絵本作家ってもうかるの? 元作家の方に実情を聞いてみた!



イラストと短い文章で構成される絵本。幼いころに読んだり、お子さんのいる家庭では、読み聞かせるために買ったりしているのではないでしょうか。さて、この絵本の文や絵を描く絵本作家という職業は、下世話な話ですがもうかるものなのでしょうか? 元絵本作家の人に実情を聞いてみました。



■絵本作家の大半はもうからない



――絵本作家というのは、ぶっちゃけもうかるものなのでしょうか?

いや、ほかの職業と一緒でもうかる人はもうかるけど、もうからない人はさっぱりです。数冊出して廃業、なんて話も多いですよ。実際、私も早期にあきらめた一人ですし……。



――「夢の印税生活!」というようなものはないのですね。



ないですねぇ(笑)。印税率はだいたい5〜15%。漫画や小説など、ほかのジャンルとそこまで大きく変わらないのですけど、部数がとにかく少ない。絵本は10,000部売れたら小躍りできるレベルなので、新人だと2,000部とか3,000部あればいい方です。5,000部あれば相当期待されているといっていいでしょう。



――ということは、仮に絵本が一冊1,000円として印税率が10%、3,000部出たとすれば30万円の印税になるわけですね。



そうなります。毎月絵本を一冊出せるなら月に30万円になるので十分ですけど、そんなわけないですからね。



――その場合、ほかの仕事をしたりして稼ぐのですか?



そうです。挿絵の仕事をもらって描いたりしますね。絵本作家は、絵と文の両方を一人でする人もいれば、絵だけ、文だけという人もいます。漫画でも「原作と絵が別」というのがありますし、小説だと挿絵を担当する人がいたりしますよね。そのあたりは同じです。ただ、両方を一人でやれると印税がおいしいんですよ(笑)。



――両方分の印税が入る、ということですね。



あとは、雑誌のイラストなんかの仕事もありますね。作家として名が売れているなら絵本以外にもライティングの仕事も依頼されたりするそうです。ま、基本的には絵本一本で食べていくのは一握りの作家さんだけですよ。



■売れてしまえばロングセラー



――年に何冊も絵本を出せるとなると、どれくらいの収入になりますか?



部数によりますけど、それだけ冊数を出させてもらえるレベルなら一冊5,000部くらいでしょうから……安くてだいたい100万〜200万円、売れて400万円くらいじゃないでしょうか? もちろん、ヒットして増刷がかかったりすればもう少し増えるでしょうけど、ドカーンと何千万も印税が入ったりはしないでしょう。やっぱり部数が少ないですから。



――たまに「『○○』が200万部突破!」なんて絵本が大ヒットしているニュースを見ますが、ああいうのはどうなのでしょうか?



短期間で爆発的に売れる絵本もあるにはありますが、国産の絵本で100万部や200万部売れているのはほとんどがロングセラーのものです。絵本は一度ヒットすれば、定番の絵本として幼児のいるお母さんが購入したり、小学校や保育園なども買いますよね。それの繰り返しで部数は伸びるんです。



――確かに一度子供に読み聞かせたい絵本の定番とかになれば、その後もずっと売れますよね。



現に、私の小さいころによく読んでいた絵本もいまだに売れていたりしますから。



――そこまでいけば、ある程度は安泰といえるのですね。



そうですね。知名度も上がりますから、ようやく「先生!」と呼ばれるレベルになるわけです。そこまでの道のりが非常に厳しいのですけどね。今は出版業界全体が厳しく、町の本屋さんから児童書のコーナーがなくなったりしているのは確かです。売れっ子絵本作家になるのは本当に狭き門だと思いますよ。





世代を超えて愛される作品を生み出すことのできる絵本作家ですが、安定して収入を得られるようになるのはやはり難しいようですね。

(貫井康徳@dcp)