ズラタン・イブラヒモビッチとパリの間に平穏な生活は始まらなかった。おそらく、決して始まらないのだろう。8カ月のパリ生活を経て、イブラヒモビッチは環境を変える準備をしているようだ。

フィーリングが合わなかったということである。フランスでは絶対的なスターと考えられており、フオリクラッセのステータスに合わせた報酬も用意されているのに、だ。野心的なプロジェクトが訪れたのが、遅すぎたのかもしれない。それはまだ途中の段階だ。ユヴェントスのことを考える理由はたくさん存在するのである。

パリのサポーターとの難しい関係が始まったのは、2月24日。マルセイユとのリーグ戦だ。ブーイングはすぐに熱狂へと変わった。イブラヒモビッチが91分に2−0となるゴールを挙げ、勝負を決したからだ。さらにその3日後、カップ戦でのマルセイユ戦でも、イブラヒモビッチは2得点で2−0の勝利に貢献した。

だが、ブーイングの後にメディアの批判も続く。『レキップ』はまるで中傷するかのような報道をし、『パリジャン』にいたっては「揺れる巨人」とまで伝えた。リーグアンで22得点を挙げ、チャンピオンズリーグでは1ゴールだが、リーグ戦を上回る5アシストを記録している選手に対しては、大げさだろう。

さらに、夫人とパリの街の関係も今ひとつで、家族は居心地良いと感じていない。イタリアのライフスタイルを懐かしんでいるのだ。実際、最近引っ越したイブラヒモビッチの家は賃貸であり、カルロ・アンチェロッティ監督と違い、イブラヒモビッチは8カ月が経ってもフランスに溶け込めていないのだ。

31歳のイブラヒモビッチが、欧州サッカー界のエリートにできるだけ早く戻りたいと望むことも、おそらくは避けられないだろう。アンチェロッティ監督は「批判にもかかわらず、モチベーションを感じている」と話しているが、イブラヒモビッチはもはや現実と、レオナルドSD(スポーツディレクター)が示していたプランとの狭間にいる。

レオナルドSDは栄光ある未来をうたったが、その練習場はミランやインテル、バルセロナ、そしてユヴェントスのそれと比べれば、プロヴィンチャクラスだ。数カ月前には、彼のアウディを停めるのも問題になったほどである。確かにパリ・サンジェルマン(PSG)は未来を表している。だがおそらく、イブラにとってはそこまでではない。

トロワ、エビアン、ナンシーでのアウェーマッチは、イタリアのスタジアムの熱狂と一致しない。PSGがイタリアでは得られないサラリーを保証しているのは確かだ。だが、クリスティアーノ・ロナウドやウェイン・ルーニーへの接近の動きもあって、イブラヒモビッチは疑問を投じている。両選手はピッチ内外でイブラヒモビッチのポストを埋めるだろう。

だからこそ、最近、イブラヒモビッチは「PSGはオレの最後のクラブじゃない。サッカーでは決して何があるか分からないし、イタリアはオレの2番目の家だ」と扉を開けたのだ。それは、トリノに向けてかもしれない。