MC:何が花と淳悟の関係性に変化を与えたのでしょうか。なぜ娘として育てておきながらあのような方向に進んでいったのでしょう。

二階堂:また難しい問題が(笑)。海外に来ると本当に面白くて。日本にいると聞かれないような質問が多いので、私はすごい好きなんですけど。あの二人の関係っていうのは、言葉では言い表せない関係だと思いますね。人間っていうのは文明によって発達してきたと思うんですけど、文明上において人間ていうのは色んな約束事を作っていって、その中でいうと、この二人の関係っていうのは一般的にすごくタブー化されがちなものはあると思うんですけど、でも私はあの二人の関係は“アリ”とか“ナシ”とかそういうことではなく、深いところにある愛といいますか―全部文明上の約束とかを、全部取っ払った時にふたりの世界といいますか―そういうものを見せていったのかな、と思うので、きっとこの映画を観て色んなことを思う方がいらっしゃるのかな、と思うんですけど、ふたりにとってそういう概念はないのかな、と思っていましたね。

MC:若い女優さんに聞きづらい質問ではありますが、二人の性的な関係を表現するシーンの撮影は難しかったですか。

二階堂:Not difficult.あれはもう、感じたままにやっていたシーンだと思いますし、あのシーン失くしてこの映画はできなかったと思いますし、とても重要なシーンだったと思いますし。でも、あの撮影の日の雨が降ってくるときっていうのは、オープンセットだったわけですけど、外温はマイナス10度とかなんですね。その中で部屋の壁をくりぬいて、外からカメラで撮影して、上から冷たい赤い血っていう設定の水が降ってくるわけですよね。だから、雰囲気を大事にしながらも、とにかく寒さと死なないように必死でしたね。

MC:観客の皆さんからの質問に移る前に、少し一般的な質問をさせてください。日本・海外問わず、今後一緒にお仕事をされたい監督はいらっしゃいますか。また、なぜその方なのでしょうか。

二階堂:アミール・ナデリ。

MC:彼とは面識があるんですか?

二階堂:私の愛しの人ですね。3年ずっとラブコール送ってるんですけど、なかなか返事がもらえない。もっと英語が必要なそうです。だから、頑張ります。

MC:ナデリの好きな作品は何ですか?

二階堂:初めて観た作品は『CUT』っていう日本で撮られた映画なんですけど、私は『駆ける少年』が一番好きですね。彼自身の、多分幼少期の話なのかな、と思ったりするんですけど、彼はものすごくハングリー精神を持っていて、ものすごく力強くて、いつも会うとものすごいインスピレーションを受けるんですけど、本当に素晴らしい方だな、と思います。

観客:この監督と仕事しよう、とどうやって決めるのですか?

二階堂:オファーをいただいたときであったり、オーディションに受けに行ったりするのは、たいてい、やっぱり、もちろん監督であったり、脚本であったり、ほかのキャストであったり、物語の内容であったり、すごい色んなものが重要なんですけど、やっぱり一番、映画っていうのは一人で作るものじゃないですし、ディレクターだけでできるものではないし、色んな各部、監督がいて、撮影部がいて、照明部がいて、録音部がいて、メイク部がいて、衣裳部がいて、俳優部がいて…その中の、私の作品に関わりたいかっていうことが一番重要で、現場に行くことが私にとっては一番大事―その現場に行きたいか、っていう気持ちを大事にしてますね。その中で、もちろん監督によって決めることもありますし、明日上映する園監督の映画(※『地獄でなぜ悪い』)は、私、本も読まずに―夜、監督から急に電話がかかってきてオファーされて「オッケー」ってそのまま答えちゃって。そういう信頼関係で決めることもありますし、でも、たいていやっぱり好きだな、と思った監督は、私のことも好きになってくれるので。