「真面目でボーイッシュ」というのが、エドワード・ノートンがスクリーンで見せる人物像の半分を占める要素だろう。映画『真実の行方』や『ファイト・クラブ』、『インクレディブル・ハルク』、『リーヴス・オブ・グラス/Leaves of Grass』といった映画では、彼の純粋な主人公と暴力的、または悪魔のような一面が共存している。

だが、現在開催中の第65回カンヌ国際映画祭のオープニング作品で、ウェス・アンダーソン監督の『ムーンライズ・キングダム/Moonrise Kingdom』はやや異なる。彼の演じるキャラクターは、映画そのものと同じく優しいのだ。エドワードは1965年が舞台の劇中で、12歳のボーイスカウトの少年がガールフレンドと逃亡することで人生が好転するスカウト・マスターに扮している。

彼はカールトン・ホテルでのインタビューで、アンダーソン監督と一緒に仕事をすることへの興奮を告白した。「ウェスはカンヌが熱狂するすべてを表す存在さ。本物の映画監督なんだ。彼は独自の世界を作り上げた、稀有な存在だよ。その作品を30秒も見ないうちに、観客は自分たちがウェスの世界に戻ってきたとわかるんだ」

一筋縄ではいかない登場人物への愛情が感じられる『ムーンライズ・キングダム』では、アンダーソン監督の世界を垣間見ることができる。劇中では、逃亡した女の子スージーの両親をビル・マーレイとフランシス・マクドーマンドが、地元の警察署長をブルース・ウィリスが演じている。

エドワードはまた、監督のおどけた調子を具現化することへの矛盾も理解している。「ウェスの作品には観客が好むユーモアがあるんだけど、演じることはそれとは正反対のところにあるんだ。キャラクターの目的の本気度こそが一番大事なんだ。ユーモアは登場人物の奥底に根付いているから、面白いのさ。登場人物は愛すべき存在だよ。なぜなら彼らは、ちょっと誇大妄想的なものに熱心に取り組んでいるからさ」

彼はさらに、監督がキャストに話をする際の"ボキャブラリー(語彙)"を「役者を自分の周波数に組み込むための、明確な表現力だ」と称賛する。エドワードいわく、監督は"動詞"に長けているのだとか。

細部まで注意の行き届いたカメラワークが、しばしば場面を決定づけるという監督のもとで仕事をするのはこれまで以上にやりがいがあるものなのか、という質問に対し、エドワードは「いいや。演技の主な難題は、意思なんだ。最も重要なことは、誰かの意図を表すためのユニークな方法を見つけることだね、(役柄の)感情豊かな人生っていうのは、役者が引き出すものなんだ。ウェスの作品における、役者にとってのさらなる挑戦とは、"奇抜さ"と"憂鬱さ"との間でうまく折り合いをつけるってことなんだよ」と答えている。

一方、『ムーンライズ...』はエドワードにとって、軸となる一部分にしか過ぎない。彼は『キッズ・オールライト』でアカデミー賞ノミネート経験もある脚本家スチュワート・ブルムバーグや、プロデューサーのビル・ミリオーレと共に映画制作会社Class 5 Filmsを設立し、運営している。

彼らはすでに、セックス依存症をテーマにした新作『サンクス・フォー・シェアリング/Thanks For Sharing』を完成させた。これはブルムバーグの監督デビュー作で、マーク・ラファロやグウィネス・パルトロウ、ティム・ロビンスが出演している。そのほかにも、19世紀初めに活躍したアメリカのルイス・クラーク探検隊を描いた『Undaunted Courage』を準備中だそう。こちらはHBOのミニシリーズで、エドワードとは『ファイト・クラブ』で共演し、今回の映画祭にも登場したブラッド・ピットが製作陣として参加している。