■「新外国人」、「コスタリカコンビ」その甘美な響き

「新外国人選手入団」〜今も昔も実に甘美な響きである。ジャスフォーを迎えた筆者にとっては、子どものころはプロ野球で。社会人になってもJリーグで。このニュースがシーズンを迎えるにあたり、最も心ときめく新聞の見出しだったことを覚えている。そもそも未知との遭遇への期待は人間が元来持つ習性。たとえ、そのワクワク感の過半数がシーズンを経るにつれてに失われていくものだとしても、人は再び開幕前になればそこに期待を抱くものである。

ましてやそれが「コンビ」、「トリオ」となれば、その期待感は倍増どころか、3倍4倍に膨らんでいくもの。93年、横浜MでJリーグ初代得点王を獲得したFWラモン・ディアスとMFダビド・ビスコンティの「アルゼンチン・コンビ」に始まり、94年、名古屋にやってきたMFドラガン・ストイコビッチ(現名古屋監督)と快速FWビニッチの「ユーゴスラビアコンビ」、さらに95年、パルメイラスから大挙横浜Fに加入したボランチのセザール・サンパイオ、MFジーニョ、FWエバイールの「ブラジル・トリオ」など、これまでJリーグに来日した数々の「コンビ」、「トリオ」は、私たちに新たな期待と感動を生み出してきた。そして2012年、Jには新たなコンビ「コスタリカコンビ」がJ2鳥取から誕生しようとしている。

過去にFIFA・W杯に3度出場し、代表エースのFWパウロ・ワンチョペが07年にFC東京に在籍したとはいえ、北中米カリブ海地区の中でもいまだ未知の部分が多い国、コスタリカ。その代表経験を持つDFロイ・スミス、FWケニー・クニンガという2人の新入団。これは、これまでにない甘美な香りを感じさせる。となれば、この目で見ない手はない。筆者は「コスタリカコンビ」の響きに誘われ、2月8日、鳥取が一次キャンプ最終日を迎える高知県・春野総合運動公園球技場へと足を運んだ……。

■「圧倒的」なレゲエボーイ「ロイ・スミス」

この日はJ準会員のJFL・カマタマーレ讃岐に臨む鳥取。ところが、肝心のコスタリカコンビの1人であるFWケニー・クニンガムの姿はピッチ上ではなく、ピッチの周りにあった。今季から鳥取の指揮を執る吉澤英生監督によれば、この日の彼は軽度の左脚アキレス腱痛により、別メニュー。「スピードもあるし、ポジション取りもよく、チームの起点になっていた」(2月5日の高知大戦を取材した高知新聞運動部記者・談)彼の本領を確認することは、いきなり叶わなくなってしまったのである。

思わぬ肩透かしにやや落ちる筆者のテンション。しかし、ここでめげていては今回のミッションは達成できない。再び気を取り直し、30分4本の練習試合では内間安路とコンビを組み、1・2本目に出場した過去にU-20代表で9試合、フル代表でも2試合出場経験を持つU-23コスタリカ代表CBの21歳・ロイ・スミスの一挙手一投足に注視することにした。

まずアップで目についたのはその身体能力の高さと独特の風貌である。カリブ海に面したリモン出身での生活が作り上げた大きなお尻に、185センチ85キロの巨漢と思えないライオンのようなしなやかな動きから繰り出される強いキックと高いヘディング。そして何といってもその頭を包むドレッドヘア。GK小針清允、MF鶴見聡貴、そして今季チームキャプテンに就任したMF岡野雅行など、以前から「レゲエ系」の多い鳥取であるが、レゲエの本場、ジャマイカからの移民も多いコスタリカからやってきた彼のそれは他を寄せ付けない圧倒的なものであった。

もちろん「圧倒的」なのは風貌だけではない。いざ、試合が始まると「フィジカルは高いし闘争心もある。1対1の強さやスピードは日本人にはないものがある」とコンビを組んだ内間も試合後に話したように、西野泰正(磐田→清水→磐田→京都)や石田英之(富山)といったJの舞台でも実績を持つFWたちと対峙しても、自分の間合いに持ち込んだときのボールを刈り取る能力は圧倒的であった。