【都会の若者、「田舎住まいへの憧れ」急増中】

内閣府が「農山漁村に関する世論調査」を発表。都市部の住民で田舎への定住を希望する人が31.6%と前回調査より11ポイント増加。特に都市部の20代若者の38.7%が田舎定住希望と年齢別では最も高かった。一方で田舎の住民は「将来、地域は衰退する」との答えが37.6%に達した。

 よく「田舎で自給自足の暮らしがしてみた〜い」と言う人がいるけど、稲を植えて収穫するまで何カ月かかるか、本当にわかっているのかね。春に田植えして秋に刈り取るまでの半年間、飲まず食わずというわけにもいかないんだよ。漁業なら獲れた魚をすぐ食べられると思っているかもしれないけど、何のノウハウもない人が簡単には獲れないものでしょう。

 こういう世論調査を見ていると、単純な「田舎回帰」「ふるさとに帰ろう」みたいなノンキさを感じるよね。「田舎は人も温かくて、安心な場所」みたいな幻想と言うべきか。仕事だって、そう簡単には見つからないだろうし、まあ、大変ですよ、本気で住むとなると‥‥。

 そんなこと言うと「みのさんは東京生まれじゃないか、本当に田舎のこと、わかっているの?」と言われそうだけど、私が生まれた頃の東京は、都会と呼べる場所がまだまだ少なかったですからね。東京の西側でいえば、代々木・新宿から2駅くらいまでが都会で、あとはもう畑だらけの田舎だった。

 私が生まれた世田谷も山あり谷あり川ありでしたから。白菜を川で洗ったりしていたし、天気いい日は駅のホームから富士山が見えたくらい。それがどんどん家やビルが建って、多摩川が汚染されて「死の川」なんて言われるようになり‥‥。都心との距離は近いけど、それなりに田舎に暮らしていたんですよ!

 えっ? 「田舎って楽しそう」という考え方は、私が司会をしている「秘密のケンミンSHOW」が増やしたんじゃないかって?

 確かに、ステキな笑顔の人々が地元のおいしい名産品を食べていたりしているのを見ると、「田舎はいいな〜」って思う気持ちもわからないでもないよ。でも、彼らがその笑顔にたどりつくまでには、多くの挫折を重ねてきたはずだよ。それをあとから田舎に移住してきて、いいとこ取りしようというのはナシ。まずは今、住んでいる都会のよさを考えてみるべきじゃないか。

◆プロフィール みのもんた 1979年に文化放送を退社後、フリーアナとなる。以後、数々の番組で司会、キャスターを務める。1週間で最も生番組に出演する司会者のギネス記録保持者でもある。