【文春vs新潮 vol.10】 ビートたけしと島田紳助。「黒い交際」の違いは何か?

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■ビートたけしと暴力団

暴力団との交際が原因で芸能界を引退した島田紳助。「では、この人はどうよ」ということで、週刊文春がビートたけしと暴力団との「黒い関係」について取材している。記事のタイトルは、「ビートたけし『暴力団との交際』すべて語った」。

1987年。たけしは、「フライデー事件」の後に右翼に街宣をかけられる。その右翼が住吉連合会(現・住吉会)系の日本青年社であったことから、たけしは同会の堀政夫会長の前で土下座した。2001年。大阪で芸人らと食事をしたあと、ひとりの芸人が「クラブに寄っていこう」と言いだした。行った先のクラブには、5代目山口組の渡辺芳則組長をはじめ、大阪地区の山口組幹部がそろっていた。2002年。月刊誌「新潮45」の対談取材で、稲川会の稲川聖城総裁と面会。熱海の本家まで出向いている。バイク事故から復帰したのを知り、「俺の若い時にそっくりだ、会いたい」と言い出したのがきっかけ。

これは、すごいことだ。日本の三大指定暴力団のトップと会っているのだから。ならば、紳助のようなヤクザとの「黒い交流」に発展しないのは、なぜか。記事によれば、たけしはヤクザや右翼との問題が起きると、誰も通さず、自ら解決していたことが第1。そして、自ら解決した場合でも、それ以上は関係を続けず、うまく「逃げ」ていたことが第2。この「逃げ」もタレントの芸のうちなのだが、「紳助は?芸?がなかったな」とたけしは語る。

たけしは、紳助のヤクザとの「黒い交際」について、以下のように語っている。「こちらが何も言わなくてもヤクザは、『何かあったら、言ってくれよ。俺が恥をかくから』と持ちかけてくるんだ。でも、オイラは絶対、頼まない」。つまり、紳助の失敗は、ヤクザにモノを頼んでしまったことだ、と言うのである。見かけや露出度で人気を計られる芸能人。だが、それは表面的なことであり、影でうごめく「黒い交際」の誘いからいかに逃げるのか。そのことも、たいせつな芸のうちなんだとたけしは語っていた。

■久々に見る「ちあきなおみ」の姿

久々に、ちあきなおみの姿を見た。週刊新潮がグラビアでその姿を、トップ記事「『ちあきなおみ』と刑務所暮らしの実父の物語」で新事実を報じている。

若い読者には、説明が必要かもしれない。ちあきなおみは、1969年にデビューした歌手で、72年には「喝采」で日本レコード大賞を受賞。ほかにも「雨に濡れた慕情」や「四つのお願い」などヒットを飛ばし、バラエティ番組やCMでも人気を得ていた大歌手である。78年に俳優・宍戸錠の弟である郷治さんと結婚。夫と死別した92年以降、ちあきは世間から姿を消していた。

新潮は、ちあきが夫の墓参りにいく姿を撮影。記事では、これまで語られてこなかった不幸な親子関係を明らかにしている。ちあきは3人姉妹の三女で、父母は62年に離婚。その後、父は若い女性と再婚した。そんな父を許せなかったのか、歌手として広く認知された20代に父のことをたずねられると、ちあきは「父は私が13歳の時に死にました」と答えていた。

再婚相手の証言から、その父が「窃盗の常習犯で、前科十犯を優に越えている」ことなどを記事は新事実として紹介している。筆者には、いまさらそんなことをほじくり返す新潮の意図が、よくわからない。夫との死別がショックで世間と距離を置いているちあきの父が、じつは窃盗の常習犯でしたという情報を読者が知って、何になるというのであろう。

グラビアのちあきの写真は、まさに「喝采」の歌詞を思わせる雰囲気が漂い、「はっ」とさせられるところがあった。しかし、記事の内容にはがっかりした。本人が世間との断絶を望んでいるのだから、ほっといてあげればいいのではないか。


■原発御用学者の座談会、エロ伝道師・岩井志麻子、そしてブル中野

以下、新潮の記事から。「御用学者と呼ばれて」という記事で、最近マスコミで「御用学者」とレッテルを貼られている原子力と放射能の専門家が座談会をおこなっている。いろいろと言い訳を言っているが、原発事故が起きる前まで原子力の安全性を語り続けた学者は、やはり「御用学者」と言われても仕方がない。最近の反原発運動がニューエイジっぽく感じられることにも注意が必要だが、原発を推進してきた学者の居直りに、素直にうなずくこともできない。

名物読み物の「黒い報告書」。筆力のある作家やライターを起用して、現実の事件をヒントにしつつ、男女の色恋にからむ事件を物語にしている。今回は、いまやエロトークでは誰にも負けない作家の岩井志麻子。内容は、ホストに入れ込むソープ嬢のお話。結局、ソープ嬢はホストを切りつけて刑務所に行くのだが、貢ぐ過程でさまざまな風俗でカネを稼ぐ姿を「性器と気持ちは荒廃していく。それでも、いい」と描写しているのが秀逸。

巻末グラビアで、これまた久々のブル中野を発見。90年代に活躍した伝説の悪役プロレスラーである。彼女が、東京・中野の飲み屋街で「中野のぶるちゃん」という店を経営しているのだという。飲み物を作る彼女のまわりには、ぐるりと男性客が並ぶ。来年1月には引退興行を開くというからびっくりである。44歳、女子プロレスラー。女子プロが下火になっても、したたかに生きているんだなぁ、と思った。

■小遣いは84億!?、文春の読書欄、関東連合と芸能人

以下、文春の記事から。「大王製紙『不肖の御曹司』84億円が消えた女とカジノ」という記事で、9月18日に辞任した井川意高会長のとんでもない放蕩ぶりを紹介している。84億円を個人名義で会社から借り入れ。カジノやら飲み食いやらで、派手に使ってしまったらしい。筆者のような、数百万の公的金融機関からの借り入れをなかなか返せず、ひいひい言っている零細出版社の経営者には、全く想像のつかないカネの使い方である。しかも、元会長は筆者と同じ47歳。どうなっているんだ、世の中!

文春の読書欄は、充実している。毎週、8ページも費やしている。新潮は、たったの3ページである。出版社発行の雑誌にしては、新潮は読者欄を軽視しすぎではないか。文春の読書欄だが、今週のトップはクリストフ・ニックとミェル・エルチャニノフの共著『死のテレビ実験』(河出書房新社)。評者は、小田嶋隆さん。「〈権威〉から良心に反する命令を受けた時、個人はどれくらいの割合でそれに服従するのか」を調べる「アイヒマン実験」を、テレビのクイズ番組でやってみた、という話。小田嶋さんの文章は、ほんとうにおもしろい。書評の締めが「紳助必読。」ですよ(笑)

関東連合と芸能人の関係を示唆する部分が、いくつかあった。ひとつめは、大王製紙の記事中の「関東連合と近いとされる俳優の伊藤英明」。ふたつめは、「吉川ひなの 夫は元関東連合 500万円恐喝」という見出しの記事。最近、海老蔵のときにも登場した関東連合という組織は、どんだけ芸能人とずぶずぶなのであろう。

今週は、両誌ともにおもしろい記事を数本ずつ掲載していた。というわけで、引き分け。

【これまでの取り組み結果】

 文春:☆☆☆☆

 新潮:☆☆

(谷川 茂)