若かりし頃の「ヤンキー」ぶりもさることながら、府知事に就任が決まった松井氏の政治的な手腕にも注目が集まっている。

 府議から、いきなり人口880万人のトップに選ばれただけに、その重責に応えられるのだろうか。

 府庁詰め記者によれば、

「橋下府政が遺したWTC(大阪ワールドトレーディングセンター)問題を筆頭とする数々の失政と、膨らんだ府財政の借金を減らすべく、舵取りを任された一方で、実現困難とされる『都構想』の実現に向け、真価が問われることになりそうです」

 だが、カリスマ的なリーダーシップを発揮する橋下氏と違い、周囲の松井評の大半は、“コバンザメ”あるいは、“傀儡”といった言葉が並ぶ。またその一方で、立ち上げて間もないローカル・パーティ「大阪維新の会」の“真の実力者”という声も聞こえてくるのだ。

「橋下氏のもとに参集した元弁護士や官僚など、若くて前歴も立派な政策立案能力がある『維新の会』の議員のほとんどは地盤と看板がないが、地盤と看板を併せ持つ数少ないメンバーの一人が松井氏。金はようけある。でも、弁が立つほうではない」(前出・記者)

 かつて松井氏が自民党時代に一時期行動を共にした自民党府議はこう語る。

 だが、橋下氏が候補者不在の大阪府知事選で、松井氏に白羽の矢を立てたのは、「維新の会」内部での実績を評価してのことだった。松井氏こそ「維新の会」設立の立て役者の一人で、その後も、裏方に徹してきた。

 社会部記者によれば、

「バブル期に大阪市が先行きを見誤って計画した、大阪湾岸部のWTCの、府による買い取りと、府庁舎移転を橋下さんが言いだした際の推進役として奔走したのが松井氏です。WTCが立つ咲洲地区は住之江に近く、その住之江が活気を帯びれば松井家が潤うというのもあるのでしょう。そりゃ、松井さんにしてみれば大賛成ですよ。彼は政策立案は得意ではないが、嗅覚は大したものですから」

 結局、WTCへの府庁舎移転問題は、議会の反対もあって現在も玉虫色の扱いで、府政に影を落としたままだ。だが賛成派議員の取りまとめに当たって、現在の「維新の会」の母体となる会派をまとめ上げた功労者が松井氏だった。

 自民党関係者が言う。

「彼らのWTC移転失敗の挫折感と絶望感は大きかったと思います。しかしそれでもめげず、今や大阪での政治的一大勢力を築いたくらいですから、結果的に彼は行動力もある。維新の若い子を連れては寿司や焼き鳥をごちそうしてやったりと、後輩への面倒見もいい。それに、利権はともかくとして、けっこう純粋なところもありますから、若い1年生議員が多い『維新の会』を率いる“青年将校”みたいな存在とも言えます」

 そうした“剛腕”ぶりから、大阪の小沢一郎に例えられることもあるという。