試合に勝ち、勝負に勝ち、アジアに勝ち、まつきクンに勝った!

アジアカップグループリーグ第2戦でザックJAPANはシリアと対戦。初戦でサウジアラビを破ったシリアは勝点3。日本の試合の前に同じくサウジアラビアを下したヨルダンは勝点を4に伸ばしました。負ければ3戦目でヨルダンとシリアが「仲良く」引き分けを演じるだけで、両チームのグループリーグ突破=日本の敗退となる展開。2試合目にして早くも正念場が訪れた格好でした。

しかし、日本代表は強かった。

試合内容としては改善すべき点も多いのでしょう。まだ本調子ではない選手もおり、連携も煮詰めている途中段階。多くは望めない状況です。それでも試合の中で選手が刻一刻と変化する状況に対応し、結果を手にするための最善を尽くしていくような「頭の良さ」を発揮。しっかりと苦境を乗り越えていきます。

1-0とリードする状況から迎えたPKの場面などは最たるもの。日本選手が「シリアのオフサイド」と口を揃えるプレーを、逆に日本のバックパスと見なされ、オフサイドの位置にいた選手を倒したGK川島がPK献上&一発レッドとされる微妙な判定。熱くなり冷静さを失ってもおかしくない場面でした。しかし、ハートは熱く頭はクールな日本代表は、心を乱されることなく粛々とベストを尽くしていきます。

ヒートアップする審判を面白い顔で和ませにいく長谷部・遠藤。各選手が主審・副審に詰め寄れば、チームスタッフもその抗議に加わります。その熱い抗議の一方で、「こりゃレッドだな」と見るやすかさず控えGKの西川を準備させる日本ベンチ。その頃には、抗議は退場となる川島とキャプテン長谷部だけで行い、ほかの選手は次の状況へと動き始めます。

給水を行う者、打ち合わせを行う者。いつまでも判定のことでグジャグジャしたりはしません。抗議を続ける長谷部もチラチラとベンチを見やり、「西川の準備できたか?」と言わんばかりの表情。アジアの偏向判定さえも試合の一部分として受け止め、その中で戦っていく覚悟を見た想い。GK西川はPKを決められた直後に猛然とボールを拾い、センターサークルへ送りました。シリアがコーナーフラッグ付近で喜びの輪を作っている間に日本選手はセットしました。同点にされた怒り・落胆・苛立ちではなく「残り15分で同点」という状況を見つめ、何が必要かを各選手が判断していました。

先のPKのあと日本の受けたカードはゼロ。逆に、その後帳尻合わせのように与えられた日本へのPKのあと、シリアは3枚のイエローをもらい1人の退場者を出しました。シリアは「グループ最上位であろう日本」に敗れたとしても、次のヨルダン戦に勝てば決勝トーナメントに進出できます。十分なチャンスを持って次の試合に臨めるところを、退場で主力選手をひとり失ったのは明らかに無駄。

結局「アジアの笛」に翻弄されたのはシリアで、したたかに勝利をつかんだのは日本だったというオチ。潜ってきた修羅場の差、選手ひとりひとりの経験値、日本の総合的な強さが現れた戦いだったのではないでしょうか。20代前半の若い選手ばかりのくせに、えらく大人びたこのチーム。何とも逞しく、頼もしいかぎりです。

ということで、アジアカップらしい面白ゲームと放送席の面白オッサンについて、「アジアカップ日本VSシリア戦」からチェックしていきましょう。