9日、プロ野球セ・パ両リーグの全日程が終了。個人のタイトルも確定した。

打率3割4分、打点104と2冠に輝いた巨人・阿部慎之助は、いわずもがな、圧倒的な強さでリーグ優勝を成し遂げたチームの立役者である。同夜、テレビ朝日「報道ステーション」では、野球解説者・長嶋一茂氏が阿部に行ったインタビューの模様を放送した。

開幕から一ヶ月、一時は最下位にいた巨人だが、阿部にとっても、チームにとっても大きな転機となったのは、5月8日に宇都宮で行われたDeNA戦だろう。

巨人が7-4とリードし、ツーアウトまで取りながらも、続くキャッチャーフライを阿部がまさかの落球。このプレーにより、同点に追いつかれた巨人は引き分けに終わった。

「あの時のことは、スローモーションのような感じでしたね」と振り返る阿部は、「どこかに油断があったんじゃないかなっていうのもありましたし。まあ油断でしたね」と苦笑い。番組が別途話を訊いた村田修一も、「その日、一緒に帰ってきたんですけど、阿部さんでもこんな落ち込むんだなっていうのを初めてみた」とコメントした。

すると、試合翌日、阿部が起こしたという“ある行動”が、自身の、そしてチームのばん回に直結した。阿部は、エラーをした瞬間の写真を、ロッカーに貼り付けたのだ。

「貼ってあります。忘れないように。ミスしたら切り替えて頑張れとかいうのが普通なんですけど、ミスしたら忘れちゃいけないと思う。また今日も頑張るんだっていう気持ちで球場に出られればいいかなと思って、いつも目に入るところに置いてあります」と明かした阿部は、「後輩たちも、こういうのを見てくれれば有り難い」と続け、村田も「その辺からチーム状態がよくなってきました」と話す。

事実、巨人は、この翌日から9連勝(うち、引き分けが2回)を遂げ、Bクラスを脱出、交流戦も制した。まさにキャプテン・阿部が起こした“ミスからの行動”が、チームに力を与えた格好だ。

その他にも、今季は5人の若手投手にプロ初勝利をもたらしている通り、投手の精神的支柱として、リードの面でも大活躍を遂げた阿部。とりわけ、同番組は、9月の広島戦で先発に抜擢された笠原将生が、3回表にランナーを背負った途端、突如コントロールを乱した場面に着目した。

フォアボールを出し、ツーアウト満塁となって、続く打者にもボールが先行したその時、阿部はマスクを取り、「俺が構えてから、ちゃんと投げろ」と笠原を一喝した。

「ランナー出たら、ガラッと変わっちゃったんで。“ああ、どうしよう”みたいな。セットが早い。“投げたい、投げたい”なんで」と振り返った阿部。笠原の乱調を一言で修正したばかりか、試合翌日には、笠原の練習用グラブに、三つの教訓を書き込み、フォローをしていた。

キャッチャーが構えてから投げろ。ランナー出てもテンパるな。セットを止めろ。
「メーカーさんにお願いして、その文字を刺繍にしろっていいました」と笑顔で語った阿部は、「とにかく何かを感じながら。1試合投げるのに、感じて、考えて投げてほしい。1球に泣くんじゃなくて、1球に喜べるように」と投手陣に向け、想いを語った。