防衛大臣直轄の自衛隊の緊急展開部隊「中央即応集団」。自衛隊法が改正された場合、海外での邦人救出任務を担う?

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10名の日本人が犠牲になった、アルジェリア南東部イナメナスの天然ガス関連施設での人質事件。全世界でテロの脅威が叫ばれている以上、今後も在外邦人の安全をいかに確保するかというテーマは避けて通れないだろう。

まず考えられるのは、海外に進出する企業が自前で“護衛部隊”を用意するケースだ。元傭兵(ようへい)でテロ組織に詳しい高部正樹氏は、こう指摘する。

「日本企業にも、いざというときの備えは必要です。要人警護、拠点警備などの仕事をPMC(民間軍事会社)に発注しておくというのもひとつの選択肢です」

PMCは日本ではなじみが薄いが、危険地域に進出している欧米企業の多くが契約している。米海軍特殊部隊ネイビーシールズ出身で、イラク戦争で有名になったPMC「ブラックウォーター」の関連団体に所属するライアン・シュミット氏は、こう断言する。

「テロリストが暗躍する広大なエリアのパトロールを常に行ない、監視を維持することは非常に困難だ。その点、専門的な訓練を施されたPMCの要員は大きな戦力となり得る。PMCがそれぞれの地域に適応するための装備と訓練を行なうにはかなりの費用がかかるが、結果としてそれ以上の利益をクライアントに生み出す」

かなり自信ありげなコメントだが、では、その「かなりの費用」とはどれほどのものか。アメリカの大手PMC「トリプルクロス」などと契約を結び、アフガンやアフリカへの派遣経験を持つ元特殊部隊員のクリストファー・エドワード氏(仮名)は、こう語る。

「スキルやミッションの条件によって違いますが、だいたい3500ドル(約31万5000円)から7000ドル(約63万円)を週の報酬として受け取ります。就業契約期間は90日から180日間で、クライアントの要望や現場の判断に応じて更新されます」

ひとり当たりでこの値段。さらに車両などはクライアント側が提供しなければならないことも考えると、平時でも莫大な金額がかかることは想像に難くない。その上、アルジェリアのようなケースで「人質奪還作戦」を敢行するとなると、その費用はさらにはね上がる。

人命の安全に、高いも安いもないかもしれない。だが、民間委託ならこれだけのコストがかかるということは知っておいたほうがいいだろう。

(取材・文/本誌軍事班 [協力/世良光弘 小峯隆生] 写真/笹川英夫)

■週刊プレイボーイ7号「自衛隊『人質救出部隊』はこうつくれ!」より