギリのところで勝負しているので、ひかりの秘密も、正純の葛藤も、ふたりの関係も穏やかには済みそうにない。

ひかりが変わらないでほしいと願っていた正純は、ひかりの頑さのせいで苛立ち、次第に今まで人に見せてない部分をさらけ出し、はからずしも変化をしはじめている。
4話では、ひかりがいつも意味深にもっているリンゴーーおそらく純粋な愛の象徴を、仕事のパートナーである若いアナウンサー・愛(蓮佛美沙子)は割っていたので、正純との関係に一歩踏み込む危険性がある。
ひかりの奔放な母親・千春(黒木瞳)も4話で言っていた。「結婚した女の辛さ知ってる? 男の弱さと愚かさを見なきゃいけないこと」と。
ひかりは結婚もしてないにもかかわらず、その見たくない正純の違う側面を見ることになってしまいそうだ。
そもそもひかりは、正純のジャーナリストとしての純粋な正義感を尊敬し好ましく思っているようで、彼の番組でのトークをいつもうっとりと聞き、しっかり記憶し、毎晩、番組の感想と意見を正純宛に書くほどの、濃い正純オタクという感じ。
契約してから6年間は、正純も、自分のことを最もよく見て、理解してくれて、時に忘れそうになる彼の新年を思い出せてもくれるひかりを大切に思っていたというのに、ひかりが完全に自分のものにならない(正式に結婚しない)ことがだんだん我慢ならなくなる。
結婚とは何なのか? と思わされる話だ。
正純も純粋だが、ひかりも純粋。互いの純粋さが、逆に相手を束縛し、傷つけてしまうことがあるのだなあ・・・としみじみ。

で、ひかりがなぜそんなに、正純が信念をもって、世の人々に勇気と希望を語り続けることに思い入れているかといえば、それは彼女が人を殺したと告白したことと関わりがあるのかもしれず、それが5話で明かされるらしい。
そこで思ったのは、ひかりがいつも着ているボーダーの服の謎である。
1話からずっと気になっていたのは、

なぜ、ひかりは常にボーダーを着ているのか? だった。

ひかりの過去の秘密よりも何よりもそれが気になっていた。
身なりに構わないカジュアルファッション妻という意味だとは思うが、これでもかというほどボーダーばっかり着ているので気になって気になってならない。しかも相当くたっとしてるし。夫の給料の20%もらえたら、服買えるだろうが、契約事項にボーダーを着用という項目があるのかもしれないなどと、ついボーダーについて考えてしまう。
そんなおり4話で、彼女が人を殺した罪を背負っているらしいと匂わされたことで、もしかして囚人服的なイメージ? という想像をしばし楽しませてもらった。
そんなわけないとは思うが、カジュアルファッションの定番で、好感度も決して低くはないはずのボーダーをひかりが着ると、囚人とは言わないまでもなんだか拘束服のように辛気くさいものに見えてしまい、柴咲コウが徹底的に心身を抑圧された女性として振まっていることにほれぼれしている。
◯○妻って、縞々妻? じゃないですよね?

そして、今、気づいたのだが、
1話のサブタイトルが「完璧な姿に隠された夫の知らない5つの顔・・・今夜1つ明かされる!」だったのだが、5つってなんだよ!?(木俣冬)

◯◯妻」はHULUで配信中